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デジャ・ヴュの風景(Dance with The Fear!) 神殿の一室で、天蓋付きのベッドの上にいたメディは、隣で眠っているはずのサヤが見あたらない事に気が付いた。今は昼寝の時間。育ち盛りの子供ということで、眠ることも修行なのだ。 「さ、サヤ・・・?どこだよ?」 メディは(サヤもだが)まだ『気』で力をとらえる事ができない。そのため、サヤが神殿のどこにいるのかさえわからない。 「もう、起きたのかよ・・・?」 あと1時間は眠っていなくてはいけないのだが、サヤがいないせいかメディの目はぱっちりとさえてしまった。 「くそ。」 メディは舌打ちをしながらベッドから起きると、サヤを探しに部屋の外に出た。 サヤはここに来てからというもの、自分から離れて行動することが多くなった。ちょっと前までは自分とサヤ、ふたりセットのようだったというのに。 「『二人セット』かあ・・・。」 彼らの事を『セット』と言ったのは、金髪碧眼、三つの目を持つシャラだ。自分よりも5つ年上で、彼の弁髪がお気に入りのサヤを妹みたいに可愛がっていた。 神様の神殿で修行する、と言った時も一番心配していたのはシャラだ。 「元気かなあ・・・シャラ兄ちゃん・・・。まさか、オレのいないスキにローレ姉ちゃんに手え出してねえだろうな・・・。くそ。」 そんなことしたら、ぜってえぐれてやる・・・とひとりごとをぶつぶつ言いながら、神殿の中庭の方に出ていった。 柔らかい日差しの中で、神が椅子とテーブルを出して、お茶をしながら本をめくっている。 「お〜い!神様あっ!サヤ見かけなかった・・・?あ。」 「しっ。」 神は、人差し指を唇にあてて静かにするよう、メディに促した。 サヤは、中庭の中央にあるでっかい木の幹にもたれかかって、ぐっすりと眠りこけていた。西の都にある自分の家に来たとき、ベッドが柔らかすぎて眠れなくなっていた彼女にとって、最高のフトンは緑の草と木の幹なのだろう。 長いまつげを閉じてぐっすり眠っているサヤは、ものすごくカワイかったが、それは今はどうでもいい。 「な、なんで隣りにピッコロさんがいるのさ・・・っ。」 サヤは木の幹にももたれかかっているが、体の半分はピッコロの体にもたれかかっている。サヤの柔らかい髪と頬がピッコロの腕に触れているのを見た瞬間、メディの顔は真っ赤になった。 「そ、そ、そこはオレと姉ちゃんだけの特等席だったのにっ!!」 「静かにしなさい、メディ・・・。どうしたんですか?あなたはまだ眠っている時間でしょう?」 「神様は黙っててっ!」 メディはずんずんと草を分けてピッコロ達の方に向かった。向かった、というよりも突き進んだ、と言った方が正しい。 「ぴ、ピッコロさんがサヤを、べ、べ、ベッドから連れ出したの・・・?」 「そんなことするか。サヤが勝手に出てきて、オレを枕代わりにしているだけだ。」 『勝手に』とか抜かしてる割には嬉しそうだ。くそったれ。 「ちっくしょう〜っ!!ピッコロさんのどすけべっ!ばかっ!ぐれてやるぞオレ!」 「だから、どうしたらそんなことになるんだお前は・・・。」 「いい加減にしなさい。今は疲れた体を休める時間ですよ。ホラ・・・。」 神はメディの腕をムリヤリ引っ張って、自分と向かい合わせになっている椅子に座らせた。ジャスミンの葉をコップに入れて、湯を注ぐとそれを彼に手渡した。 「コレを飲んで。眠れないのなら、黙って体を休めていなさい。」 それだけ言うと、神はしおりを挟んだ本を手に取って、また続きを読み始めた。 メディはジャスミンティを素直に受け取って、ずず・・・とやけどをしないようにすすった。 本はあまり好きではないメディにとって、神様の読書量は、ハタからながめてうんざりするものがあった。 目の前にいる『神様』は、さっきから表情を変えずに難しそうな書物に目を通している。普段、くるくると表情を変えるサヤと一緒にいるせいか、無表情に近い顔をしている神様の側にいるのは、ちょっと緊張した。 だがメディはこの心地よい緊張感がキライではなかった。 神様・・・というには自分が想像していたものよりも遙かに若くて、ピッコロとは対照的な細い体。