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ドアを開けると柔らかい日差しが目に入った。 太陽も真上に来る時間になっている遅い朝。 黄龍瑛那は寝ぐせがついた長い髪をかき上げて、あくびをしながら喫茶に入ってきた。 彼はいつも外に出る時はそれなりの格好をして出てくる。ここのところ、日曜は寝間着同様の格好で出てくる事が多くなった。 黄龍が少しだけ、彼自身にも他人にもガードが甘くなってきているのを感じる事ができて、赤星竜太は嬉しかったりしている。 「・・・ふあ・・・ちィーっす・・・。」 「おはよ、黄龍。いつもどおりお前がラストだな。」 「日曜の朝くれえ、いーじゃねえかよー・・・。」 まるで子供のように拗ねた声を出す黄龍に、赤星はくすくす笑いながら冷えたミルクを差し出した。遅い朝にはこれが一番、というのは彼の持論だ。ミルクをぐーっと飲みながらゆったりした調子のギターの音を聞く。振り返ると人差し指と中指をそろえて「ちゃっ」と挨拶かわりのウインクをしてきた。黒羽健だ。 「だめだな、早起きくらいできんと・・・。寝坊する正義の味方なんぞカッコ悪すぎですぜ、瑛ちゃんよ。」 「うるせえなあもう、ったく俺様ばっかりかまうなよ・・・。」 かまわれる矛先が珍しく自分に向いているのに嫌気がさした黄龍は、そこでようやく瑠衣達がいない事に気が付いた。 一気にむさ苦しく感じるのはなぜだろう。 「・・・・・・瑠衣ちゃんと有望さんとテルは?」 「有望は研究の最中、ジャマすんなよ。輝達は買い物。」 「ふーん。・・・午前中から買いだしなんて真面目だねえ。」 「おやおや・・・誰が買いだしなんて言った?」 自分のコーヒーを持って、黄龍の隣に来た黒羽は少し突き放した感じで言い放った。 怪訝な顔をした彼に、赤星が黒羽のかわりに答える。 「ほら、瑠衣の服さ、女子校にでてきた怪人のおかげでダメになっちゃっただろ?輝が服買いに行こうって誘ったんだよ。」 「え・・・?」 目尻がぴくりとした黄龍を見て、赤星もちょっとだけ面白そうに笑った。 「お前が寝てたとこ、一所懸命起こしてたんだけどな2人とも。起きないから2人で行っちゃったぜ。」 「あ・・・そう、あっそ。」 早起きは三文の得、と言ったっけ。 黄龍は頭を抱えて長いため息をついた。 「あと、もう一つ。ボランティアがあるんだ輝。」 「ボランティアだあ?」 「ああ。俺の知り合いでさ。今、保父さんなんだ。」 「保母さん?何なに、女の子?」 「だから保父さんだっての。幼稚園の建て付けが悪くなって、ドアの開け閉めを何とかして欲しいっていってたからさ。輝に頼んだんだ。今日は様子を見に行くみたいだけど。」 「ふーん。・・・大工ねえ、あいつが。」 黄龍はコーヒーをすすりながら話を聞いていたが、『大工』というところでコーヒーをすする口が止まった。 輝が大工の作業をしているところは、あまり想像がつかないのだ。話を聞いている分には、大変な労力と体力と技術が必要だということもわかるのだが・・・。 「けど、あいつが木イ切ったりとか、設計してるとこなんて、想像つかねーんだよなあ・・・。」 黄龍は2人が出ていった後のドアをみると、少しばかりため息をついて焦げたフレンチトーストを口にした。 多分赤星が焼いたのだろう、炭くさいトーストを事務的に喉に押し込めた。 殺伐とした適当なビルの間をくぐったら、そこはちょっとレトロな雰囲気の町並みとなった。映画と違うのは現実感を帯びるように、生活の香りがすること。 『レトロ』というと聞こえはいいが、古いのである。くたびれた感じの建物が並ぶ道を、現代技術の成果とも言える最新型のマウンテンバイクが颯爽と駆けていった。 バイクの上にいるのは可愛らしい2人組。 翠川輝と桜木瑠衣だ。 