sunshine HEAVEN!
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青い空は海に負けず劣らず濃い色で、競うように水平線を二分していた。白い雲は自分たちの上には出来ず、海の上にいくらかあるだけなので、太陽の強烈な日差しが遠慮なく肌をさす。
しかし、それはヤシの葉の緑を透かす事で幾分優しくなった。
天然のすだれの下で、クリリン達は白い砂の上にレジャーシートを広げてごろりと寝転がっていた。
毎日が夏休み状態のこの環境では、どうしても宵っ張りに朝寝坊になってしまう。朝起きて朝食を食べて、時間がちょっとすぎると潮風が眠気を誘って、昼まで眠っていることになってしまうのだ。

マーロンは18号の胸に顔をくっつけて、クリリンと彼女の間にはさまって眠っていたのだが、夜更かししたわけでもないので眠いはずもない。潮風と母親の香りはとても好きだが、すぐにむくりと起きた。
「おや〜・・・マーロンちゃんはもう起きたのかい?」
「うん・・・ねむくないんだもん。・・・ねえ?亀さんどこなの!?」
「ああ、あいつなら今昼飯の用意をしとるわい。なんじゃ、亀に何か用なのかい?」
相変わらずのサングラスに隠れた亀仙人の瞳は優しい。自分の孫のようなマーロンを彼はとても可愛がっていた。マーロンも彼の事は大好きだったが、今日はカメの方に用事があるらしい。
「あのね・・・、おとうさんとおかあさんがねてるあいだにね、周りにかいがらいーっぱいならべてあげるの!竜宮城みたいで、おきたらびっくりするでしょ?」
「ふむ・・・。けど、貝殻ならそこらへんにいーっぱい落ちとるよ。」
「えへへっ。」
マーロンはニッコリ笑うとヤシの木の方角を指さした。
「むこうの島にね、きれいなかいがらがいーっぱい落ちてるの!このあいだ、亀さんといっしょにあそびにいったときにみつけたのよ!」
「ほうそうか・・・。ちーっと待っとれ。今呼んでくるわい。」




「マーロンお姫さま、今日の収穫はいかがでしたか?」
「えへへ・・・すごいでしょう!色もとってもきれいなのよ、ピンクとかね、うすーい水色とか!赤と黄色もあるのよ!亀さんにも、亀おじいちゃんにもあげるね!」
「それはありがとうございます、亀仙人様も喜びますよ。」
亀はいつも通りのおっとりした口調で、マーロンをエスコートするかのように背に乗せると、カメハウスに戻るためにのんびり海を漕いでいった。このあたりの海はおだやかで波が小さいので、彼らだけでも危険はない。貝殻をいっぱい詰めた袋とシャベルだけ手にしたマーロンと亀は、静かな海を漕いでゆっくり散歩していた。
「きょうもいいおてんきね!」
「そうですねえ・・・風もとっても気持ちいいです。」
「あたしもおとうさんたちみたいにおそらとべたら、亀さんに重たい思いさせなくっていいのになあ。」
「あらら、あなたはとーってもかるいですよ。お姫さま。」
「うふふっ!」
潮風はいつものように優しく、気持ちがよい。マーロンは自分を乗せる亀を助けてくれるように、後ろから吹いてくる風を顔で受け止めようと振り返った。
「・・・・・・?なんだろう、あれ・・・?」
彼女は、青い空にぽつんとシミのような物ができているのがわかった。

「あれれ・・・?だれかとんでくる・・・?」
その姿はかなり遠くにあるため顔の判別はつかなかったが、白いマントでピッコロだということがマーロンにも亀にもわかった。
彼女は両手いっぱいに手を広げて、飛んでくる者の名前を呼んだ。
「ピッコロさあーん!」

「む?マーロンか・・・あれは?」
ピッコロの方も、両腕を高く上げて名前を呼んでいる彼女の姿に気が付いた。亀の背に乗っているが、彼から見るとどうしても危なっかしくみえる。
「まーろん?だれだ?」
「クリリンのこどもだ。・・・しかし、こんな所で何をしていたのだ?」
ピッコロはちょっとスピードを緩めながら、彼女の方へ近づいていった。

「ピッコロさん、こんにちは!」
「ああ・・・。お前はこんなところで何してる?」
「これひろってきてたの。あ、おとうさんとおかあさんにはないしょよ!」
クリリンそっくりのひとなつこい笑顔で自分を見るマーロンの背は、最後に会った時よりも少しだけ伸びていた。顔も体も『まんまる』という言葉がぴったり合うほどふわふわだったが、今は子供特有のすらりとした線になっている。
「ねえピッコロさん。そのひと、だあれ?」
「・・・・・・む。」

