DB的眠り姫もどき童話風味U
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 街道に、かっぽかっぽと蹄鉄の音が響きます。
 お付きの者は王子と姫の乗った馬を、そして兵士その二は荷を乗せた馬をそれぞれ引いて歩いておりました。
「結局王子、姫に負けて一緒に乗ってらっしゃるんですね・・・・・・」
「ふ・・・・・・新婚さんとは微笑ましいものだ」
「まだ結婚してねえっ!!」
「でももうすぐ結婚よ」
「うあああああっ!!?何でみんなこの矛盾に気付かんのだっ!!!!?」
 錯乱する王子。
「・・・・・・気付いてはいるんだけど無視しているのでは?」
 「自分はもう何も言うまい」的表情の兵士その二(でも突っ込んでいます)。
「案ずることは御座いません、王子。どうせ国に着けばすぐに怒濤のハッピーウエディングです」
「だから案じてるんだっ!!!」
 逃げる、俺は逃げる!!!とばかりに逃走を図る王子を、姫がマントを掴んでしっかりと確保しています。
「全くもう、我が儘ねえ・・・・・・苦労しそうだわ」
「我が儘はどっちだっ!!?」
「そう思われるなら、どうして結婚なさるんですか?」
 兵士その二の問いに姫は即答しました。
「御する馬は暴れ馬であるほど燃えるのよ」
 王子、馬扱い。
 その言葉には、流石にかなりショックであったらしく、王子は真っ白になっておりました。既に突っ込む気力さえ残っていないようです。
 王子は意外に傷付き易い性格でした。
「・・・・・・姫はきっと、無人島でもご立派に生き延びられますね・・・・・・」
「まあ、誉め言葉と受け取っておくわ」
 姫は目の前の壁が困難であるほど実力を発揮できるタイプでありました。
「王子、姫。そろそろ隣国との国境です」
 お付きの者の言葉に顔を上げると、確かに隣国との国境に差し掛かっています。
「この国の次の次の次の国が我が王の領土で御座います」
 説明するお付きの者。
「そ。じゃ、がんがん行っちゃって」
「軽いですね、姫・・・・・・」
「こんな事わざわざ重く言う必要が何処にあるの?」
「・・・・・・そりゃ仰る通りなんですけど」
 いまいち納得のいかない顔をする兵士その二を無視して、姫はGO,GO!とノリノリです。
「・・・・・・む?」
 突然、お付きの者が立ち止まります。
「どうしたんですか?」
「・・・・・・誰か居るな・・・・・・」
「え?」
 兵士その二も顔を上げて街道の向こうに目を凝らします。すると確かに人影が見えます。特に街道を移動している様子はありません。兵士その二は眉をひそめました。
「おかしいな?別にここには関所なんて無いのに・・・・・・」
「いや、検問という感じはしない。むしろ・・・・・・」
 お付きの者は付け加えました。
「宮本武蔵との決闘に望む佐々木小次郎、と言ったところか」
「何なんですかそれは・・・・・・」
 そうは言ったものの、周囲は草原。そしてその中の街道は一本。
「まあ・・・・・・確かに、決闘にはこれ以上無いシチュエーションかも知れませんが・・・・・・僕たちの誰も、決闘状を出した覚えも叩き付けられた覚えもないですよ?」
「実は・・・・・・」
「あるんですかっ!!?」
「いや、無いが」
 兵士その二は脱力しました。
「紛らわしい言い方をしないでくださいっ!!」
「ちょっとしたお茶目な冗談だったのだが」
 その言葉がこれほど似合わない人間が他にいるでしょうか?否、居ない(反語)。とにかく、四人はぽくぽくと国境へ近付いてゆきます。近付くに連れ、その人影はだんだん形を取ってゆきました。
 そして姫が、突然声を上げました。
「あっ!あいつはっ!!」
「どうなさいました、姫?」
「・・・・・・」
 姫は真剣な顔で、その人物を見つめておりました。他三名の視線も自然にそちらに向きます。(珍しく)シリアスな空気の中、遂に四人とその人物は対峙しました。
 先に沈黙を破ったのは、待っていたその人物でした。
「ふっ・・・・・・」
 それは美しい顔をした青年でした。緑の長い髪を三つ編みにしています。お付きの者ほどではありませんが顔色が悪く、そしてキザ度(?)はお付きの者を遙かに越えていそうな雰囲気でした。煌びやかな服。シンプルなデザインの服を着ている王子と比べると、全く正反対のアプローチです。しかしその『煌びやかな服』は一筋縄ではいかない煌びやかさでありました。なんと、ブラウスの衿、袖口、前立て等、びっしりとフリルで埋め尽くされているのです。もっとしっかり見てみると、ブラウスだけでなく他のアイテムにも、ブラウスほどではないにしろ様々に凝った意匠が施されておりました。
