★Dance with The Fear! (1/2)
神殿の一室で、天蓋付きのベッドの上にいたメディは、隣で眠っているはずのサヤが見あたらない事に気が付いた。
今は昼寝の時間。育ち盛りの子供ということで、眠ることも修行なのだ。
「さ、サヤ・・・?どこだよ?」
メディは(サヤもだが)まだ『気』で力をとらえる事ができない。そのため、サヤが神殿のどこにいるのかさえわからない。
「もう、起きたのかよ・・・?」
あと1時間は眠っていなくてはいけないのだが、サヤがいないせいかメディの目はぱっちりとさえてしまった。
「くそ。」
メディは舌打ちをしながらベッドから起きると、サヤを探しに部屋の外に出た。
サヤはここに来てからというもの、自分から離れて行動することが多くなった。ちょっと前までは自分とサヤ、ふたりセットのようだったというのに。
「『二人セット』かあ・・・。」
彼らの事を『セット』と言ったのは、金髪碧眼、三つの目を持つシャラだ。自分よりも5つ年上で、彼の弁髪がお気に入りのサヤを妹みたいに可愛がっていた。
神様の神殿で修行する、と言った時も一番心配していたのはシャラだ。
「元気かなあ・・・シャラ兄ちゃん・・・。まさか、オレのいないスキにローレ姉ちゃんに手え出してねえだろうな・・・。くそ。」
そんなことしたら、ぜってえぐれてやる・・・とひとりごとをぶつぶつ言いながら、神殿の中庭の方に出ていった。
柔らかい日差しの中で、神が椅子とテーブルを出して、お茶をしながら本をめくっている。
「お〜い!神様あっ!サヤ見かけなかった・・・?あ。」
「しっ。」
神は、人差し指を唇にあてて静かにするよう、メディに促した。
サヤは、中庭の中央にあるでっかい木の幹にもたれかかって、ぐっすりと眠りこけていた。西の都にある自分の家に来たとき、ベッドが柔らかすぎて眠れなくなっていた彼女にとって、最高のフトンは緑の草と木の幹なのだろう。
長いまつげを閉じてぐっすり眠っているサヤは、ものすごくカワイかったが、それは今はどうでもいい。
「な、なんで隣りにピッコロさんがいるのさ・・・っ。」
サヤは木の幹にももたれかかっているが、体の半分はピッコロの体にもたれかかっている。サヤの柔らかい髪と頬がピッコロの腕に触れているのを見た瞬間、メディの顔は真っ赤になった。
「そ、そ、そこはオレと姉ちゃんだけの特等席だったのにっ!!」
「静かにしなさい、メディ・・・。どうしたんですか?あなたはまだ眠っている時間でしょう?」
「神様は黙っててっ!」
メディはずんずんと草を分けてピッコロ達の方に向かった。向かった、というよりも突き進んだ、と言った方が正しい。
「ぴ、ピッコロさんがサヤを、べ、べ、ベッドから連れ出したの・・・?」
「そんなことするか。サヤが勝手に出てきて、オレを枕代わりにしているだけだ。」
『勝手に』とか抜かしてる割には嬉しそうだ。くそったれ。
「ちっくしょう〜っ!!ピッコロさんのどすけべっ!ばかっ!ぐれてやるぞオレ!」
「だから、どうしたらそんなことになるんだお前は・・・。」
「いい加減にしなさい。今は疲れた体を休める時間ですよ。ホラ・・・。」
神はメディの腕をムリヤリ引っ張って、自分と向かい合わせになっている椅子に座らせた。ジャスミンの葉をコップに入れて、湯を注ぐとそれを彼に手渡した。
「コレを飲んで。眠れないのなら、黙って体を休めていなさい。」
それだけ言うと、神はしおりを挟んだ本を手に取って、また続きを読み始めた。
メディはジャスミンティを素直に受け取って、ずず・・・とやけどをしないようにすすった。
本はあまり好きではないメディにとって、神様の読書量は、ハタからながめてうんざりするものがあった。
