管理人の手術記録
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管理人は子宮筋腫により2005/2/1 子宮の全摘出手術を受けた。ネットで拝見する当事者による病気や治療の記録は、日頃から管理人も参考にさせて頂いているので、同じような手術をこれから受ける方のために少しでもお役に立てればと思い、記させて頂く。少々生々しい部分もあるので、若い男性やそういう記述が苦手な方はお読みにならないようにお願いする。なお入院中の日記は日記コーナーでもアップしている。
 1)手術に至る経緯
・2000年頃、人間ドックの検診で子宮筋腫があると言われる。本人の自覚症状は無く、貧血も無いため様子を見ていくことになる。子宮筋腫には外側に発育するものと内側に発育するものがあり、内側型は月経時の出血量が多く本人への悪影響大である。私の筋腫は子宮壁内に小さな筋腫がたくさんある多発タイプで、そのうちのいくつかが外側に発育している状況。

・2003年夏頃から貧血気味と言われ始める。生理の間隔や日数にそう大きな変化は無いが、出血量が多くなってきているらしい。そのうち筋腫が自分で触ってわかるほどの大きさになり、生理は1、2日めの出血量が異常に多くなる状況になった。
医師から、周囲の臓器を圧迫するほど筋腫が肥大していること、肥大している筋腫は複数。それらを取っても子宮壁内の小さい筋腫が肥大する可能性が高いと説明される。私が症状がそう重くなっていない現在の状態で、子宮全摘出の手術を受けることにしたのは以下の理由による。
 ・今後出産する可能性が無い。
 ・貧血がひどくなってからだと、まず貧血治療してから手術になるので大変。
 ・子宮自体は何のホルモンも出して居らず、今後の生活は性生活を含めなんら変わらない。
  (むしろ生理が無くなる分、身体への負担が少なくなる)
 ・子宮が無ければ、子宮体ガン、子宮頸ガンにはならない。
 ・自分や夫の親が現在健康であり、状況的にゆとりがある
切迫した状況ではないので、仕事のスケジュールもゆとりを持って合わせることができ、本当によい状態で手術を受けることができた。

<手術の概要>
・手術日の年齢 満42歳。妊娠経験無し。151cm 41.5Kg
・術式:腹式単純子宮全摘出術。臍下を縦に切開して子宮を(体部、頸部とも)除去する。
 摘出する子宮のサイズは15cm×12cm×7cmと測定されていた。
 卵巣は基本的に残すが肥大等異常があれば切除する可能性もある。
 輸血はトラブルが無ければ不要だが、何かあれば輸血を行う。
 手術時間は全身麻酔を含め2〜2時間半。

・結果:摘出した子宮は760g(鶏卵〜拳大まで目立つだけで6つの筋腫有り)。
    卵巣は左右とも保全。輸血無し。手術創は約12cm
    初めての手術だったため癒着もなく、手術時間は1時間だった。
    退院直後体重 入院時より約2Kg減

 2)入院中の様子
★入院日=手術前日
・食事は普通食だが夜9:00以降は絶飲食(食事、飲食不可)
・手術の説明を受け、いくつかの処置を行う。
<行われる処置>
・血液検査
・剃毛
・膣洗浄
・下剤と浣腸(手術までに腸を空にする必要在り)
<その他>
・朝、昼、夕刻と体温は基本的に自分で測る。
・入院日から術後3日めまで尿の量を計る必要があった。トイレのたびに大きな計量カップのようなもので尿量を計り、時間と量を記録する。術後にやるのはけっこう大変(汗)
<コメント>
・頭痛とか胃痛とか慢性的な症状がある場合は看護師さんによく言っておき、必要なら薬を持参して渡しておくとか、早めに薬を出しておいてもらうと良いと思う。今回は総合病院で、医師の手が空かないと薬が手配できなかったため、頭痛持ちだった私は4時間も頭痛に苦しむ羽目になった。
・入院時の服は退院時に着ることになるが、ジーパンは止めた方が良い。ジーンズ生地の前立てはかなり傷に障る。退院時に後悔した。
・経済的に許されるならトイレ付きの個室だとストレスが軽減される。せめて術後3日めぐらいまでが個室だとかなりラクになりそうだ。私も個室にして本当に良かったと思っている。