輝はいつも全速力でバイクをこぎまくるのだが、今日は後ろにお姫さまを乗せている。 マウンテンバイクのフレームの上に上手に乗っている瑠衣だったが、輝は彼女のために細心の注意をはらって、気持ち遅めに運転しているのだった。 いつもディパックを背中にしている輝は、自転車についている『カゴ』が必要ないので取り外している。しかし、今回はカゴを取り付けてその中には大きな紙袋が山のように陣取っていた。 「ごめんね瑠衣ちゃん。ずっと前から約束してたのに、こんなに遅くなっちゃって・・・。」 「ううん、こっちこそたくさん買ってもらっちゃって。」 な、なんか赤星さん達に怒られそう・・・。 瑠衣は改めて目の前にある紙袋の山を見て、思わずつぶやいた。 「あの、本当にこんなにたくさん・・・よかったの?」 「もちろんっ!だって瑠衣ちゃんのお気に入りのスカートをダメにしちゃったんだもん。このくらい当然だよっ!」 『当然』じゃないよ、輝さん。普通なら買い物につき合うのをイヤがる男のひとすらいるんだよ。 バイクを操作している輝は、心配そうな顔をしているであろう瑠衣に前を見ながらニッコリ笑った。 そんな輝の肩に手を置いて髪を風に踊らせている彼女の服は、出かける前とすっかりかわっている。たくさん行った店の中のひとつで、『着替えていきなよー!』と輝と店員に押し切られる形で、その店で買った服に着替えてしまったのだった。首にふわりとしたスカーフをして、小さめに作られた白いトップスは彼女の体をますます華奢に見せて、ゆったりした膝丈のスカートにブーツがよく似合っていた。 輝は以前、潜入捜査をしたときに彼女から洋服を借りたのだが、かわいいリメイクスカートも、セーターもすべて怪人の粘液でダメにしてしまった。 ずっと彼女に『3倍返しで買い物連れてってあげるっ!』と約束をしていたのだが、受験やらなにやらで延びていた予定を今日、ようやく実行することができたのだ。 瑠衣はあまりにたくさん買ってもらったので少しだけココロが咎めたが、これ以上困った顔をすると輝も困ってしまうと思い、彼と同じくニッコリ笑った。 「男のひとって、女の買い物につき合うのはうんざりするって聞いたことあるけど・・・輝さんはそんなことないのね?」 「うん。どうして負担になるのかがわかんないなあ・・・?」 「あははっ!輝さんらしいっ。」 すでに無意識の中で根付いている彼のフェミニストぶりに、瑠衣は思わず苦笑してしまった。 今回の買い物で気が付いたのだが、彼は女の子がよく行くようなメーカーの店や、おしゃれな喫茶店などを実に良く知っている。『妹の買い物につき合わされる事が多くて!』と彼は言っていたのだが、多分、友達の女の子の買い物にもイヤな顔ひとつせずつきあってあげているのだと思う。 せっかくおしゃれな店をいっぱい知っているのだから、もう少し自分にも投資したらいいのに・・・というのは、有望と瑠衣の共通意見だった。 「ところで輝さん。用事につき合ってくれてもいい?って一体なんなの?」 「ああ、ボランティアなの。リーダーから頼まれたんだっ!」 「ボランティア?」 「うん、ホラこれ!」 指さした場所は他の家と違う造りの建物で、敷地から木の枝が道路に突き出している。 輝はゆっくりマウンテンバイクを止めて、瑠衣に足下に注意するように促してから下ろし、自分は跳ねるように飛び降りた。 「ここ、今度オレが修理しに来るとこなんだ。様子を見に来たんだよっ!」 「修理・・・?」 瑠衣は目の前に広がる古い建物を改めて見た。 ボロいのではない。 古い。 正真正銘レトロである。 まるで明治時代にタイムスリップしたかのようなその建物は、曲線が少し多くて優雅だった。手作り感の漂う厚い窓ガラス、木を組み合わせた真っ白なカベ。建物を形作る微妙なラインがとても美しく、大正末期に建てられたものなんだよ、と輝が説明してくれた。