DB的眠り姫もどき童話風味U
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 王子、お付きの者、兵士その二の三名は、国を覆う茨の蔦をばっさばっさと切り倒し、あるいは焼き払い、ずかずかと城へ入ってゆきました。
「うわあ、これ着るのも久しぶりだなあ!」
 長い間タンスの奥にしまい込んでいた兵士の制服を引っ張り出して着込んできた兵士その二がはしゃぎます。
「たたんで仕舞って置いたからしわ、気になるなあ。あ、虫食い!最悪だよー。今度繕わなくちゃ・・・・・・」
「そういう事は後にしろ。まずはこの国を目覚めさせなくては」
「は、はい!そうですね」
 お付きの者と兵士その二が会話を交わしているその前を行きながら、王子は機嫌が悪いのか一言も喋りません。
「・・・・・・ど、どうしたんでしょうか、王子・・・・・・やっぱり無理矢理連れてきたのはまずかったでしょうか?」
「まあ・・・・・・多分そうだろうな」
 小声で言う兵士その二に、お付きの者が答えます。
「どうするんですか?姫を見つけても、王子は口付けをしてくれないじゃないですか!そしたらこの国の眠りも解けませんよ!」
「ふ・・・・・・心配するな」
 お付きの者はにやり、と笑みを浮かべました。その悪役顔と相まって、いかにも「自分は何か企んでます」的笑みになっています。とてつもなく嫌な予感がして、兵士その二は思わず頬を引きつらせました。お付きの者は一言言いました。
「策はある」
「・・・・・・」
(自分の仕える主を陥れるための『策』って・・・・・・)
兵士その二の顔色が青ざめましたが、お付きの者はそれには全く気付かず、王子の後について歩を進めてゆきました。
「おい!この階段でいいんだな!?」
「あ!は、はい、そうです!」
 王子の問いに慌てて答え、兵士その二はだらだらと脂汗をかきながら視線を彷徨わせました。
(うう・・・・・・怖い。色んな意味で)
 が、ここまで来てしまったからには引き返すことは出来ません。兵士その二は半ば強制的に覚悟を決めさせられることになったのです。



「ここか・・・・・・」
 目の前の扉には、ポップ調で『姫の部屋♪』と書かれたファンシーな札が掛かっています。
「行くぞっ!!」
 まるでそこにあるのがラス・ボスの部屋の扉だとでもいうように、緊迫した声で王子が号令を掛けます。彼はそのまま、ばん!と扉を開けました。
「む・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 部屋は見渡す限り、花弁が敷き詰められています。その中心には棺が横たわっておりました。姫の部屋だけあって随分広いのですが、その部屋の床全てに花が撒かれて・・・・・・と言うより流し込まれたように部屋全体が埋まっている感じで、とても前には進めません。腰まで花の海に埋まりながら、王子は額に青筋を立てて叫びます。
「・・・・・・どいつだ!?こんな意味の無い事をやった奴は!!?」
「いや・・・・・・姫と言えば、花に埋もれているのがお約束かと」
 お付きの者の言葉に、王子は更に額に青筋を増やしました。
「そんな約束を作った奴はどいつだ!?俺が今すぐ殺る!!!」
 兵士その二が何じゃそりゃ!?という顔をします。
「別にこんなの、ちょっと飛んで棺の所まで行けばいいだけの事じゃないですか!?そんな目くじら立てなくっても!」
「視覚的にムカつくんだ!!!!!」
 確かに、いい年の男性から見ればこの少女漫画的な光景は耐え難いでしょう。
「お気持ちは解らないでも無いですが・・・・・・取り敢えず、ここは一つ穏便に」
 お付きの者がなだめて、何とか王子はここを火の海にする事をやめたようでした。その代わり、思いっきり花を蹴散らしながら突き進んでゆきます。
「だから、飛んでけばいいのに・・・・・・」
「人というものは、あまりにムカついた事があった時には何かに当たり散らしたくなるものだ」
「・・・・・・まあ、それは否定しませんけど・・・・・・」
 お付きの者と兵士その二は、王子が花を蹴散らした後を通ったとしてもまだまだ歩きにくいことに変わりは無かったので、ふわりと宙に浮かぶと王子の後を追いました。王子は既に棺まで辿り着いています。
 例によって、王子は棺の蓋をがん!と蹴り開けます。果たして、そこには姫が眠っておりました。突然、王子が沈黙したのを見て、兵士その二が慌ててフォローします。
「ねっ!?美人でしょ!?だからキスしてあげてくださいっ!」
 王子が沈黙を破って反論します。
「・・・・・・だから、俺はやらんと言ってるだろうが!!!他に何処の国の王子でもいいから連れて来いっ!!そいつにやらせろ!!」
「だから、何で嫌なんですか!?ちょっと年増だからですか!?そんなの、美人ならあんまり関係無いじゃないですか!!後生ですってば!!!」