★手術日
・朝から絶飲食
・朝から点滴開始。術後2日目まで続く。
<手術前>
・朝、再度浣腸
・手術衣に着替える。下着はT字帯のみ。手術時は眼鏡、時計、アクセサリーは一切不可。
 あと厚めの膝下ストッキング(手術衣同様病院で用意)。エコノミー症候群防止のためとのこと。
・点滴は電解質の補給と抗菌薬。点滴はずっと続くが針は最初の1回だけ。太い針なので刺す時は少し痛い。
・手術室への移動直前に臀部へ筋肉注射(麻酔を効きやすくする薬)

<手術室へ>
・午後1時ちょっと前にストレッチャーで手術室へ。部屋で注射される筋肉注射のせいか少々ぼおっとしているので、敢えてモノを考えないようにしてリラックスしよう。
・手術台に上ってから点滴と酸素吸入のマスク経由で麻酔開始。本当にあっさり眠ってしまう。
<手術の立ち会い>
・手術の時は誰か家族が立ち会うように言われる。立ち会いと言っても手術を見ている訳ではない。待合室等で待っていればいい。手術中に何か起こった時に相談するためというのもあるのだろうが、普通は手術直後に医師から説明を聞くために立ち会う。実際に切除した臓器を見せられて色々説明されるので、立ち会い者は覚悟をしておくこと(苦笑)
・私の場合は夫が立ち会いで、切除した子宮を見せられて色々な説明を受けた。とにかく自分が一番信頼し、自分を慈しんでくれる人に立ち会って貰うのが良いと思う。

<術後とその夜>
・痛み:麻酔から覚めた直後は痛い。だがこの病院では鎖骨あたりに鎮痛剤を少しずつ注入させる方法を取っており、このおかげでかなり楽だった。いざ手術という話になってきたら、術後の痛みの軽減についてどんな方法を取っているか、聞いてみるとよいと思う。持続注入せず、痛くなったらナースコールして鎮痛剤を打って貰う‥‥という昔ならがのやり方だと術後一晩はかなり大変だと思う。

・寒さ:全身麻酔中、発熱を押さえられた身体は相当冷たくなっている。麻酔医はまず身体を温めてから覚醒させるのだが、当人は寒く感じるケースが多い。湯たんぽやアンカなどを入れてくれるが、心配なら対応策を考えておこう。私の場合は、過去自律神経失調による体温低下を起こしたことがあり、とても心配だったので電気毛布を持ち込ませて貰ったのだが、実際は術後すぐに発熱してしまったため、むしろ熱がっていたようだ(術後の発熱もよくあることらしい)

・尿意:麻酔中に尿道に管(カテーテル)を入れ、尿が自然に排出されるようにしてあるのだが、当事者の感覚がついていかない。手術による身体の冷えで尿意は強まっており余計不快。だがそのうち慣れる。辛いときは横臥など少し体位を換えてみると良い。直前まで浣腸があったため便意もあるような気がしていたがそのうち忘れた。この時点では腸は麻痺したままで実際は排泄などあり得ないようだ。排泄欲求に関しては不快だし何より心配になるが、大丈夫なので気にしないこと。

・吐き気:胃は空っぽだが吐き気はある。辛いがとにかく一度吐いてしまえば楽になる。家族付き添いの場合などは予め水等を吐き出すための容器を借りておくといいと思う。

・乾き:冬場は病室が乾燥していてかなり堪える。手術日の夜は水が飲めないが、ちょっと口をゆすがせて貰うと大分楽になる。付き添いが居れば良いが、無ければ点滴をチェックにくる看護師さんにお願いしよう。