「・・・・・・変・・・・・・」
 (良い意味でも悪い意味でも)素直な兵士その二が思わず呟いてしまったとしても、それは致し方ないと言えましょう。幸い、相手にその言葉は聞こえていなかったようでした。さっ、とその髪を掻き上げキザに笑って、その男は言いました。
「姫・・・・・・お久しぶりですね」
『あんなのと知り合いなのかっ!!?』という、王子とお付きの者の視線を一身に受けて、姫は思わず叫びました。
「不可抗力よっ!!」
「で、実の所どういう関係なんだ?」
 お付きの者の問いに、兵士その二が答えます。
「僕も数回見ただけなんですけど・・・・・・先日、姫との婚約を解消された、隣国の王子ですよ」
「なるほど、元彼か」
「身も蓋もない言い方ですね・・・・・・」
「俺はまだるっこしいのは好かん」
「そんな性格の人は王子だけで充分です」
 その王子は、「元彼」という言葉にぴくりと反応しました。目の前の『姫の元彼』を凝視します。そうこうしている間に、姫が隣国の王子に向かって言います。
「・・・・・・今更何の用よっ!!」
「ふ・・・・・・何、大した用ではないのですが・・・・・・」
 隣国の王子はにやりと笑い、言いました。
「私との婚約破棄を、取り消していただこうかと思いましてね・・・・・・」



『なっ!!?』
 全員が驚きの声を上げます。
「婚約し直すって事!?」
「その通りです。その為に、ここで待っていたんですからね・・・・・・」
 ざっと三日ばかり待っていましたかね、と雨傘を手にして言う隣国の王子。そーいえば二日前は雨降ってたかな、と兵士その二が呟くのを無視して、姫が怒鳴ります。
「なんで今更そんな事言い出すのよ!?大体婚約を破棄したのはそっちじゃないの!!」
「そうか、ふられたのはお前の方か」
 (こちらの)王子が意地の悪い笑顔で突っ込みます。
「うるさいっ!!とにかく、私にはもう結婚相手が居るんだから、いくらヨリ戻そうとしたって無駄よっ!!」
「だから俺は結婚相手になった覚えはないと言ってるだろうがっ!?」
「いいじゃない、こんな時くらい結婚相手だって言ってくれたって」
「言えるかっ!!?」
 王子はばっ!と馬から下りましたが、姫がマントの裾を掴んだままだったのでいささか間抜けな飛び降りになってしまいました。
「こんな女は何処へでも連れてけ!俺は知らん!」
「ええっ!!?そんな・・・・・・私のことを愛していてくれたんじゃなかったの!?ううっ、非道いわ!」
 姫はよろりら、と泣き伏します。
「だからそういう性格詐称はやめろっ!俺的には犯罪だぞっ!!?」
「うーむ・・・・・・流石に二回目じゃ引っかからないわねえ・・・・・・」
「一回目から既に引っかかってねえ!!」
「非道いですよ、王子!姫を捨てるなんてっ!!」
「散々弄んでおきながら・・・・・・私は姫のご両親にどう申し上げれば良いのでしょう・・・・・・」
「てめえらも非道い誤解を生むような発言をするなっ!!!」
「何いっ!!?まさか既にそんな関係にっ!?」
「そっちもあっさり信じるなっ!!?」
 王子は、何だか衝撃を受けた様子の隣国の王子に、びしっと指を突き付けます。
「俺とこの女は何でもないっ!!」
「何!?本当かっ!!?」
「さっきから何を聞いてたんだ貴様はっ!!?」
「ふ・・・・・・そうか・・・・・・やはりな」
「何が『やはり』なのよ?」
 姫のツッコミを無視して、隣国の王子は素早く体裁を取り繕いすっと前髪を掻き上げます。どうやら、余裕を取り戻したようです。
「ふふふ・・・・・・ならば話は早い・・・・・・姫を渡して貰いましょうか」
「・・・・・・何故ですか!?何故それ程までに姫が欲しいんですかっ!!?」
 にわかにシリアスがかってきた雰囲気の中、兵士その二が声を上げます。しかし「おお、流石に原作では真面目キャラなだけあってはまっておりますな」「俺の方が格好良く決めてやれるんだが」「ああっ、台詞盗られたっ!!」等バックが騒いでいたので台無しでしたが。
「ふ・・・・・・ならば教えてやろう!!」
 ばっ!と大仰に、隣国の王子がマントを払いました。そして浪々とした声を張り上げます。
「先生!!お願いします!!」
「ほーっほっほっほっほっほっ!!!」
 その台詞に応え、満を持してすぐそこの草むらから登場したのは、勿論皆様ご存じのオカマっぽい逆切れ爬虫類口だけエイリアン妖怪(姫命名)でありました。


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