声は自分の姉のように優しくて、いつもにこにこしていて、時々ピッコロの蹴りよりもグサっとくる一言を吐いてくれる。 「なあ、神様・・・。オレさあ、もう強くなったでしょ?」 メディは、透かし彫りの入った椅子にだらしなく腰掛けて、自分の向かいにいる神様に願いを請うようにつぶやいた。 神はこちらを向かない。白いローブの裾を気にしながら、書物を片手に彼の話に耳を傾けている。 「もうさ、みんなに会いにいっちゃだめなの?」 「いけません。よけいな事考えていないで休んでいなさい・・・。」 顔を自分の方に向けず、間髪いれずに彼の返事が来た。 メディはたしかに、地上ではもう敵なしだろう。しかし、3年間はここにいることを約束させられたのだ。 「あなたはここで修行を3年すると最初に約束したはずでしょう?まだ1年しかたってませんよ。」 メディはサヤとピッコロの方をちらりと見てから、また視線を神に戻した。 「そうだけどさあ、オレ、神様よりはもう強いよ。だろ?」 「おい、メディ・・・。」 「かまいませんよ、ピッコロさん。さて・・・どうでしょうね?」 彼をたしなめるようにしたピッコロの言葉をさえぎって、神はニコニコ微笑んだ。そして、神はちょっと目を丸くしてようやくメディの方に振り向くと、くすくす笑った。 「だって、神様は戦いが専門じゃないって言ってたじゃん!オレは毎日毎日、ピッコロさんに教えてもらってるしさ!神様より強いよ!」 「毎日、毎日・・・ねえ?」 彼は、いたずらを考えてる子供のような目になって、メディにこんな提案をした。 「・・・そうだ。わたしの顔を殴ることができたら、今すぐにでもあなたの友人や、姉のもとに帰ってもかまいませんよ。」 「ほんと!!」 「おい、デンデ!」 メディはやる気十分で、首と手をコキコキと鳴らし始めた。 「その顔が形変わってもしらねーよ、オレ!」 「ばかな、何考えてる!?」 心配するピッコロをよそに、神は楽しそうに本を閉じた。 「大丈夫ですよ、ピッコロさん。」 「へっへっへ・・・。覚悟しろよ!・・・って、神様、そんなカッコで大丈夫なわけ?」 メディは神が着ている優雅な裾のローブを、わざわざ心配している。 それだけ余裕があるということを示したいようだ。メディは神のカッコを上から下に眺めて、『フフン。』と得意げに唇を上向きにしてみせた。 「そうですね、それじゃあ。」 神が人差し指で宙をかくと、ピッコロのものとデザインはほとんど同じだが、色が対照的な白い服に変わった。 藍色のマントをきちんとたたんで、草の上に置くとメディに向かってニッコリ微笑んだ。 彼の顔つきは、いつか故郷の星を守ろうとした者によく似てきた。体の線が少しばかり細い事をのぞけばそっくりだ。 「・・・ネイルに似てきたな・・・。」 神は手を組んで、両腕を空に上げると思いっきり伸びをした。 「さて。ピッコロさん、合図をお願いします。」 「わかった。」 「オレが勝つよっ!」 ピッコロが『気』の固まりをふっ・・・と宙に投げた。『気』はそのまま幹に沿って上の方に上がっていき、・・・一本の枝を折った。 ばきっ!! 音が鳴った瞬間、メディはテーブルを乱暴に神のほうに足蹴にすると、それを盾に影からすかさず拳をふりかざした。 「どりゃあああっ!!」 ばこっ!!!と殴る手応えはあったはずなのだが、メディが殴ったものは神が腰掛けていた重い椅子だ。 木製の椅子は、メディの殴られた衝撃でささくれだって彼の手に大きなキズを作った。 「いってえっ!!ちくしょうっ!ど、どこ・・・?」 「こちらですよ。」 後ろから、面白そうにメディをおちょくる声がする。神は手のひらをひらひらさせて、宙に腰掛けるようにして座り、くすくす笑っている。 「きたねえぞ神様っ!!ふわふわ宙に浮いて!!ずりーよ、オレ浮けないんだぞ!!」 「練習すればだれでもできますよ。最も、わたしは生まれついての能力ですけど。」 「メディ、やめろ。とてもお前のかなう相手じゃないぞ。」 どうやらピッコロが心配していたのは神の身ではなくて、自分だったらしい。 そう言ったピッコロの腕にもたれているサヤは、くうくうと寝息を立てて眠っている。それを見た途端、またメディの頬は真っ赤になった。 くっそおっ!!と舌を鳴らして宙に浮いている神につかみかかった。