|
orange
(1)
(2)
<3>
(4)
(5)
(6)
(7)
(戻る)
瞳を閉じたら 瞼の裏に 幸せだったあの頃の 思い出が 滲みだしてくるようで けれど すでに 薄汚れてしまった自分を思い こらえてもこらえても 涙が止まらなかった 勉強が、どうしても手につかなくて。 山の麓まで降りてきて、僕はただ、空を見上げていた。 僕の 好きだった空。 いつか 初めて空を飛んだ時の あの 例えようもない高揚感を 愛していた。 父の笑顔にも似た 広く 大きな青い空が 大好きだった。 ふと、僕の視界に飛び込んできた、明るい一点の色。 これは・・・、花・・・? 「はい、これ!お兄ちゃんにあげるっ!」 傍らに、小さな女の子が立っていた。 両手にいっぱいの、赤やピンクや・・・オレンジ色の花を抱えた 可愛らしい感じの女の子だった。 「悲しそうにしてたからね、メルのお花、分けてあげる! お花をもらうと元気になるって、ママが言ってたもん!」 心が、この瞬間だけ 和らいだような気がした。 冷たい部屋に 春の暖かい日差しが差し込むように、 優しく なれた。 「・・・ありがとう・・・。」 顔が自然と綻んでゆくのがわかって、 こんな風に笑える事が とても懐かしいような気さえ、した。 「あ!笑った!・・お兄ちゃん、笑ってるとすっごく可愛いね!」 少女は、まるでそれが自分の事のように、手をたたいて喜んだ。 「ねっねっ!メルと遊んで!お願い、いいでしょ?」 「・・いいよ。じゃ、何して遊ぼうか!」 時間は、流れるように過ぎていった。 「今日はありがとう、悟飯兄ちゃん!またね! お花渡さなくちゃいけないから、もう帰るね!」 「うん、僕も楽しかったよ。・・花、誰にあげるの?」 「あのね、今日はパパの誕生日なの! メル、パパの事大好きだから、元気になってもらいたいの!」 僕は 僕の心臓が 激しく揺さぶられる音を 聞いた 頭の中で 誰かが 囁いてくる (憎い、憎い、 この世の全てが) (きれいなものも 優しいものも 楽しいことさえ) (全てが・・・) 「・・・悟飯兄ちゃん・・・?」 怒りが、悲しみが、・・・嫉妬が。 「どうしたの・・・?どこか、痛いの・・?」 歪んだ狂気が、僕を覆い尽くしてしまう・・・。 「泣かないでよ、お兄ちゃん・・・」 助けて。 たすけて たすけて ・・・僕を、たすけて・・・ (オレンジ色の粒が街に 輝いている) (1) (2) <3> (4) (5) (6) (7) (戻る) |