建物のどこからか詰め襟の学生服を着た若者や、髪を結い上げて大きなリボンをした女学生が出てきそうだ。 「わあーっ!素敵な建物!」 「瑠衣ちゃんもそう思う?」 「うん!」 「オレもそう思うっ!きれいな建物だよね・・・。」 ・・・・・・あれ? 恍惚ともとれるため息をついて、そのまま黙りこくった輝の顔はいつもの輝ではなかった。年上だけど弟みたいで、いつも初めて外に出る子供みたいにきらきらした目をしてるのだが、今日はちょっと違った。 女の子みたいな顔が、急に頼れる男性の顔になっている。 輝の父親は腕の良い宮大工なのだ、ということはみんなから聞いていて彼女も知っていた。 だが、普段の行動を見る限りでは正直言って、自分よりも年下なんじゃないかと思ってしまっていたのだ。 幼い顔つきに落ちつきない行動、あぶなっかしい心理状態。 それが急に仕事を持った男の目つきになったのを見て、彼女はちょっとどきりとした。 「こんなに素敵な建物・・・。きっと、設計した人もそれに携わったひとも、この子のことが大好きだったんだね。」 白い木のカベと会話するみたいに少しごつめの手のひらがゆっくりと撫でる。 「で、今までこうして永らえてきたのは、腕のいい大工にきれいにしてきてもらったからなんだよっ!」 そこで輝はようやくいつのも少年のような笑顔になって、瑠衣の方に振り向いた。 両手で自分の肩を抱えて、ぞくぞくするのを押さえるみたいに、足をじたばたさせる。 「そんな大工がやってきた仕事の中で、オレはほんの少しだけど・・・積み重なっていた技術の上に乗っかることが出来るなんて、すっごーく嬉しいんだっ!」 瑠衣は輝につられるようにして笑った。 2人でくすくす笑って建物をみつめていると、ぱたぱたと誰かが走ってくる音が聞こえた。 サンダルを引きずるような音がする。 「ああ、輝くん。来てくれて嬉しいよ。」 「こんにちは、橘さんっ!あ、この子は桜木瑠衣ちゃんです!瑠衣ちゃん、このひとりーだ・・・マスターの同級生だったひとなんだ、橘千影さん。」 「え?あ・・・は、はじめまして。桜木瑠衣です。」 「初めまして。輝くんから色々聞いていますよ。」 急に自己紹介をさせられて瑠衣は少しとまどい、紹介された男の顔を見た。 背は赤星達と同じくらいだが、ずっとひょろりとしている。柔らかそうな茶色に染めた髪はちょっとぼさぼさしてて、にっこり笑うと前歯が欠けていた。大きな耳で垂れ目であり、笑い顔が優しく・・・彼女は何かを想像した。 (あ。・・・エビス様にそっくり。) 思わず七福神の恵比須を思いだした瑠衣だったが、それが失礼かどうかまで考えてなかった。ただ、あまりにひょろながい体型の彼と、いつも側にいる赤星や黒羽や黄龍達とくらべると、どうしても頼りなさそうに見えたのでそんなことを考えてしまっていたのだ。『恵比須』の方はそんな彼女の心情には気がついてないらしく、「こんなかわいい女の子だと思わなかったよ。」と輝に笑いかけている。 「瑠衣ちゃん、橘さんはここの保父さんなんだ。」 「保父さん?ってことは、ここ、幼稚園なの?!」 「そうだよ、ちょっと古いけどね。」 輝の代わりに橘が答える。 瑠衣はあらためて建物を見渡すと、窓ガラスの向こうにクレヨンで描かれた絵や、紙をちぎってつくった工作が見えた。古い建物の中は、色彩にあふれていた。 きっと平日になるとたくさんの子供達がここにやってきて、お遊戯をしたり絵本を読み聞かせてもらっていたりしているのだろう。 「だんだんときしんできて、ドアの開け閉めとかが難しくなってきたんだ。それで輝くんにドアをちょっとけずってもらおうって。」 そこまで言うと橘はすまなさそうに輝をみつめた。 「ごめんね、宮大工の輝くんに日曜大工みたいなことやらせちゃって。」 「かまいません、お役に立てて嬉しいですからっ!