・その他:私の場合は麻酔から覚めた後もかなり長時間心許ない状態だった。部屋は暗く感じるし声は聞こえてもうまくしゃべれない。自分でナースコールできるかなと思ったのは、術後10時間ほどしてからだった。私の入院した病院では面会時間が厳しく付き添いは許されなかったが、手術の夜だけは家族が側にいてくれたらとても心強いと思った。

★術後1日め
・朝から飲水可能。食事は不可。
・点滴は続く。朝、採血(術後の血液検査)
<着替え等>
・朝から身体を拭いて貰って普通のパジャマと下着に着替える。
・傷口は分厚いガーゼで覆われておりその上を腹帯で巻かれている。私はよく分からず普通の腹帯(要は何重かになったさらし)を用意してしまったが、マジックテープで留めるタイプが楽だと思う。
・術後に着用するショーツははき込みの深いゆったりタイプがいい。腹帯の上にゴム部分が来る形になるので、キツイと辛いだろう。
<傷の消毒>
・病院によって方針が異なるらしいが、私の場合は傷の消毒は抜糸まで行わなかった。その方が傷がキレイに治るという方針らしく、抜糸まで下腹部に厚い長方形のガーゼが当てられたままだった。

<活動>
・カテーテルが抜けるまでベッドは離れることはできない。ただ上半身を起こした方が回復が早いのか、翌朝はベッドの上半身をあげて座ったような姿勢にさせられた。
・歩いてトイレに行けるようになればカテーテルが抜ける。そのためにはまず横臥した状態から自力で上半身を起こせるようになることが第一歩。病院に提示された予定表では、手術翌日にカテーテルを抜くとなっていたが、術後二日目までかかる人も多いらしい。
・カテーテルを外した後はしばらく尿意を感じにくくなるらしい。尿意を感じなくても時間を決めてトイレに行くことで改善するそうだ。

・午前中座った形になっているだけで疲れた。ほとんど白昼夢を見ているような状態だった。昼にベッドを戻して貰い、昼寝のあとなんとか上半身を起こすことに成功。その後看護婦さんの付き添いの元、立ってトイレまで歩けることを確認してからカテーテルを抜いてもらった。
・尿意に関してはトラブルはなかったが、尿を計るのが意外に大変だった。立ってみてふらつきを感じるなら無理しない方が良いと思う。術後は驚くほど身体が弱っている上に、傷が痛いから急な動きはできない。とにかくゆっくりゆっくり、一つ一つ確認しながら動くこと。

★術後2日め
・もしガス(おなら)が出れば、流動食から食事開始。
・点滴はこの日いっぱいでだいたい終了(食事が始まらないと延びると思う)
<ガス>
・全身麻酔や半身麻酔の手術後によくガスが出れば食事開始と言われるが、これはガスが出ることで腸がちゃんと動き始めたことが分かるから。麻酔によって止まった胃腸は、元に戻るのに時間がかかる。開腹手術の場合は冷えによる麻痺も加わるのでけっこう苦労する。
・私の場合は術後1日目の夜にガスが出たが、ガスが腸内を動いていくのが痛い。一度出ればいいわけでなく継続して出続けることが必要だが、そのたびにけっこう痛くて、あまり眠れなかった。
・上半身を起こしたり立って歩くことで腸の動きは促進される。前夜、仰臥して片膝を立て、もう片方の足を立てた膝に乗せるといった、腹筋に力のかからないストレッチもどきをやったのが良かったようだ。

<食事>
・ガスが出たので朝から流動食。今回の病院では流動食2食、三分粥2食、五分粥2食、七分粥2食、全粥2食と合計10食を経て普通食になった。
・無理なく食べられる量に留める。あとはくれぐれもよく噛んでゆっくり食べること。腸も胃も、動き出す時はけっこう痛いので無理をしないで。
<活動>
・この日はまだトイレとの往復しかできなかった。ベッドから起きあがるのもトイレも一苦労。
・低血圧ではないのに術後は朝の血圧が100を割ってしまってふわふわしていた。もともと低血圧の方の場合はどうなるかよく分からないが、とにかく睡眠のあと起きて立ち上がる時はゆっくりと。