「美女だとかそういう問題では無いっ!!!ただ何となく・・・・・・」
「何となく?」
 ・・・・・・嫌な予感がする。
とは言えず、王子はとにかく、と言葉を繋ぎました。
「何でもいいだろうが!!とにかく、俺はやらんぞ!!!!!」
「いつまでも我が儘をおっしゃらないでください、王子」
「どわっ!!?」
 いつの間にか後ろに回り込んでいたお付きの者が、突然王子の後頭部を掴むと、ぐいぐいと棺の中の姫に王子の顔を押し付けようとします。いきなりのお付きの者の暴挙に、兵士その二は青ざめて思わず数歩後ずさりました。
「な・・・・・・な・に・し・や・が・る、てめえ・・・・・・!!!」
「ち・・・・・・しぶといっ!!」
 見ると、王子は棺の縁を両手で掴んで必死の抵抗を続けています。ぎぎぎぎぎ、と拮抗する力と力。世にも恐ろしい(?)光景に兵士その二がすっかり怯えていると、お付きの者が叫びました。
「おい!兵士その二っ!お前も見ていないで手伝えっ!!」
「え!?ええっ!!?」
 兵士その二はしばらくの間おろおろしていましたが、やがて(僕がやらなければこの国はずっとこのままじゃないか!!)と、その愛国心に火を付けました。
 彼は王子の後ろに立ち、決意の瞳でその後頭部を睨みつけます。
「えいっ!!!!!」
 掛け声と共に、兵士その二は突然、超サイヤ人と化しました。がっ!と王子の頭をお付きの者と同じように掴んで、一気に勝負(?)をかけます。
「な・・・・・・何いっ・・・・・・!!?」
「よし!いいぞっ!!」
 最後の抵抗も空しく、王子の顔はゆっくりと姫の顔に近付いてゆきました。そして・・・・・・。
 良し!とお付きの者が声を上げます。
「手応え有り!!」
「って何、一見(一聴?)格好良さげな台詞を吐いてるんですか!?責任は貴方にありますからね僕には関係無いですよっ!!?」
「ふ・・・・・・ここまで来たら一蓮托生だ」
「そんなの嫌ですよっ!!大体、キスはしたみたいなんだからもういいんじゃないですか!?」
 まだ王子の頭を押さえてはいるもののすっかり引け腰になっている兵士その二に、お付きの者はきっぱりと頭を振りました。
「いや!まだ姫に起きる様子はない!姫が目覚めるまで続けるんだ!」
「ちょっとおっ!?姫が目覚めて王子が解放されたら、絶対僕たち殺されますよ!!?」
「永遠に国が目覚めなくてもいいのか?わかったら協力しろ!」
(ひいいいいっ!?確信犯!!?)
 その時、急に先程までとは較べ物にならないくらいの抵抗が二人の腕を押し上げようとします。見るといつの間にか、王子の髪が黄金に輝いています。
「ちいっ!!超サイヤ人かっ!!手強いぞっ!!」
「そういう言葉遣いで中途半端に場をシリアスっぽくするの、止めてくださいよ!!凄く気になる・・・・・・ってそんな事言ってる場合じゃないです、押されてますよ!」
「何が何でも押さえ込め!!」
 命令口調に兵士その二は逆らえず、結局お付きの者と共に王子の頭を押さえ込み続けます。
 一分。
 二分。三分。五分。十分。十五分。三十分・・・・・・。
 ひたすら、ひたすら静かな戦いが続きます。やがて。
 唐突に、王子の髪が漆黒を取り戻します。同時に無くなる抵抗。どうやら酸欠で気絶したようです。
「ふう・・・・・・タイムは四十三分か。自己新だな」
「っていつもこんな事やってるんですかあなた方はっ!!?」
「まあ、冗談は置いておいて」
「しゃれになってない冗談はやめてください!」
 かりかりと怒っている兵士その二を無視して、お付きの者は王子を棺の上からどかします。ぐったりしている王子に、兵士その二は(死んでないよね・・・・・・)と不安になりました。そんな王子を捨て置いて、お付きの者は棺に目をやります。
 すると。
 ふっ、と姫の目が開きました。
『おおっ!』
 二人が歓声を上げると、姫は意識がはっきりとしてきたのか、上体を起こして周りを見回します。
「・・・・・・何?何があったの?あ、そこに居るのは兵士その二」
「大丈夫ですか、姫?姫は悪い魔法使いにずっと眠らされていたんですよ!」
「え、どういう事?」
「かくかくしかじか、でして・・・・・・」
 兵士その二の説明的な台詞を聞いて、姫はだんだんと思い出してきたようでした。その眉がどんどんつり上がってゆきます。
「ひ・・・・・・姫?」
「ぜっっっっったい許さないわ、あの妖怪!!!」
「よ、妖怪って・・・・・・」
 勿論、悪い魔法使いのことでしょう。
「今すぐ殺してやるわっ!!馬車用意して!馬車!!軍隊もよ!!」
「ひ、姫御自ら出向くんですか!?っていうか、まだみんなが目覚めるまでもう少しかかると思うんですけど・・・・・・」
「もう!」
 棺から出て、姫は毒づきます。そしてふと、思い付いた様子で言いました。
「・・・・・・ねえ、私を目覚めさせたのって誰なの?異国の王子様なんでしょ?」
