★No Exchange! (1/3)
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――スパイダルの居城、とある地下倉庫。ホコリっぽくて汚い。マントが汚れる事を嫌がる魔神将軍シェロプ、キョロキョロあたりを見回す牙将軍ゴリアント、壁に寄りかかって腕組みをしている機甲将軍スプリガン、下を向いたままの夢織将軍アラクネー。
――アラクネーが顔を上げるのに他の3人が気が付く。彼女の目線の先に注目が集まる。空間が歪み、現れたのはスパイダル参謀ブラックインパルス。

スプリガン「司令官殿。今日はまたどうしてこんな場所で?」
アラクネー「それよりも司令官、今度のあたくしの作戦をお聴き願えますか?実は……」
シェロプ「小娘が出しゃばるな!それよりも私の作戦内容のご確認を…。私の話の方が時間のない司令官のおためになるはずです……。」
スプリガン「どっちもガキだねエ。ったく。」
ゴリアント「それよりも、オレッちの考えた………」


――言い終わる前にBIの雷撃が4人に来る。ホコリが舞い上がり汚い部屋の視界が霞む。咳き込むスパイダル四天王とスパイダル参謀。
BI「ゲホゲホ…いい加減にせんか4人とも!お前達、四天王という立場をわかっているのか? 全く学習能力のない…ゲホ。」
ゴリアント「そりゃ、司令官だって……ぎゃ!」

――アラクネー、思わずゴリアントのつま先を踏む(ピンヒールのブーツで)
アラクネー「あ、あたくし達をここへ集めたと言うことは、何か理由がおありで…。」
BI「もちろんだ。」

――BI、こっくりうなずき地下倉庫を上から下に見つめる。四天王達もマネしながら見つめ始める。無造作に色々なモノが積まれている。趣味の悪い鎧、遺跡から出てきそうな石造りの小物、宝石が付いた剣などなど。

BI「スパイダル帝国成立以来、ここには色々なモノが置かれている。時代と共に不要となったもの、忘れ去られここに流れ着いたもの、下らない薬品……。どれも使うか使わないかわからんもの」
シェロプ「要するに、『いつもは使用しないがいつか使う時が来るかもしれない』というモノが体よく投げ込まれているとは、子供の頃に聞いた事がありますが……。」
スプリガン「しっかし、そんな『いつか使うかもしれない』モン、経験上使った試しがありませんぜ。ここにある代物は、例えて言うなら贈答品に付いてる化粧箱やリボンと同程度のモノだと思いますがねえ。」

――BI、ニっと笑ってスプリガンを見る。
BI「(右手を宙にかざしながら)化粧箱やリボン自体に価値がある場合も……この帝国内ならあり得る話なのだよ、スプリガン。」

――倉庫の奥から赤い光に包まれて乳白色の小瓶が出てくる。宙を漂いつつ、BIの手のひらに収まる小瓶。
シェロプ「これは……古いですが上等の細工物ですね。」

――瓶は乳白色の大理石で出来ているらしい。金細工が施されている。所々に赤い宝石。
アラクネー「司令官、これは……?」
BI「体の入れ替えが可能になるものだ。」
4人「入れ替え?」
BI「そうだ」

ゴリアント「(少し小馬鹿にしつつ)しっかし、そんなモンならここで探さなくっても市場にイイモンが出回っているでしょうさ。ま、オレっちは他の奴と体を入れ替える必要なんてねえですけど。」
BI「今、出回っている物はカプセル状のものだったはず。これは煙状のものだ。使いこなすのが難しいため、ここに置かれていたのだが……、3次元で上手に使えばどうなるか、想像に難くないだろう。四天王なら使いこなせると思ってな。」
アラクネー「(嬉々として)なるほど!カプセル状だと飲ませる手間がありますが、これは空気中に漂わせれば自動的に、無差別に入れ替わる!」
スプリガン「3次元でこれをかがせ、アセロポッドあたりと3次元人達を入れ替えれば、律儀なオズリーブス達だ、一般人かアセロポッドか見分けがつかない者達に手出しはできない。」
ゴリアント「(ニヤニヤしながら)そこを一気に……!」
シェロプ「素晴らしい!流石は司令官!その作戦指揮は是非!」

シェロプ、アラクネー、同時にBIのそばに近寄る。

シェロプ「この私が!」
アラクネー「このあたくしが!…………あら?」

――BIのそばに駆け寄ったアラクネー、瓶を見て何かに気が付く。シェロプも同時に気が付き、瓶を見る。
アラクネー「し、司令官……この瓶なのですが……。」
BI「どうしたのだ、アラクネー?」
シェロプ「栓が……欠けています。」

――瓶に施した細工の割に安っぽいコルク製の栓。4分の1ほど欠けている。
アラクネーとシェロプ、マントで鼻と口を覆い同時にBIから離れる。
スプリガンとBI、全く動じず突っ立ったまま。
ゴリアント、ラクダのように鼻の穴をぱたんと閉じる。

――BI、呪文のような言葉をつぶやくと赤い光は収まり、瓶は欠けた栓の上から蜜蝋のようなもので固められる。その瞬間、赤い光がおさまる。


スプリガン「(少し困ったように)あの赤い光みてーなものが入れ替え効果のあると言われていた煙と同程度の効果のあるモノだったようですな。」
ゴリアント「(他人事っぽく)ビカビカ光る感じじゃなくって、なんつーかボヤーっとしてたモンな。まるで煙みてーによ。」
BI「なるほど……すぐに入れ替えが起こらなかったのは、やはりこの部屋に入っていただけの事はあるな。フ……所詮は化粧箱とそれを結わえるリボンと同程度と言う話か……。」


――シェロプ、自分の手を見つめる。白い手袋に指輪……があるはずなのだが、細い指先には丁寧―――に細工を施した爪が乗っている。顔に触れると白い仮面ではなく、久しぶりの肌の感触。

――アラクネー、顔に触れる。肌ではなく文字通り陶器のような感触の白い仮面。その辺にあった鏡をを見ると、自分ではなくシェロプの顔が映る。

アラクネーinシェロプ(以下AinS)「(驚き顔)これは………。」
シェロプinアラクネー(以下SinA)「(青ざめる)わ、私の顔が……白い手袋で覆われた、私の手がこっ……んなヨロヨロの手にっ……。」

――ゴリアント、笑いをこらえきれずに爆笑し始める。

ゴリアント「わはははははははははは!!!(AinSを指さし)こっちが小娘で(SinAを指さし)こっちがお貴族様か!!!あーーーーーーーー楽しいぜこれ!!ひ〜ひっひっひひい、腹痛くてたまらんぜ、だーっはっはっはっはっはっは!!!!!!!」
スプリガン「(楽しそうに)よかったじゃねえかよ、司令官殿が直々に探し出して下さった薬の効果を体を張って立証したってえ訳だ。四天王の鏡だぜ、坊ちゃんに嬢ちゃんよ!」

――笑いをこらえきれなくなって後ろを向いて肩を震わせるスプリガン。隣でバカ笑いしているゴリアント。怒り心頭なのだが、どうしていいかとまどうSinA。固まったままのAinS。
SinA「どういう事だ!ここには5人いると言うのにどーして私とこいつ(AinSを指さす)だけがこのような目に遭うのだッ!!」

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