★術後3日め
<排泄について>
・粥を食べ始めると排便が少しずつ始まるが、ガス同様、便が腸内を移動していくときは痛く感じる。
・術後は便秘になりやすいとよく言われるが私の場合は大丈夫だった。効果の程は不明だが気を付けていたことは、こまめな水分摂取(1日に500ccボトルを1〜1.5本。自販機などで冷えた水を購入した場合は室内に放置して室温にしてから飲むことをお勧めする)、食事で出された野菜類は良く噛んで全部食べる、食後にヨーグルトや乳酸菌飲料を飲む、の3点である。

・膀胱は子宮の腹部側に貼り付くように存在している。子宮を取ると支えがなくなり尿意を感じなくなるから注意するように‥‥というのが事前に本から得ていた知識だった。しかし私の場合は逆で、かえって頻尿になってしまった。実はこれもよくあるケースで、子宮によって引き延ばされていた膀胱が、風船と同じで小さくなってしまったらしい。退院後、徐々に改善されていった。
・特に朝がそうだったが、排尿時、体内で何か触るような違和感がある。膀胱が形を変えたり動いたりして体内の傷口に触れているそうだ。子宮を取っても腹腔内のスペースは変ってないから(ぬいぐるみじゃないから外を縫い縮めてくれたりはしない)、こればっかりはどうしようもないのだが、痛い時はけっこう痛い。排便時の腸の痛みと重なって午前中のトイレは冷や汗ものである。

・膣の奥を縫合しているため少量だが出血がある。生理時のナプキンを用意しておくと良い(私の場合はパンティライナーのようなもので十分だった)
・抜糸までシャワーなどは使えないので、赤ちゃん用のおしりナップを使っていた。膣奥の縫合部分の順調な快復のためには、外陰部の衛生にも注意を払った方が良い。

<活動>
・午前中、初めて部屋の外に出て、廊下を歩いてみた。ちょっと往復しただけで鼓動が早くなった。午後は病院の1階にある売店までエレベーターを使って往復してみたが、エレベーターを待っている間も手すりに寄りかかっていないと辛いという状況だった。
・シャワーや入浴はできない。蒸しタオルを毎日貸してもらえたので、それで身体を拭いていた。
・傷のある下腹を庇いながら前屈みで歩いたため、この夜は腰が痛くなった。腰を伸ばすようなストレッチもできないのでかなり参った。ベッドの上半身を少しあげておいた方が起きあがるのは楽なのだが、この体勢も腰に悪い。兼ね合いの問題だが、起きあがれるようになったら平らにした方が良いと思う。
<その他>
・前日の夕食の三分粥のせいか夜中から胃痛がひどかった。この日は食事を一口飲み込むたびに胃が攣るような痛みがあり、ほとんど食べられなかった。医師の処方による胃薬を飲み始め、2日ほどで良くなった。

★術後4日〜6日め
・その後は日に日に快復していくという感じ。5日めぐらいにはゆっくり歩きとはいえ、病院内をあまり苦労なく動き回れるようになると思う。午前と午後に1回ずつ、階段上りを含めて15〜20分程度歩くようにしていた。
・膣内からの出血はごく少量だが術後7日目まで続いた。
・起床時の体内の不快感はあまり変化が無く続いている。また腹部から腿にかけて筋肉が軽く攣るような感じがある。ベッドで起き上がってしばらくその状態で居るとか、スロースタートで。

★術後7日目
・血液検査と尿検査
・抜糸。
・抜糸後下腹のガーゼは取ってもいい状態になる。傷口の支えのためには腹帯をしているのが良いようだが、さらしのぐるぐる巻きはやはり不便。退院後はガードル着用を勧められるので、この時点でガードルを着用しても良かったと思う。血行を悪くすると傷の治りに悪いが、傷をサポートできなければ意味がないので悩ましいところだが、ソフトタイプのガードルがあると良さそうだ。
・血液検査で貧血がわかり鉄剤を飲み始めた。手術前も直後も貧血ではなかったのにやはり手術は大変である。