「ああ、それは・・・・・・」
 兵士その二が説明しようとした丁度その時、姫と、王子のお付きの者の目が、タイミング良くばっちりと合いました。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・嫌ああああっ!!いくら異国のだからって、こんなのは嫌ああああっ!!」
「誰が『こんなの』だっ!!?」
(・・・・・・そりゃあ、肌が緑で髪の毛眉も無くって、あまつさえ触覚なんて生えてたりしたらなあ)
 姫の言葉に、妙に納得してしまった兵士その二でありました。取り敢えず誤解を解こう、と、ずるずると王子を引きずって仰向けにさせてから、兵士その二は姫に言いました。
「この人ですよ、姫。貴方を目覚めさせた王子は」
「へ?そうなの?」
 姫は王子の顔を見つめました。視線が王子の目、鼻、額(・・・・・・)、髪型、そして身体全体・・・・・・と移っていくのがわかります。
 やがて、姫はぱん!と両手を打ち合わせました。その瞳は、今までに無い程にきらきらと輝いていました。
「何だ!!おでこ広いのと変な髪型なのと目つき悪いのと背低いのと手足短いのを除けば、結構カッコイイじゃない!」
「な、何げに滅茶苦茶非道い事言いますね・・・・・・」
「だが、本当の事だしな・・・・・・」
 複雑な表情で男二人が呻きます。
「ね!起きてよ!起きてってば!」
 姫は王子の襟首を掴んで、首が折れんばかりの勢いで引き起こしました。床にがんと頭を打ち付けて、王子は半分目を覚ましたようです。が、まだ意識は朦朧としているようで、動く事は出来ないようでした。姫ははっとして言いました。
「そっか!今度は私がキスしてあげれば!」
「せんでいい!!!!」
 途端、息を吹き返したように王子が叫びます。姫はぱっと瞳を輝かせました。
「ああっ、目覚められたのね異国の王子様!」
「そんな事はどうでもいい、離れろ、離れんかっ!!」
 起きあがり思いっきり歯を剥いて威嚇(?)する王子に、姫は衝撃を受けてふらりとよろめきました。涙を潤ませ、ふるふるとかぶりを振ります。
「そんなっ・・・・・・!私はただ貴方を目覚めさせてあげようと・・・・・・非道いっ!」
「貴様がそんなキャラクターで無い事は兵士その二から聞いているっ!芝居はやめろっ!」
 王子の言葉に、姫の涙を滲ませた瞳が突然半眼に変わります。その右手にはしっかりと目薬が握られておりました。彼女は一つ舌打ちをして、言いました。
「ち・・・・・・兵士その二め、余計な事を・・・・・・」
 ゆ、油断も隙もあったもんじゃねえ・・・・・・!と息を荒らげる王子に、姫はにこおっ、と微笑みました。王子の隣に歩を進めると、その腕にさっと自分の腕を絡めます。
「な、何しやがる!!」
「いいじゃない、どうせ私達くっつくんだから。良い魔法使いが言ったんだもん、絶対よ」
「勝手に決めるな!!離れろと言ってるだろうが!?」
 王子の頬に、少しですが赤みが差しているのを見て、お付きの者&兵士その二はこそこそと言いました。
「何だかんだ言って嬉しそうですよね・・・・・・」
「あの方はこの年までまるきり女っ気が無かったからな・・・・・・」
「聞こえたぞ!?そこ!!後で覚悟しておけよ!!?」
 王子は叫びましたが、その言葉に全く威厳はありませんでした。姫が王子に尋ねます。
「ねえ、王子。これからどうするの?」
「国に帰る!」
「ふ〜ん」
 姫はしばし考えると、いともあっさりと言いました。
「よし、決めた!私もついてくわ」
「な、何いっ!!?」
「おお、宜しいではありませんか。このまま我が国にお連れすれば」
「ええっ!?本当にご結婚なさるんですかっ!!?」
 『物好きだなあ・・・・・・まあ似た者同士って気もするし気が合ったのかなあ、それにしても物好きだよなあ・・・・・・(長い)』と言わんばかりの目で王子を見つめる兵士その二。
「誰がこんな下品な女と結婚なんぞするかっ!!」
 兵士その二の視線を受けて慌てて言い訳をする王子に、お付きの者がぼそっと呟きます。
「嫌よ嫌よも好きの内・・・・・・」
「聞き咎めたぞ、こら!!?」
「もう!何だっていいじゃない!」
 際限の無いボケツッコミに終止符を打ったのは姫でした。
「とにかく、私はこの人についてくの!誰がどう言ったって構わないわ!」
「おお、健気ではありませんか、王子。是非お連れいたしましょう」
「相手の迷惑を考えるとか、そういった殊勝な事はこれっぽっちも考えようとせんのか、貴様は!!?」
「まあ、この姫様ですしね・・・・・・」
 三人三様の反応でしたが、姫はそのダイヤモンドも研磨出来そうな固い意志を貫き、王子について行くことを決めたのでした。



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