目の前にいる『神様』は、さっきから表情を変えずに難しそうな書物に目を通している。普段、くるくると表情を変えるサヤと一緒にいるせいか、無表情に近い顔をしている神様の側にいるのは、ちょっと緊張した。
だがメディはこの心地よい緊張感がキライではなかった。
神様・・・というには自分が想像していたものよりも遙かに若くて、ピッコロとは対照的な細い体。声は自分の姉のように優しくて、いつもにこにこしていて、時々ピッコロの蹴りよりもグサっとくる一言を吐いてくれる。
「なあ、神様・・・。オレさあ、もう強くなったでしょ?」
メディは、透かし彫りの入った椅子にだらしなく腰掛けて、自分の向かいにいる神様に願いを請うようにつぶやいた。
神はこちらを向かない。白いローブの裾を気にしながら、書物を片手に彼の話に耳を傾けている。
「もうさ、みんなに会いにいっちゃだめなの?」
「いけません。よけいな事考えていないで休んでいなさい・・・。」
顔を自分の方に向けず、間髪いれずに彼の返事が来た。
メディはたしかに、地上ではもう敵なしだろう。しかし、3年間はここにいることを約束させられたのだ。
「あなたはここで修行を3年すると最初に約束したはずでしょう?まだ1年しかたってませんよ。」
メディはサヤとピッコロの方をちらりと見てから、また視線を神に戻した。
「そうだけどさあ、オレ、神様よりはもう強いよ。だろ?」
「おい、メディ・・・。」
「かまいませんよ、ピッコロさん。さて・・・どうでしょうね?」
彼をたしなめるようにしたピッコロの言葉をさえぎって、神はニコニコ微笑んだ。そして、神はちょっと目を丸くしてようやくメディの方に振り向くと、くすくす笑った。
「だって、神様は戦いが専門じゃないって言ってたじゃん!オレは毎日毎日、ピッコロさんに教えてもらってるしさ!神様より強いよ!」
「毎日、毎日・・・ねえ?」
彼は、いたずらを考えてる子供のような目になって、メディにこんな提案をした。
「・・・そうだ。わたしの顔を殴ることができたら、今すぐにでもあなたの友人や、姉のもとに帰ってもかまいませんよ。」
「ほんと!!」
「おい、デンデ!」
メディはやる気十分で、首と手をコキコキと鳴らし始めた。
「その顔が形変わってもしらねーよ、オレ!」
「ばかな、何考えてる!?」
心配するピッコロをよそに、神は楽しそうに本を閉じた。
「大丈夫ですよ、ピッコロさん。」
「へっへっへ・・・。覚悟しろよ!・・・って、神様、そんなカッコで大丈夫なわけ?」
メディは神が着ている優雅な裾のローブを、わざわざ心配している。
それだけ余裕があるということを示したいようだ。メディは神のカッコを上から下に眺めて、『フフン。』と得意げに唇を上向きにしてみせた。
「そうですね、それじゃあ。」
神が人差し指で宙をかくと、ピッコロのものとデザインはほとんど同じだが、色が対照的な白い服に変わった。
藍色のマントをきちんとたたんで、草の上に置くとメディに向かってニッコリ微笑んだ。
彼の顔つきは、いつか故郷の星を守ろうとした者によく似てきた。体の線が少しばかり細い事をのぞけばそっくりだ。
「・・・ネイルに似てきたな・・・。」
神は手を組んで、両腕を空に上げると思いっきり伸びをした。
「さて。ピッコロさん、合図をお願いします。」
「わかった。」
「オレが勝つよっ!」
ピッコロが『気』の固まりをふっ・・・と宙に投げた。『気』はそのまま幹に沿って上の方に上がっていき、・・・一本の枝を折った。
ばきっ!!
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