★術後8日目
・やっとシャワーの許可が出る。入浴はまだ。

★術後9日目
・退院診察。内診や膣内からのエコー検査等により傷の具合を検査する。傷の上から押さえたりするのでちょっとイヤだが、我慢我慢。
・OKになると退院しても良くなる。私は迎えが手配出来なかったので、翌日退院となった。

 3)入院費用
保険適用分(3割)(これが本人負担分→
 保険がなければこれの3.3倍必要になる)
(内 入院料12日分 11泊でも12日
(内 治療、手術料
170,020円

61,945円)
108.075円)
食事負担額
7,800円
個室差額 (8000×12×1.05)
100,800円
診断書 (保険会社への請求のため)
5,250円
 4)入院時あると便利なもの
・入院時に持ってくるものは病院で指示があるが、あって便利だった物は以下。

・下着類:前述したがゆったりタイプが良い。腹帯やらガーゼやら胴部に色々巻くし、きついと腸が動く時も余計辛い。パジャマのパンツもウエストをゆるめにしておいた方がいい。
・ガードル:抜糸の後で使う。私は用意できなかったが(入院時はむしろジャマになると思っていた)、在れば良かったと思った
・バスタオル:3枚準備と言われたが、使ったのは術後のベッドの頭部分に敷き込んだだけだった(嘔吐した場合を考えたと思われる)。以前私の家族が別の病院で手術した際、術衣が無く、手術直後にバスタオルだけでストレッチャー移動していて、それならもっと大きなのを持ってきたのに‥‥と後悔したことがあった。だから1〜2枚は大判バスタオルを用意しておくといいと思う。

・ウェットティッシュ:普通のものと赤ちゃん用のおしりナップのようなのがあると便利。
・生理用ナプキン:入院時にはお産パットを用意するように言われ、術後は看護師さんがそれをあててくれる。だが自分で動けるようになったら生理用ナプキンの方が便利。
・ハサミ:文具用の適当なのでOK。ちょっとパッケージを開けたり、貰った花の手入れをしたり、あると便利。
・蓋&ストロー付きのコップ:夜中の水分補給に。最初は本当に体を起こすのも辛いので、傾けてもこぼれないストロー付きのコップは便利だった。
・小さな手提げかポシェット:病院内は面会や業者のフリをすれば無関係の人も入って来られるので、部屋を離れるときは貴重品は持って出た方が良い。でも最初は歩くのがやっとだし両手を開けるために手提げかポシェットがあると良いと思う。私は用意が無くて仕方なく小さなレジ袋を使っていた(汗)

・枕:私は持ち込まなかったが自分の枕があった方が良かったかもしれないと思っている。病院の枕が高すぎて合わずバスタオルを畳んで使っていたが、入院中はほとんど毎日頭痛を起こし、鎮痛剤を使っていたのだが、帰宅したらあっさり治った。枕が原因だったのではと思っている。ただでさえ身体は過敏になっているので、使い慣れた枕があるのは悪くないだろう。

冬場でもし可能なら・・・
・加湿器:病室は本当に乾燥していた。湿度は30%を割ることもあり、ただ寝ているだけで手ががさがさになるほど。あまりの乾燥に呆れた夫が、手術の翌日に家から加湿器を持ってきてくれて本当に楽になった。加湿器は気化式がGOOD。
・電気毛布:前述したように私は過去に自律神経失調による体温低下を起こしたことがあり、怖かったので持ち込んだ。術後は使わなかったが、その後ひどい頭痛を起こした時や、夜中に足が冷えて仕方がない時など心強かった。また病院で眠れない時など、上半身を起こし足だけ電気毛布に入れて温めると、半身浴のような形になってリラックスできた。