ピッコロの腕に抱えられてるネイルは「わたしのことか?」と、自分で自分の顔を指さしてくすくす笑った。
そして、彼の腕からはなれて宙に浮くとにっこり笑って彼女の手をとった。
「こんにちは、わたしはネイル。おまえのなまえは?」
「わたしマーロン!ねえ?あなたピッコロさんのおともだちなの?」
「うん・・・。そんなものだな。」
ネイルはピッコロに目配せするように彼を見つめた。マーロンの方も、ネイルとピッコロの顔をかわるがわるじーっと見つめて、ぼそりとつぶやいた。
「ふうん・・・二人ともそっくりなおカオね。」

まずい。
彼女は見かけによらずなかなか鋭い。悟天やトランクスのように人の揚げ足取りは絶対にしないが、そのかわりに人をよく観察している。これ以上つっこまれると、まためんどうな事になりそうだ。
ナメック星人の顔は、地球人と違って皆同じような顔をしている、ということをすっかり忘れているピッコロはしなくても良い心配をした後、彼女の父親の事へ話題を変えた。
ややこしい説明はできるだけ一回で終わらせたい。
「そうだ、お前の父親はいるか?」
「うん!おかあさんといっしょにねてる。ねえ、いっしょにいこうよ!」


カメハウスにはマーロンも亀もいない。
いるのはぐっすり眠っているクリリンと18号とヒマそうな亀仙人だけだ。
そして、昼食の用意を亀の代わりにしていた亀仙人はやっとこの状況に気が付いた。
「む。こ、これはもしかして、かなりオイシイ状況なのでは・・・?」
いつもならちょっと体を触っただけでカベを破らんばかりに(実際破れた事は多々あるが)自分の顔をひっぱたく18号は、夢の中だ。

18号ちゃんは怒らないし、クリリンや亀はうるさい事いわないし、マーロンちゃんもいない、誰も傷つかないまさに素敵な状況ではないか?
「よ、よし!」
彼は抜き足差し足で18号がぐっすり眠っている木陰の方にそおっと近づいた。上半身を包んだキャミソールは柔らかい曲線を形作り、ホットパンツからは見事な足がすらりと伸びている。

「クリリンのヤツめズルイのう。こーんなピチピチギャルを独り占めしてるんじゃからのう。」
かなり近づいているのだが、二人とも起きる気配はない。むにゃむにゃと気持ちよさそうな寝息だけが聞こえてくる。
「よ〜し!ちーっとばかりなら神様も許してくれるじゃろう!?」
「亀おじいちゃん、なにしてるの?」

後ろから天使のように可愛らしい声が聞こえてきた。彼が振り返ると貝殻をたくさん持っているマーロンに、顔を真っ赤にしている亀、その後ろに控えているピッコロとネイルの姿があった。
「ま、マーロンちゃん、もももう帰ってきとったんか?早かったのう。」
「うん!あのね、ピッコロさんに途中であったのよ。おとうさんにごようじなんだって!」
「そ、そうじゃったか?」

亀仙人は、亀を見ないようにしてピッコロの顔を見た。彼はなんだかよくわからない顔で自分をみつめている。
「き、きさまはデンデに何の許しを請うのだ・・・?」
「な、なんでもないわい!!関係ないじゃろ!それよりどうしたんじゃ、クリリンに用事と、は・・・?」
彼はそこでようやくピッコロのマントの影にいるネイルに気が付いた。

亀仙人は、「はて?」とじっとネイルの顔をみてからピッコロの顔を見た。
「な、なんだ・・・?」
「ななななんじゃお前さん、た、タマゴ産んだのかい?」
「やかましい・・・!それより早くクリリンを起こせ。」
「あたし起こすね!」
マーロンは駆け出すと遠慮なくクリリンの体の上に飛び乗って、「おーきーてーっ!!」と大声を上げた。

「おとうさん、おーきてっ!ピッコロさんよ!ピッコロさんなの!!」
「うにゃあ〜・・・?ピッコロお?あ、ホントだよ・・・ピッコロだよ・・・。」
眠そうに目をこすってレジャーシートから顔を上げたのは、クリリンだ。18号も娘の声には気が付いているはずなのだが、気が付かないふりをしているらしい。まぶたをもう一度固く閉じて、クリリンの腕にしがみついた。

「おっとっと・・・。お前、どうしたんだよ。急にここにくるなんてさ?」
クリリンは南国の風景にあまりにも似合わないピッコロを上から下に眺めると、腕にしがみついている18号に気をつけながら体を起こした。寝ぐせがついてぼさぼさになった頭をぼりぼりとかくと、また大きなあくびをする。
「オレではない。こいつがお前に用がある。・・・気配に、覚えはないか?」

