DB的眠り姫もどき童話風味U
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それから数日後。
「よし!出来たぞ!」
 王は自分の部屋で嬉しそうに言いました。王の自室は、ほぼ研究室の様相を呈しています。その部屋で、王は手ずからある物を作っておりました。その物とは、
「あらあ〜、出来たのね、薔薇だけを枯れさせる薬〜」
「ああ。これがあれば姫もきっと助かるよ。私が撒いてこよう」
 王はそう言って、兵士達に任せればよい物を、自分一人で国中を回り、薔薇という薔薇に薬を撒いて回りました。王がその薬を撒くと、たちまち薔薇だけが枯れてゆきます(周りの雑草等、他の植物は全く影響を受けません。凄い技術ですが、平民達は「どうせなら一緒に雑草も枯らしてくれれば良かったのに・・・・・・」と思いました)。
「最後の一本・・・・・・」
 真紅の薔薇がしゅうう、と音を立てて縮むように変色してゆきます。
「よし・・・・・・これでもう心配は要らないだろう」
 ふう、と充実した表情で王は言うと、お城に帰って行きました。しかし、彼はたった一ヶ所、一番肝心な場所を忘れていたのです。



 暫くの時が流れて・・・・・・。



「こら!そこ、怠けるな!!」
「あ・・・・・・形だけは兄貴」
「その呼び方は止めろ!!」
「あ、形だけは伯父さん。どうも。でも怠けてるのはお父さんだけですよ」
「だから、その呼び方は止めろと言っとろーに!!」
 門兵をしている兵士その一とその二に、兵士長は声を荒げました。長い黒髪が逆立ちそうな勢いで怒鳴ります。
「その『形だけ』ってのは何だ!?」
「ほら、一応原作では仲違いしたしさー」
「僕は攫われましたよ」
 なー、なー、と同意し合う兵士その一とその二に、兵士長は「もういい!仕事はちゃんとしろよ!」と言うと、さっさと行ってしまいました。兵士その一とその二は顔を見合わせます。二人はある事を知っておりました。
 兵士長は花が好きでした。そして、長年城に仕えていた為、彼は城の敷地の中に、自分だけの温室を与えられておりました。
「きっと、花に水やりに行ったんだよな」
「ですよね」
「・・・・・・あの顔で花愛でてるって、想像するとすっげー怖くねえか?」
「・・・・・・止めましょ、その話は」
「でもさ。そう思わねえ?」
「しつこいですよ!!お父さん!!想像しちゃうじゃないですか!?」
 鳥肌を立てて、兵士その二は絶叫しました。



 その会話が二日前。
 ・・・・・・何という運命の皮肉でしょう。



「ちょっと!!兵士長!!!私の部屋に蛙が入り込んでたわよ!!?」
「は!?それは多分姫が今朝散々池の隣の庭で日光浴をなさっていたからでは!?」
「問答無用!!降格よっ!!!」
「お、俺は無実だあああっ!!?」
 かくして、兵士長は一兵士と相成ったのです。


 
 無論、温室は没収です。
「そ、そんなあ・・・・・・」
 元兵士長は男泣きに泣きました。彼が大切にしていた温室が着々と取り壊されてゆきます。
「ほらほら!そこ!!崩れそうでしょ!?そこから解体よ!!」
 何故か姫が現場の指揮を執っています。
「気の毒だったなー、形だけは兄貴」
「あの姫に目を付けられたら飼い犬に手をかまれたと思って諦めるしかないですね、形だけは伯父さん」
 解体作業に駆り出されていた兵士その一とその二が声を掛けてきます。
「ええい、その呼び方は止めろと言っとるだろうが!!」
 元兵士長は兵士その一とその二に当たり散らしました。
「大体口ではそう言いながら平気な顔してさっさと解体してるんじゃねえ!!」
「えー、だって原作では」
「ねえ」
 なー、なー、と、やはり同意し合う兵士その一とその二。
「こんの野郎共は・・・・・・」
 元兵士長はぎりぎりと歯ぎしりしました。その時。
「あら?これ、何かしら?」
 姫の呟きが風に乗って流れてきました。兵士その一とその二、そして元兵士長はそれを聞きつけました。
「姫、どうかしましたか?」
 姫の元へ駆け寄る三名。
「へえ!なかなか綺麗じゃない!」
 そこにあったのは、青みがかった美しい紫を纏った花でした。重なっている無数の花弁が幻想的な雰囲気を醸し出しています。
「ねえ元兵士長、これ私に頂戴!」
「・・・・・・その『元』っていう頭文字が付く度に俺、へこむんですが・・・・・・それはともかく、それだけは俺が大事にしていた花なんですよ!?」
 姫は聞く耳持ちません。
「いいじゃない、譲ってくれないと更に降格するわよ?」
「ぐうっ!!?」
 まるで本当にダメージを受けたような表情で元兵士長がよろめきます。後ろの方でぽん、と元兵士長の肩に手を置き沈痛な面持ちで頭を振る兵士その一と滂沱の涙を流す元兵士長に気付かず(というか気付こうともせず)、姫はその小さな花に手を伸ばしました。
 あろう事か、がっ!とばかりに思いっきり茎を両手で掴みます。
 ぶすぶすぶすぶすっ!!
「!?」
 姫がその手を開いてみると、小さな棘が突き刺さりまくっています。
「ちょ、ちょっと・・・・・・それって!?」
 兵士その二が驚いて目を丸くしました。まさか!!?という全員の視線を受けていた姫の身体が、ゆっくりとくずおれてゆきます。
「わ、わわっ!」
 咄嗟に差し出された兵士その一の腕に、姫は倒れ込みました。そのまま、全く動かなくなります。
「・・・・・・・・・・・・」
「こ・・・・・・これって・・・・・・」
「あれ、だよな・・・・・・」
 3人とも呆然とし、次いで真っ青になります。
「で、でも!これって薔薇じゃないんじゃないですか!?どう見ても薔薇って感じじゃ・・・・・・」
 兵士その二が慌てて花を覗き込みます。確かに、薔薇には見えない形をしていますし、棘も注意して見ないと有るのがわからないくらいです。しかし、次の元兵士長の言葉に兵士その一とその二は絶望しました。
「これはな、俺が作った改良品種だ!!オリジナルなんだぞ!!?」
「な・・・・・・何でこんなややこしい物を作るんですか、形だけは伯父さん!!?」
 愕然として兵士その二が叫びます。しかし尋くまでもありません。この国では薔薇は作れないのですから。
「だってだって、薔薇作りたかったんだもん」
「いきなり子供みたいな言い訳しないでください!!!」
 なおも言い合う2人に、兵士その一が当然の質問をします。
「それよりどうするよ?この姫・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・証拠隠滅しろ!!埋めるんだあああっ!!!」 
「お、落ち着け形だけは兄貴っ!!?」
「降格されたの相当根に持ってますね・・・・・・」
「あ、あの・・・・・・」
 突然声を掛けられて、3人はびくっとして振り返りました。
 そこには、緑色の肌をした小さな少年が立っておりました。僧侶のような服装に、片手に彼にとっては大きすぎる杖を持ち、おずおずと話しかけてきます。
「僭越ですが・・・・・・僕に、任せて下さいませんでしょうか?」
『・・・・・・は?』
 3人の声がハモりました。



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