 5)退院後の状況
<退院時に説明された注意事項など>
・入浴:外来検診後医師と相談して‥‥ということだったが、退院診察時、医師からは出血も止まっているし、退院後2、3日すればOKと言われた。
・飲酒:出血が止まって術後2週間すればOKとのこと。
・自転車は術後一ヶ月を過ぎてから(振動+腹部の運動というのは良くない)
・傷のサポートのためにガードルを着用すること。
・退院後2週間ぐらいは重い物を持つのは不可。

★退院後1週間(術後11日〜17日目)の様子
・傷痕のつっぱった感じや体内の違和感はまだ続いている。寝起きに腹筋が攣るような感じがある。
・この間はほとんど家事はしていない。日中はほとんど座っている状態。車で5分程度の近場に買い物に行ったりした程度。
・退院後2日目は脚部のみ入浴。3日目は半身浴。4日目〜普通に入浴。血行をよくするには最適と思い1日2回入浴をしていた。新陳代謝を促すためにも良かったようだ。
・体重はこの期間で40.5キロ程度に戻した。これは(元の体重−除去した重量)であり、しばらくこの体重を維持すべく気を付けていた。
・血行を良くするため毎食前の養命酒を飲み始めた。

★退院後2週間(術後18日〜24日目)の様子
・ぼちぼち外を歩き始める。最初は往復で1キロぐらいの場所に買い物。少しだけ電車に乗ってみるといった所から始めて、色々買い物巡りをするなど活動範囲を延ばしていった。
・家事も普通に行う。ただし少しでも疲れたら昼寝をする等、のんびりのんびり。
・術後22日め、退院後の最初の通院。内部の傷もよく付いており、もう1週間たったら軽い運動など始めても良いと言われる。通院はこれで終了。
・体内の違和感はほぼ無くなってきた。
・1日2回の入浴と養命酒、体重の維持はそのまま続けている。

★退院後3週間(術後25日〜31日目)の様子
・ほぼ普通の生活。それでも本格的に運動するのは3ヶ月後からと決めた。食事の調節だけで体重の維持を図り続ける。また下腹に力を入れないことにも注意している。
・術後26日めの日曜日には電車で1時間ほどの場所に半日ほど遊びに。あまり早歩きはできないが、それでも仲間に迷惑をかけない程度には歩き回れる(苦笑)。帰宅してからもそう疲れた感じはしない。
・術後30日めから会社へ出社。システム系のため座って行う作業がほとんどなので特に問題なし。ただ椅子から立ち上がる時など、どうしても傷が触る感じが気になって、以前ほど素早く動けない気がするがこれもすぐ慣れるだろう。出社後1ヶ月は車通勤にすることにした。

 6)傷痕について
抜糸の直後の傷痕は皮膚の段差もあったりするが、退院後数日過ぎた頃には随分綺麗になってくる。術後1ヶ月過ぎると切開した部分が赤い線の様になっていて、左右に針のあとがぽちぽちとついている程度。ただしこれは42歳の私のケースであり、若い人や基礎代謝の高い方はもっと早く修復しているだろうし、老齢の方は逆にこれよりかかるかもしれない。またケロイド体質の方は色々違っていると思う。

<術後のヘルニア(腹壁瘢痕ヘルニア)について>
子宮を切除するためには当然だが、皮膚だけでなく腹筋も切っている。皮膚や筋膜は縫っているが、筋肉そのものは可動部位だから縫い固めることができない。なので抜糸した時点では皮膚はくっついているが、筋肉は分離している状態である。
老齢者や肥満者で筋肉や皮膚の組織の付きが悪い場合。術後に腹筋を通常通り使うと、筋肉が分離したまま固まってしまうことがある。すると脆弱な部分から脱腸(腸が飛び出す症状)になる。これが腹壁瘢痕ヘルニアである。若くて(40代は手術の世界では若い)肥満体でなければあまり心配することはない。
腹壁瘢痕ヘルニアは手術直後ではなく、数年後経ってから起こることも多く、一度起きれば何度も再発する恐れがあり(手術層が薄いまま固まっているので)、たいへんやっかいなものである。
なので術後は切開された腹筋を馴染ませるため以下の点に注意する。
1)血行をよくする。タバコは厳禁。
2)腹筋を使わない。腹筋が切り分けられたまま硬くなると馴染みにくい。
3)肥満に注意。皮下脂肪が多いと手術の時も切開しにくい、縫いにくい、手術創が汚くなるといった悪影響がある。術後は傷痕に不要な腹圧がかかるので治りが悪い。特に術後に急に太るのは創が引き延ばされる形になるので非常に良くない。とにかく手術の前も後も「腹すっきり」状態を保とう。