ピッコロが指さした下には、ちっちゃいナメック星人がいた。大きな目でニッコリ笑っている姿は、いつかのナメック星で見た子供の頃のデンデにそっくりだ。
ちびナメック星人はぱたぱたとクリリンのそばに寄っていき、くすくす笑った。
「なつかしい、わたしをおぼえているか・・・?」
「へ?・・・お、オレナメック星人に知り合いは二人くらいしか覚えがな・・・え?」
小さな体から発する『気』に肌が思い出したらしい。ちょっとピリピリしていて厳しい、けどピッコロよりも優しい気配。

自分の体が吹っ飛ばされた・・・という記憶がナメック星の思い出の大部分だ。しかし、彼を一目見たときに感じた、自分の武道家としての感覚が掴んだ彼の凄味はくっきりと蘇ってきた。悟空が強いヤツを見た時に感じる「すっげえドキドキしたんだ!」というのに、少し似ていたのかもしれない。
「ね、え、あ・・・?ねねねねネイル・・・さん?」
「ひさしぶりだ。こうしてあえるなんておもわなかった。」
クリリンは「うひゃあ!!」と叫び声をあげて彼の手をとった。
「ホントかよ、信じらんねえぜ!あれ、だってなんかよくわかんないけど、ピッコロと同化しちゃったって・・・?あれ、あの、どうしてそんなに縮んでんの?」




ピッコロが早口で説明をし終わった後、クリリンはあまりよくわかってないのを隠すように、『だっはっは』と笑った。
「ま、まあとにかく元通り二人に戻ったんだし良かったじゃん!じゃあ、何?ネイルさんも戦闘型だったよね?やっぱりさ、3年くらいたったらピッコロみたいに大人になるのかな?」
「そうだろうな、まえのわたしも3ねんたらずでせいじんしたし・・・。」
「なんだと!!?」

ピッコロはクリリンとネイルの会話に急に割り込んだ。二人とも、彼の大声に固まってしまい、目をまんまるにさせている。ピッコロはといえば、そんな二人の様子にかまわずぎりぎりと歯を噛んでネイルをギロリとみつめた。
「な、なぜおまえがそこでおおごえをだす・・・?」
「でっかくなるだなんて聞いていないぞ。」
「いつまでもこどものままなわけないだろうが。3ねんたったらおまえとおなじくらいにはなってるさ。」

クリリンはナメック星で出会った時の彼の顔を思い出した。まるでピッコロとふたごではないかと思うくらい、彼と瓜二つで整った顔。着ている服を取り替えたら『気』を探らないかぎりだれにもわからないだろう。
「いや〜・・・名札でもつけとかないと、ぜんぜんわかんねえよな、二人ともそっくりだもん。あっはっは!」
「やかましい!!!黙ってろクリリン!!!・・・お、お前あいさつまわりが終わったらナメック星に帰るんじゃなかったのか!?」
「おまえ、いつだれがそんなこといった?」

ネイルは彼から顔をプイとそらして、18号の周りに貝殻を並べるマーロンをみつめると、彼女の許可を得て貝殻をひとつ取った。
「じゃあ、なんだ?お前はずっとここにいるつもりか?」
「またわだいがふりだしにもどったな・・・。だめか?」
「だめだ!!」
「なぜだ?」
「それは・・・。」

「じゃあ、こうしよう。」
ネイルは貝殻を太陽に透かしながら彼にまたひとつ提案をした。
「わたしがここにいてはいけないりゆうを、おまえがかんがえつくまでここにわたしはいることにしよう。それでいいだろう?りゆうもなくおいだされてはたまらないからな。」
クリリンは『ハハ・・・。』とネイルを見て笑った。とてもじゃないがピッコロの顔を見る勇気はない。

ネイルの提案は、たぶん彼が死なない限り永遠に有効だろう。
理由なんかないのだ。とにかく『彼が気に入らない。』のだろう。ピッコロが『お前が気にいらんからだ。』と素直に言える性格ではないと言うことが、ネイルはわかっている。

「そうだよなあ・・・力が強いだけで『最長老様の側近』なんて出来るわけねえよなあ。」
クリリンは頭もキレる元・唯一の戦闘型のナメック星人と、理由を色々考えようとしているのかその場に固まってしまっているピッコロを交互に見比べた。
固まっているピッコロを後目に、ネイルの方は初めてみる色とりどりの貝殻を手に取りながら、マーロンから講義を受けている最中だった。
「ねえ、これきれいでしょ?これも!夕焼けのお空にそっくりだわ!」
「ああ、とてもキレイだ・・・。これも、きれいだな。これは・・・?」
「あ、これ形がきれいでしょ?ホネみたいだから、ホネガイっていうんだって!図鑑にのってたよ!」
「ふうん・・・。」

「お〜いクリリン!昼ご飯ができたぞい。18号ちゃんを起こしとけ。」
「はーい、武天老師さま!」 

太陽は真上。
一日はまだ半分しかたっていない。

    (つづく)
2001/10/22

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