★ミラクルスイートハニー!! (1/2)

鏡の中には、かっちりしたスーツを着た自分が映っていた。普段、こんな物を着ることはないので、心身ともに違和感があった。
「よしっ、これでオッケイよ。天津飯さんてば背があるから、なに着ても似合うわね。ウフフっ。」
彼の首にネクタイを巻き付けながら、そう言ったのはブルマだ。
後ろで彼女のダンナが目つきを悪くしているのに気がついているのだろうか?
「すまないな、色々と世話になって・・・。」
「いーわよ、そんなこと!さっ、カワイイ花嫁さんを見に行ったら?」
天津飯は礼のかわりに手を軽く振ると、大急ぎで部屋から出ていってしまった。

今日は、自分が世界で一番幸せになれる日なのだ。世界で一番大事な人と。本当は、こんな式なんか挙げるつもりはなかったのだが、色々と世話焼き・・・セッティングしてくれたブルマに感謝だ。
いつもきれいなあの人が、今日はどんな姿で自分を見つめてくれるのか。
一刻も早く目に焼き付けたくて、走るのがまどろっこしいくらいだった。

「おい、ランチ・・・。・・・・・・あ。」
大きな窓がある控え室に彼女はいた。葉を透かした柔らかい太陽の光が彼女を照らして、黒髪が光に溶けてしまいそうだった。
こちらを見てはにかんでいる彼女は、レースと薄い布をいっぱい使った、羽根のようなドレスに身を包んでいた。
「て、天津飯さん・・・。ど、どうですか?これ・・・。似合ってますか?」
「・・・す、すごく・・・似合ってる・・・。きれいだ・・・。」
天津飯は、そういうのがやっとだった。
よく、恋人のことを『天使』だの『妖精』だのと例える奴がいるが、そんなの今のランチの『比』ではない。今自分の目の前にいる人は、確実にこの世のなによりも美しい。いや美しい、なんていう言葉さえも邪魔になる。
「本当に・・・きれいだ・・・。」
彼女の頬を指先でそおっと触れた。あんまりきれいだから、乱暴に触れたら壊れてなくなってしまいそうだったから。
「ウフフ・・・。天津飯さんもすっごく、すっごく、すて・・・き・・・はっ、はっくしょいっ!!」

ランチは天津飯の指先を掴んだまま、豪快なクシャミをした。すると、彼の目の前には空色の瞳に、金の髪を結い上げた女性が座っていた。

「・・・。お前。」
金色の髪のランチは自分の恰好に最初、あっけにとられてぽかんとしていた。ひらひらした妖精の羽根のようなレースに顔をしかめて、指先でイヤそうにつまんでいた。が、自分の目の前に呆然として突っ立っている天津飯の恰好を見て、彼女は大声で笑い始めた。
「だーっはっはっはっはっ!!!なんだよて、天津飯!お前のそのカッコ!!!七五三じゃあねえっつーの!!!あっはっはっはっ!!!ひっ、ひいっく、苦しい〜っ!!」
ランチは死にかけている虫の様に体を震わせて、座っていた椅子の背に額をこすりつけ、ぐぐぐぐ・・・と笑いをこらえている。天津飯の方はというとじっと手を見て、その後に自分の恰好をもう一回見直して、ため息をついた。

「七五三か・・・お互い様だろ?」
「あっ、ひっ、ふっ・・・腹が痛いっ。ごめんごめん、すまねえな。いつものカッコと180度違うもんだからビックリしちゃってよ。」
近くにあったポットから、コップに水を注いでまだむせかえっている彼女に手渡した。
「あ、悪いな・・・。」
「そ、そんなに似合ってないか?」
「違う違うって・・・。」
ランチはコップの水をぐーっと飲み干して、天津飯をレース越しに見つめた。
「ちょっとびっくりしただけだっつっただろ?けっこうイケてるぜ。イケてねーのはオレのほうだよ。なんだよコレ・・・。お遊戯会かよほんとによ。」
せっかくキレイに着せてくれたドレスの裾をつまんで、彼女は心底イヤそうな顔をした。
『マジでオレのほうが七五三じゃねーか・・・。』と苦笑まじりにつぶやいている。

「そんなことない・・・。きれいだ。」
彼は時々、びっくりするくらいストレートなセリフをぶつけてくれる。
それも予告なしに。
ランチは頬を指先でちょっとひっかいて、歯を見せて笑った。
「ばーかっ。七五三のカッコでいうセリフかよ。」
「ふふ。」


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