<縦切り横切り>
子宮筋腫の手術では縦切りか横切りかということが云々される。縦切りというのは臍下から恥骨の上部にかけて縦に切る術式。横切りは恥骨の上あたりを横に切るものである。手術創が完全に消えることはなかなか無いので、切開箇所はできるだけ目立たない位置が良い。横切りならビキニも着られる」と言われるが、横切りは傷痕が陰毛に隠れるほどの位置にあるわけで確かに問題が無い。
なのになんで縦切りと横切りが存在するのか。

腹筋の筋肉繊維は縦に並んでいる。それを切断したら繋ぐのは難しい。だから腹筋は縦に切らなければならない。縦切りは問題無しとして、横切りの場合は皮膚を薄く横に切ってからその皮膚をひっぺがし、筋肉を縦に切るのである。
皮膚を筋肉から剥がす作業はけっこう手間がかかるものであり(魚の皮を剥がすのだって大変だ)、縫うときはそれを被せて縫うにしろ、剥がした組織が馴染むにはある程度時間がかかるだろうことも想像できるだろう。
そして何より問題なのは、手術中に問題が生じてもっと大きく切らなければならなくなった場合だ。縦切りなら臍上に切り開くことができるが、横切りではそれができないので改めて縦に切り直す。つまり十文字の傷口になってしまうわけである。

技術進歩によって横切りが可能になったのは事実だ。だが改めて全身麻酔で手術されている自分の状態を考えてみよう。自力で息もできず体温も極端に低い状態で下腹をぶった切られて横たわっている‥‥。それはほとんど死体といっていい、あまりに不自然な状態だ。そんな状態は1分だって短い方がいいと私は思っていた。自分の手術は非常に短時間で終わったのだが、要因は次の3つだ。初めての手術で癒着が無かったこと。縦切りだったこと。下腹の皮下脂肪が少なかったこと。
若いとか、ケロイド体質等で横切りでないと困る人もいるだろうし、横切りで順調な経過を辿っている人も沢山いる。だが横切りとはそれなりにリスクがある術式であることも認識しておく方が良いと思う。

 7)最後に
術後1ヶ月を経てとにかく手術して良かったと思う。これから先、月経も無ければ子宮ガンの恐れも無い。とても開放感がある。そして何より切羽詰まった状況ではなく、余裕を持って手術できたことも良かった。これも実際に困った症状が出る前に子宮筋腫があることがわかっていたおかげだ。
婦人科検診は女性にとって決して快いものではないが、やはりある程度の年齢になったら受診しておいた方がいいと思う。状況が解っているのと居ないのでは大違いだ。そして毎年の血液検査は必須。実際に貧血になっていても、最初のうちは気付かないまま過ごしてしまうことが多いので。

それから自分の感覚の大切さを今思ってる。腸が動かない、筋肉が馴染まない‥‥。そういった色々なことに対して、生物としての自分の感覚を大事にする。人間の身体ってのはしみじみと物理的なものだから。
「病気を治すのは自分自身で病院はそれを手伝う所」というのは知人の医師の言葉だが、ほんとうにその通りだと思う。医者の言う「完治」とは「治りました」ではなく「私にできるのはここまでです」という意味なのだろう。あとは自分がどうするかだ。
初稿:2005/2/15 補足:2005/3/5(戻る)