愛しきものへ‥‥
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カプセルコーポレーションの広大な庭に、銀色の大きな卵のような物体が突如出現した。
一人の青年が降り立ち、マシンをカプセルにしまう。
午後の日差しに肩までの銀髪が輝いてまぶしい。

「トランクスッ!!」
すみれ色の髪をなびかせて、自他共に認める若き天才科学者が駆けてくる。

「母さん! おひさしぶりです!」
「何言ってんの、無事だったのね・・・・・・って、あんたっ、いったい、いくつになったのっ?」
「あ、このあいだ26になりました・・・・・・」

セルを倒して未来に帰った時は23歳、4ヶ月少しが経って、戻ってきたら26歳・・・・・・
(さすがのあたしも、頭こんがらがるわよ・・・・・・)
けれども・・・・・・

あのころのトランクスに感じた悲痛な焦燥感は、今はかけらもなく、あふれる優しさはそのままに、ほのかな自信に裏打ちされたおだやかさを身にまとった未来の息子は、もう立派な青年になっていた。

「その様子じゃ、人造人間も、セルも、倒したのね」
「はい。人造人間は3年前・・あ、こっちの時間だと4ヶ月前ですけど、未来に帰ってすぐに
 片づけました。それで昨日、チャージが終わったタイムマシンを奪いにきたセルを倒して・・・・・・。
 あんまり来ちゃいけないとは思ったんですけど、どうしてもみなさんにお礼が言いたくて・・・・・・」

「未来の様子はどうなの?」
「この3年で、だいぶ復興が進んでますよ。母さん、人間って、ほんとすごいですよね。
 みんな一生懸命なんです。家族を殺された人もたくさんいるし、物資も足りないし・・
 でもみんな一生懸命助け合って、元の生活を取り戻そうとしてるんです」

トランクスが顔を輝かせて続ける。
「オレ、ほんと嬉しいですよ、今、あの世界にいられて・・・・・・」

「トランクス、あんたって子は・・・・・・」
4ヶ月前、「人造人間なんて、チャッチャッと倒してらっしゃい!」と送り出しながら、タイムマシンが見えなくなった瞬間、泣けて泣けてどうしようもなかった。いくら強くなったとはいえ、たった一人。誰の助けもない戦いの場に、あの子は戻っていくのかと・・・・・・。
でも、今、トランクスは自らの手で平和を勝ち取り、人を信じる気持ちを裏切られることなく、充実した日々を送っているのだろう。

「それで、母さん。悟飯さん、あのあと、大丈夫でしたか?」
「チチさんと時々電話で話すんだけど、孫君が死んだのは自分のせいだって、
 ずいぶん自分のこと責めてるみたいね。まあ、最近はずいぶん落ち着いてきたらしいけど。
 あの子、あんたに似て、なんでも責任、感じちゃうほうだから・・・」

「やっぱり、そうでしたか・・・・・・。それで、あの・・・・・・父さんは・・・・・・」

「これはこれで、何考えてんだか。ずーっと部屋に閉じこもってたかと思うと、
 ふっと何日も姿が見えなくて・・でも、昔みたいに修行してる感じじゃないのよねー。
 最近は重力室もクモの巣が張ってんじゃないかって心配になるわよ。
 でも食欲は落ちてないから大丈夫なんじゃない?
 修行しないであれだけ食べて、よく太んないわよねぇ、まったく」

ことベジータのことになると、普段よりいっそう勢いよくポンポンと言葉が飛び出してくるのがブルマである。トランクスにとっては、まだまだ近寄りがたいところのある父親なのだが・・

(母さんにかかっちゃ、父さんも形無しだな・・・・・・。
 でも父さん、悟空さんがいなくなって、本当に気落ちしてるんだ・・・・・・)

「あーっ ベジータで思い出した! あんた、いいとこに来てくれたわっっ」
いきなりブルマが大声を出して、トランクスはいやな予感がした。

「ね、武道大会に出てくれない? 『天下一大武道大会』!
 そんでもって『世界の温泉巡り旅行』に連れてってよ!」
「はぁっ??」

どこだかのヒマな大金持ちが、5日後に大規模な武道大会を開くのだが、その優勝の副賞が『世界の温泉巡り旅行』なので、それをとってこい、というのがブルマの話である。今のベジータでは頼んでもムリそうなので、困っていたのだ、と真剣な顔で言う。

「ちょっと待ってください! 旅行なんて、わざわざ武道大会出なくても
 いくらだって行けるでしょう?」

「だって、行く時間ないじゃない」
「時間ないなら、賞とったって、行けないじゃないですかっ」
「賞品でもらったもんなら、行けるのよっ」

うーん・・・・・・と頭を抱え込む。
「・・・・・・それ、純粋な地球人じゃなくても、出ていいんですか?」

「大丈夫大丈夫。孫君やピッコロだって、昔、出てたんだし。
 それに、4つの銀河の戦士がゲストで来るって書いてあったわよ」

「ええっ? オレの時代だって、外銀河との交流なんて、ないんですよ!?
 いったい、いつの間にそんな技術が・・・・・・」

「バカね、こっちはヤラセに決まってるでしょ。じゃ、早速申し込みしとくわね!」

いつの時代でも母さんは、母さんだ・・・・・・。
心の中で大きなため息をつくトランクスであった。


***===***===***

「悟飯ちゃん 今日これから、ブルマさんが来るぞ。それでなぁ・・・・・・」
電話を置いたチチがにんまりとした笑いを浮かべる。

「トランクスさんも来てくれるの?!」
悟飯が満面の笑顔で訊ねかえす。

「なんだ、知ってたのけ?」

「うん、昨日急にトランクスさんの気が現れたから!」

悟飯は未来からやってきたあの銀髪の少年がとても好きだった。ずっと年下の自分に「悟飯さん」と呼びかけてくれるのが、なんとなくくすぐったくて、でも誇らしくて。漠然と、あんなふうになれたらいいな、と思う、憧れの人でもあった。

セルゲームの日をひかえて、悟空がトランクスに言ったことがあった。

「今のおめえなら、未来の人造人間やセルには余裕で勝てるはずだ。
 こっちはオラたちにまかせて、帰ってもいいんだぞ」

「いえ・・セルの最後を見届けるまで、こっちにいさせて下さい。
 オレがもう少しうまく対応できていれば、セルが完全体になるのを阻止できたんです。
 それに、だいたいセルは、未来のオレのタイムマシンを奪って、
 この時代にきたんですから・・・・・・」

「セルが完全体になったのは、おまえのせいじゃないだろ。
 それに、未来の自分に責任なんてとってられるか!」
その場にいた天津飯がめずらしく怒ったような声で言った。

「おまえな、そんなになんでも抱え込もうとするんじゃない。
 こっちの時代、メンツはそろってるんだぞ」

「ええ・・・・・・でも・・・・・・。
 あ、やだな。だってオレ、タイムマシンで帰るんですから、
 こっちをいつ出発したって、同じじゃないですか・・・・・・」
トランクスは照れ笑いをして頭をかき、
周りの連中も、そりゃそうだが・・・・・・と、その場は収まったのだが・・・・・・

(それでも、帰りたいだろうな)と聞いていた悟飯は思った。あれだけ倒したかった人造人間を圧倒する力を手に入れて、本当だったら、矢も楯もたまらず、自分の時代に・・・、自分を待ってくれる人のもとへ、帰りたいんじゃないか・・・・・・。

いくら戻る時間が同じだと言っても、気持ちは・・・・・・。

見ていて、苦しくなるぐらい
優しい人だったと、悟飯は思った。


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