★第23話 (1/8)
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――暗闇の空間。浮かび上がる黒衣の華奢な肢体。球形のカプセルを持つ白い手。カプセルが割れると煙とともに怪人が現れる。テロップ「暗黒妖夢族怪人スピンドル」

アラクネー「スピンドル。ウィーヴィング・グラスを‥‥」
――スピンドルが両手をあげると直径5cmぐらいの白い不透明のガラス玉が生まれる。アラクネーの手から7色の糸が放たれてガラス玉を覆うと、糸が溶け込んで、虹色に変化する。

アラクネー「わかっているわね」
スピンドル「ははっ」


===***=== タイトルIN「甘い誘惑・夢織姫の紡ぐ夢幻の罠」===***===


――午後の森の小路。カウンターの中で「猫の手帳」を読んでいる理絵。ボックス席で新聞を読んでいる赤星。そこに帰ってくる瑠衣。
瑠衣「ただいまー」
赤星「おかえり」
理絵「おかえりなさい、瑠衣さん」
瑠衣「あ、理絵さん! お疲れさまでした。あと、あたしやりますね」
――理絵、エプロンを取りながらカウンターから出てきて、初めてレジの台に貼ってあるポスターに気付く。
理絵「‥‥‥あ‥‥、店長、これは?」
――迷い猫探して下さいのポスター。キジ模様のネコの写真。青い首輪。名前はカベルネ。

赤星「昨日、近所の家で、迷子になっちゃったらしくてさ。貼ってくれって頼まれたんだ。乳離れする前から育てた子だから、飼ってる女の子がすっかりしょげちゃってて‥‥」
瑠衣「早く見つかるといいわよね。美雪ちゃん、泣きそうだったもん‥‥」
理絵「人は猫を産まないし、猫も人は産まないですよね‥‥‥」
赤星・瑠衣「はあ?」

理絵「違う種類なのに家族同然というのは、不思議な感覚と思っていましたが‥‥」
――赤星、瑠衣、ひたすらに目をぱちくり。理絵、ふっと表情を和らげて‥‥
理絵「それが‥‥。自分で飼って、やっとわかりました。私も、マンデリン、トラジャ、モカマタリのどれか一匹でもいなくなったら、とても寂しいと思います」

――赤星、瑠衣、嬉しそうに笑って
赤星「みんな元気?」
理絵「はい。とても可愛いです」
瑠衣「三匹とも真っ黒でしたよね。マンデリンは金目。モカマタリは青目。トラジャは緑!」
赤星「トラジャだけオスで、シッポ、短かったっけ? あいつの前足ぶっとくて、でっかくなりそうだったよな。あとは二匹とも長シッポで‥‥」

理絵「お二人ともたった1日見ていただけなのに、よく覚えてますね」
瑠衣「だってとっても可愛かったんですもの。名前付けも楽しかったわよね!」
赤星「あの黒羽がさ、いきなり、これは絶対マンデリンだ!って言い張ったの、おかしかったよな」
理絵「おかげであとの子もコーヒーの名前になって‥‥。みんな、とてもいい名前です」

――やいのやいのと猫談義をしているとドアベルの音。
――小さな女の子(田尾美雪10歳)とその両親が入ってくる。美雪、うつむいている。

赤星「あ、田尾さん、美雪ちゃん」
田尾「ああ、赤星くん、このたびはうちの子が色々面倒かけたね」
赤星「いえ、ただポスター貼っただけですから。何か、わかったんですか?」
田尾「だめだったんだよ‥‥。車にひかれていたと保護センターから電話があって‥‥」

田尾夫人「あの通り、カベルネの行動範囲じゃなかったんですけど‥‥。なんであんなとこまで行ったのか‥‥」
美雪「あたしのせいよ‥‥」
赤星「美雪ちゃん。違うって。この前もそう言ったろ」
美雪「あたしが‥‥グルナッシュを拾ってきたから‥‥」

――美雪泣き出す。赤星、美雪の前に膝をついて、手をとる。
赤星「あのね。男の子の猫は冒険したくなることがあるんだよ。美雪ちゃんの家の周り、車、少なかったから、カベルネも大きな道のことがよくわかんなかったと思うしね」
――赤星に抱きついて泣きじゃくる美雪。少女の背中をそっとさする赤星。
赤星「カベルネはグルナッシュが来たから遠出したわけじゃないんだって。それに、美雪ちゃんが拾わなきゃ、グルナッシュはきっと死んじゃってたぞ?」