が、またしても訳のわからない衝撃波にはじき飛ばされ、自分の体がばぢっ!!とイヤな音を立てた。 神の周りに、薄い緑色のベールのような物が現れて彼を球状に包んでいた。 これが、マンガとかによく出てくるバリヤーか。くそ。 「さっきから、ずるいぜ神様っ!!自分ばっかり浮いたりバリヤーはったりさ!!」 「わたしはあなたより力がない、ですからね。このくらいのハンデは当然でしょう?」 『力がない』というところだけわざと強調して言う神に、メディはぐ・・・と言葉を詰まらせた。 神は、焦げた髪の毛から煙がくすぶっているメディに、面白そうに言葉を続ける。 「さて。わたしは戦いが専門ではないハズなのですが・・・。おかしいですね?あなたよりも力のないわたしのほうが、優勢だ。」 「ずりーマネばっかしてっからだ!!見てやがれ!!その口から殴ってやるぜ!!!」 殴りかかったメディに対して、神はわざとバリヤーをといてひらりと宙で方向転換した。 「だあっ!!」 「よっ。」 「おりゃあっ!!」 「はっ。」 「ででででいっ!!」 「ぽん、と。」 神は花に気をつけて、草の上に足をつけるとメディのほうに向き直った。彼は肩を上下させて息をしている。 ムリもない。 この神殿の空気はかなり薄いのだ。 「ち、ちくしょう、こんなハズじゃ・・・。」 「さっき、あなたは私が戦い専門ではない・・・と、言いましたね?たしかにその通りです。」 「じゃ、じゃあなんで・・・?」 ピッコロはサヤを気にしながら、くっくっと面白そうに笑った。 「『継続は力なり』ってやつの賜物だぞ。デンデの力はな。」 「は?」 「ここ、100年の間・・・。地球は平和で・・・何事もなくて。それはとても良い事なんですけどね。・・・ちょっと退屈だったから、ピッコロさんに武道を教えてもらったんです。」 「な、なんだって!?」 「わたしのこの格闘技術は、100年間の継続の賜物なんですよ。」 そういえば、動きもなにもかもがピッコロによく似ている。自分をかわす仕草や動きがとても。 「ひゃ、100年と1年だったら、オレの方がぜんっぜん不利じゃねえか!!」 「あなたは、私と違って、血統も体もすべて戦闘用に作られてます。100年修行しなくても、すぐにわたしを追い越すことができますよ。」 「く、くそうっ!!おちょくりやがってえっ!!」 メディはぶんぶんと拳を振り上げて、くすくす笑う神の方にかまわず向かっていった。当然だが、彼の拳は空を切るばかりで、神の顔どころか服にさえかすりもしない。 「さ、はやく休んで、修行にそなえなさい!あなたはまだまだ強くなる余地が残っています。」 「へっへっへえ・・・。ぜえっ、ぜえっ・・・。フフン・・・だ!それは、ど・う・か・なあ〜?周り見て見ろよ神様。」 にやにやしながら言うメディに、神は周りを見渡した。 ・・・・・・あ、ちょっとまずい・・・。 気が付けば、中庭の隅に追いつめられる形になっていたのだ。しかも、この場所はでっかいランプがつるされているので、そう簡単に宙に浮くこともできない。 「そのランプさ・・・、神様の大事にしてるやつだったよね?うっかり浮いてぶっ壊しちゃったらどうする・・・?さあっ!!覚悟しやがれあーっ!!!」 ローレ姉ちゃん!!シャラ達も!!まってろよお、今いくぜえ!!・・・などと勝手なことを言いながら、メディは全速力で自分の顔めがけて殴りかかってきた。 「これはまずい・・・。」 神は宙から杖をポンと取り出して、念を込めた。 「はっ!」 途端に、彼のからだからすさまじい『気』が発揮された。もちろん、ランプがこわれないように調整しながら。 突然、鈍く銀色に光り出した神の体にメディは一瞬驚き、足が自分の意志とは無関係にひるんでいるのがわかった。得体の知れない恐怖がメディの体と意識を包む。 「な・・・なんだよこれ・・・。な、なんだよ、なんなんだよ!!」 思わず大声をあげたメディに、神が静かに答えた。 「よかった・・・。やはり、あなたは相当強くなっていたようですね。そうでなければ、あのまま殴られていた所でした。」 「神様、なんなの?なんなの!!なんなのこれ?!!」 「あなたが、最初にここに来たときよりも、強くなっている・・・ということを前提にした『最終兵器』です。」 