それにオレはまだ見習いですし・・・。まだ大工って呼んでいただけるような技術もありません。」 「そうかなあ?赤星くんはすっごくホメてたよ。」 「ほんとっ?」 彼の口から思いがけず出された「リーダーからのホメ言葉」に、輝は顔を真っ赤にして笑った。自分の知らないところで、自分のことをホメてくれて、それが人づてに自分のところに聞こえてくるのは嬉しかった。目標としている人だからなおさら。 「エヘ・・・嬉しいなあっ。」 瑠衣は橘と輝を見て微笑むと、後ろからふわりとした髪の毛の感触と、肩に手を置かれるのを感じて小さく悲鳴をあげた。 「わっ。」 「ちい!輝くんが来てたんだ?こんなカワイイ子も一緒とはねーv」 「桜子さん。ええ、今来てくれたばかりなんです。」 『サクラコ』と呼ばれた女性は輝と瑠衣の顔をまじまじ見て、ニッコリ笑った。 輝よりも背が高く、橘よりも背が少し低いだけの彼女は妙に迫力があった。真っ黒で長めの髪を耳の上でピン留めをして下ろしていて、厚めの唇にオレンジ系の口紅を塗っている。 橘とおそろいのエプロンをしているということは、余り想像できないが彼女も保母さんなのだろう。 彼女は買いだし帰りなのか、クレヨンや色紙が色々詰まっている買い物袋をたくさん下げており、目の合った瑠衣に背中ごしに『にいっ』と笑った。 「ゴメンネ輝くん。ちいったらぜーんぜん頼りにならなくって。」 輝はちょっとだけ苦笑すると、自分の胸をぽんと叩いた。 「まかせといて下さいっ!」 「いい返事ねっ。」 優しい口調の橘と比べると早口な桜子のしゃべり方に、瑠衣はちょっと圧倒されてしまった。 後ろへ引き気味の瑠衣を見て、彼女はぱちりとウインクすると建てつけの悪い戸をムリヤリ開けて、建物の中へと入っていった。 「それじゃまた明日ねー!よろしく、輝くんっ!」 「ハイ!」 桜子は手を軽く振り、その後を追うように橘が駆けていく。 「あ、輝くん!赤星くんにもよろしくね。」 「もちろんです。」 橘がニッコリ笑うと欠けた前歯が見え隠れした。 「ねえ、幼稚園も保母さん達も素敵なところね。」 「うん。2人とも優しいし、いいひとだよ。」 「橘さんたら、前歯・・・差し歯とかすればいいのに。」 輝は「あははっ!」と大声で笑って、瑠衣を見た。 「あの前歯が欠けてるおかげで、初めて会ったひとが、顔も名前もすぐに覚えてくれるって話してたよっ。なんかいいよね橘さんて。オレ、スキだよ。」 「瑠衣も!なんかなごむよねえ〜。」 赤星や黒羽と同じ年をした男性に向かって、「なんかいいよね」だの「なごむ」だのと言っている輝と瑠衣だったが、それが失礼かどうかまで考えてはいなかった。 けど輝は橘の欠けた歯も、桜子の物の言い方も、時が止まったような造りの建物も大好きになっていた。 彼らの役に立てられるのが純粋に嬉しくて、そんな「ボランティア」をみつけてきてくれた赤星に感謝をしている最中だった。 マウンテンバイクに乗って喫茶まであと少しになったとき、瑠衣は湧いた疑問を彼につぶやいた。 「ねえ橘さんが言ってたけど、どうして「宮大工」の輝さんが日曜大工みたいなことをしたらダメなの?」 「えっ?・・・うーん・・・。」 輝は頭の中で少しまとめてから、自分の得意分野の話を瑠衣にしてみせた。 これだけは他の仲間達よりも遙かに知識と経験がある。 「本当の宮大工ってのは神社やお寺以外は直さないんだよ。腕がけがれるから町家の仕事をしないのが、伝統なの。」 「へえーっ!知らなかった・・・。」 「うん、けど・・・。」 輝はちょっとだけはにかんで、ゆっくり笑った。 「けど、オヤジはその伝統を守らなかったんだ。」 彼の父親は家族も好きだったが、『ひと』も好きな人間だった。昔の大工と勝負をするのも楽しいけど、依頼人からあれこれ文句を言われながら、相談しながら、そういう中でひとつの作品を作り上げていくのも好きだったのだ。 