美雪「‥‥グルが来て、ルーはきっと寂しくて‥‥。あたしがもっと‥‥」
赤星「グルナッシュ、赤ちゃんだったんだから、手がかかるのは仕方ないだろ? 美雪ちゃん、きちんとやったんだから‥‥。それに、ほら、メルロはグルが来ても大丈夫だったじゃないか。な? カベルネが遠出したのは偶然だって‥‥」

――なだめられてなんとか泣きやむ美雪。瑠衣が外したポスターを母親に渡す。礼を言って立ち去る親子。見送る3人。涙目の瑠衣。ふと見上げると赤星の目もちょっと赤い。
瑠衣「赤星さん‥‥?」
赤星(苦笑して目をこする)「‥‥俺、動物死んじまう話って、弱いんだよ‥‥」
瑠衣「‥‥‥怪談より?」
赤星「怪談の方がマシ。悲しいよりコワイ方がぜんぜんマシ」

理絵「店長。あの猫や飼い主の人たちとは、お知り合いだったんですか?」
赤星「2年前に美雪ちゃんがカベルネとメルロを拾った時、ちょうどでっくわしたんだ。で、なんか、ミルクのやり方とか教えるハメになって、それでね」
理絵「グルナッシュというのも猫ですか?」
赤星「うん。去年の年末、やっぱりこんなちっちゃいの拾ったんだって」
瑠衣「猫って、後から子猫が来ると嫉妬するって聞いたことあったけど、ホントなんだ‥‥」
赤星「まあな‥‥。カベルネは、ガキん時から妙に感情豊かなトコがあったんだよ‥‥」
瑠衣「‥‥美雪ちゃんもカベルネも、可哀想‥‥‥」

理絵「あのご両親は‥‥娘さんが心配でついてきたのでしょうか?」
瑠衣「優しそうなパパとママですよね。でも、この時間にパパがいてくれるって、めずらしい‥‥」
赤星「‥‥あ‥‥。田尾さんって研究者で‥‥その‥‥」
瑠衣「ああ、時間の融通きくんだ。うちのパパもそうだったもん‥‥」

理絵(意外そうに)「瑠衣さんの親御さん、研究者なんですか?」
瑠衣「あ、はい。ママもそうだったんです。‥‥二人とも事故で死んじゃったんですけど‥‥」
――理絵、一瞬、目を丸くして瑠衣を見るが、すぐ目を伏せる。
理絵「‥‥そうだったんですか‥‥‥‥」

赤星(わざと明るく)「あ、瑠衣! そういや、博士のクルミケーキあるぞ!」
瑠衣「わあ! じゃ、生クリーム、ホイップしていい?」
赤星「もちろん! 理絵さんも、食べてかないか?」
理絵「はい。ではマンデリンを淹れましょう。瑠衣さんは紅茶がよろしいですね」
――台所とカウンター内で準備を始める三人。


===***===

――夕方。あるマンションの屋上。スピンドルがウィーヴィング・グラスをばらまく。公園で遊んでいた子供達。帰ろうとして虹色のガラス玉に気付き、拾って眺める。何人もの子供がそれを持って帰る。

――港で堤防に腰掛けてハーモニカを吹いている少年(佐川茂)。ハーモニカをポケットに入れて帰ろうとしたとき、ガラス玉に気付く。夕日に少し透かしてからポケットに入れる。

――あちこちでポスターの回収をしてきた田尾親子。マンションの入り口でガラス玉に気付く美雪。やはりそれを拾う。

――夜。寝ている子供達。机の上や棚の上などに、ガラス玉が置いてある。そのガラス玉が光り始める。

――マンションの屋上。怪人スピンドルの後ろに黒衣の姿が現れる。
アラクネー「首尾は?」
スピンドル「かなりの数の子供たちがウィーヴィング・グラスを持ち帰りました。あれは子供達の楽しい夢の脳波に反応して発光する。その光を浴びた者はその夢から抜け出せなくなります」
アラクネー「夢に閉じこめて洗脳し、子供たちにスパイダルに対する忠誠心を植え付ける。そうすれば、大人達がどう騒ごうが、自ずとこの国は墜ちるわ。この実験がうまくいったら大規模に作戦を展開する。期待しているわよ、スピンドル」
スピンドル「ははっ」

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