神はいつもと変わらない表情に戻って、メディに微笑んだ。 「さいしゅう・・・へーき?」 「あなたは、他人の強さがわかるようになったってことです。格闘能力だけではない、わたしの、神としての気もわかるように・・・ね。」 「そ、そその銀色は『神様オーラ』ってやつか・・・。」 「あははっ・・・そのとおりですね。あなたは、わたしの『神としての気の強さ』がわかったので、足がひるんだのです・・・。」 メディは、納得したように振りかざしていた拳をおろした。しかし、顔には眉間にしわがより、悪い目つきがさらに悪くなっている。 「だ、だけど・・・。」 「だけど?」 「だけど、それって、オレがビビったってことだろ!?神様の力にさっ!!そんなのヤだよ・・・。かっこわりいよ・・・。」 神はめずらしく頭を下げてうなだれるメディの頭にポン、と手を置いた。 「そんなことはありません・・・。敵の強さもわからずにやみくもに立ち向かうのと、敵の強さを知った上で、その恐怖と共に向かうのと・・・どちらが良いか、あなたならわかるでしょう?」 「・・・・・・。」 「あなたの、ここでの修行の目的のひとつは『恐怖を知ること』ですよ。」 「きょ、恐怖・・・。」 「そう。恐怖を知らなかったから、あなたは一度、大切な人達を失う事になったんです・・・。それはわかっているでしょう?」 「・・・・・・はい・・・。」 メディは、シャラと姉が自分に覆い被さるようにして、庇う所を思い出した。今は、ドラゴンボールの力で二人とも生き返っているが、そのシーンは二度と思い出したくないシーンの3本指に入る。 指先から放たれた光線によって、細い姉の体に鮮血が飛び散り、シャラの体が黒こげになる。 自分の目に、飛び散った姉の髪がふわりとかかる・・・。 メディは頭をぶんぶんと振って、その映像をかき消した。 そして、神はいまだに頭を下げたままのメディの肩にポンと手をやると、ひとつだけ壊れてない椅子の方に彼を連れていこうとした。 「さ、メディ?いい加減・・・。」 「スキ有りーっ!!!」 バキっ!!という手応えはあったが、神の顔ではない。今度は杖に自分の拳がめり込んだ。 先ほどキズをした場所に2度目の木片が刺さる。 「・・・あのですね、メディ?そんな手にひっかかると思ってました、か?」 「ひ、ひ、ひい〜っ!いたい・・・。・・・ご、ごめ、ごめんなさい・・・。」 神は、痛そうにキズをさするメディの手を取って念じた。不思議で優しい力が手を包む。 「さ、早く・・・休みなさい。まったく。」 「どうなるかと思ったぞ・・・。」 「わたしが、ですか?それともメディがですか?」 デンデはくすくす笑って、木にもたれてようやく眠ったメディの隣に腰を下ろした。 「どっちもだ。メディは、どんどん強くなっているからな。いつ金色に輝くかわからんぞ。」 「そうですね・・・。メディは強くなりたい動機が、ここに来てから増えていますし、ね。」 あれだけ派手な音を立てたというのにぐっすり眠っているサヤを見つめて、デンデはまたくすくす笑った。 「動機だと・・・?」 「ふふっ。昼寝の時間、ちょっとだけ長くしてあげてくださいね。」 昼寝が終わったら、サヤにも『気』の捉え方を教えなくてはな。 いつか神よりも強くなるであろう、この者達にたたき込むか。 いつか弟子だった者のように・・・。 (1) (2) <3> (4前) (4後) (5前) (5後) (6前) (6後) (戻る)
またまた解説・・・・・・
名前だけ登場した、ふたりの兄ちゃん的存在のシャラはおわかりと思いますが天津飯さんの子孫でっす(@^^@)。名前の由来は手塚治虫先生の『三つ目が通る』の写楽くんから(天さんをバカにしてるわけではないですよっ!!)です。ランチさんの子孫でもあるのかな? メディのお姉ちゃんは・・・性格はブルマがわかりやすく優しくなった(何それ?)感じです。メディはシャラがメロメロになるくらいの美人です。ブルマの血を引いてるから当たり前か・・・。 彼女の名前の由来はですね・・・これまたややこしいのですが、メディ→メディウム→ミディアム→レア→Rare→反対に読んで、エラ(魚類かい)。→エラーError→反対に読んでローレ・・・です。もう少しカワイイ名前にすればよかった・・・。 |