正直な話、伝統を守って宮大工一本でやるといっても生活なんかできやしない。オヤジのお師匠さんだって、いっつもお金はなくて奥さんが苦労してた。オヤジはその伝統を守って、家族に苦労はかけさせたくなかったんだろうと思う。 未だに母さんのことをこっちが恥ずかしくなるくらい大切にしてるオヤジが、母さんに苦労させるなんて決定的な理由がない限り絶対にできっこない。 オヤジは伝統よりも家族と人をとったのだった。 「伝統を守って生きる人もカッコイイって思うよ。なかなか貫くことができない事だもんね。・・・・・・だけど、オレは伝統よりも『ひと』を取ったオヤジのことも・・・。」 輝は急にはっとして、言葉をとどめた。 瑠衣はそんな様子の輝にきょとんとし、ちょっと考えて「ああ。」と納得したような声を出すと、くすくす笑って輝の耳に口を近づけた。 「ことも?」 「なんでもないのっ!なんでもない!」 お酒飲んだときみたいに赤くなっている(彼はならないが)輝が面白くて、瑠衣ははしゃいで彼の首に腕を巻き付けた。 「ねえ輝さん。なに、なんなのっ?みんなには内緒にするから教えてよっ?」 「瑠衣ちゃん、苦しいってばっ!なーいーしょっ!瑠衣ちゃんにも内緒なのっ!」 「そんなこといわないで、ね?」 彼女はしっかりしているときと、年下の役割をする時と、すぐにスイッチを切り替えられる。その切り替えは絶妙でイヤミがない。 一体いつどこで甘えたらいいのかということを、体が自然に覚えている。まるで要領の良い自分の妹達を見ているようで楽しくて、かわいかった。 「ダメダメっ。あ、ホラ『森の小路』が見えてきたよっ。」 「んもう、ケチなんだからっ!」 顔を赤くしながら、話をムリヤリそらした輝にひとまず「乗っ」た瑠衣は、店の前に着いたマウンテンバイクからひらりと降りた。 「今度、教えてね。輝さんの『お師匠さん』の事!」 「オレの師匠はリーダーだけだよっ!」 瑠衣は笑いながらカゴから買い物袋を取り出して、先に店の方へと走っていった。 オレ持つってば!という輝の声に笑い声を重ねながら、瑠衣は喫茶のドアベルを鳴らして入っていく。中からお姫さまを待ちかねた大人3人の歓声が聞こえてくる。 「もう、あんまり重いもの持っちゃダメだよっ・・・。・・・・・・・・・。」 オズリーブスのメンバー達とおしゃべりするときに、無意識のうちに避けている話題がひとつある。 家族の事だ。 父も母もいてかわいい妹達がいるのが常だった輝にとって、瑠衣達の家族環境はそう簡単に想像できるものではなかった。 先ほど言葉を詰まらせたのは、父のことだけじゃなくて、そんな話題を不用意に彼女の前で話した自分に嫌悪感を持ったからだ。 「・・・・・・。」 輝は夕焼けに染まった空を見上げた。太陽が真っ赤に染まり、辺り一面オレンジ色に変えている。 怪人が出る周期は、ほぼ一週間。 「また、出てくるのかな・・・。」 瑠衣の両親を『殺し』た相手は絶対に許せない。けど、彼らを『倒す』ことに、未だにどこかひっかかる自分もいたりした。 あいつらは、何を考えて、どう思って戦っているんだろう。 頭の中で、襲ってくるやつら、そして四天王の顔が浮かんでは消える。 シェロプ、ゴリアント、アラクネー、そしてスプリガン。 「話してみたいなあ・・・・・・。」 「おーい、テル?どーした?」 いつまでも夕焼け空をぼうっと見上げている輝を心配したのか、黄龍が店から出てきた。 「ううん・・・ごめんね。」 輝は不謹慎な事を考えていた自分に、ちょっとだけ驚いた。 そしてその表情をすぐに戻して黄龍に振り返った。 ===***===(つづく)===***=== 2002/4/20
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