★第23話 (4/8)
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――「国立生命工学研究所」実験室。測定器の中のウィーヴィング・グラスが光り出す。
葉隠「子供の楽しい夢‥‥。集まった情報のお陰で、反応する脳波が特定できたようじゃな」
田島「えらく特殊な周波数分布の電磁波を出してますよ。そう強くはありませんがね」
赤星「それに‥‥なんか見た目、ちょいぶれて見えません? やな感じだな」
田尾「何か我々に知らないものも発生してるんでしょうか?」
田島「記録は取れましたから、止めた方がよさそうですね」(田島スイッチを切る。グラス元にもどる)
赤星「田尾博士。子供たちはやっぱり、"楽しい夢"ってのを見てるんですか?」
田尾「ああ。それもたぶん、ほとんど現実に近いリアルな夢だと思う。脳波に少しアルファ波が混じってるんだよ」
葉隠「覚醒状態に近いのに目覚めないとは、ますます不思議だが、その状態に固定できるとすれば、洗脳には最も都合が良いのでは‥‥」
田尾「ええ。私もそれを考えていました。たぶん次は洗脳のための何かが起るのでは‥‥」
葉隠「竜や、今、状況はどうなっとるんじゃ?」
赤星「特警には、こいつの回収を依頼してます。あと、A6ポイントから半径5Km内で、電磁波走査の密度も上げてます。うまく捕捉できるといいんですけど‥‥」
田島「どちらにしろ、患者を早いところ目覚めさせなきゃならんですな。レム睡眠ばっかりでは脳が参ってしまう‥‥。外部から覚醒時の状態に誘導するとか、できんのですか?」
田尾「ある意味、彼らは彼らの意思で夢にとどまってるわけですから‥‥。固定してるメカニズムもよくわからないし‥‥。いきなりの誘導は危険ですね」
葉隠「うーむ‥‥。子供達の夢にすいーっと入っていって、起こせたらいいんじゃがのう」
田尾「それだっ! それ、できますよ、葉隠博士っ」
赤星「ほんとですか!?」
田尾「ただし‥‥、精神的に相当タフな人間でないと、引き込まれる可能性が‥‥」
葉隠「安心されい。そういう人間なら、うってつけが2名おりますぞ!」
===***===
――国立生命工学研究所の実験棟に救急車。洵が救急車から一緒に降りてくる。迎えに出てくる黄龍と輝。竹本の運転する車から瑠衣と田尾夫人。ストレッチャーで眠っている茂と美雪が運び込まれる。
――実験室。二人の子供に心拍や血圧などの計測端子をつけている洵。二人の間には空いているベッドが二つ。頭の方に複雑そうな機械。田尾博士がそれをセッティング。その脇に不安そうな夫人。
――赤星と黒羽に状況を説明している葉隠。竹本、黄龍、輝、瑠衣、脇で話を聞いている。
葉隠「それで、この機械を使ってこの子達の夢の中に入り、起きるようにし向けるんじゃ。で、その際の脳波変化を記録して、それと同じ形で他の子を誘導して目覚めさせる。脳波を同調させれば君たちも楽しい夢を見ることになるから、気持ちを強く持ってな」
赤星「黒羽、ミイラ取りがミイラになるなよ?」
黒羽(にやりとして)「お前さんのほうがよっぽど危ない」
田尾「赤星さん。これが何かの役に立つかもしれません。持っていって下さい」
――田尾、青い首輪を赤星に渡す。
赤星「これ、カベルネの? でも、持ってくって、どうすれば‥‥?」
田尾「今、この瞬間をよく覚えておいて下さい。思い出しさえすれば、手元にあるはずです」
赤星「な、なるほど‥‥。じゃ、お預かりします」
瑠衣「あっ‥‥あの‥‥博士‥‥‥‥」
葉隠「なんじゃね、瑠衣ちゃん?」
瑠衣「茂くんを起こすの‥‥あたしじゃダメでしょうか?」
葉隠「なんじゃと?」
瑠衣「‥‥黒羽さんのかわりに‥‥あたしが行きたいんです!」
―― 一同驚き。
瑠衣「茂くんが‥‥どんな夢見てるか、あたし‥‥わかるの。きっと、パパとママの夢見てる‥‥。パパとママの夢見てる時、どれだけ幸せで、でも、起きた時‥‥どれだけ悲しいか、あたし、わかるんです。だから、あたしが行きたいの!」
赤星「瑠衣、それって‥‥」
黒羽(遮って)「オレに異存はないぜ、旦那」
赤星「お、おいっ」
黒羽「茂くんのことは、瑠衣ちゃんにおまかせしましょう」
竹本「‥‥なるほどなぁ。夢なら未成年だなんだ、言うヤツはおらんよな、瑠衣ちゃん?」
瑠衣「はい!」
輝「ね、ねえ、瑠衣ちゃん。瑠衣ちゃんがこれから見る夢って、たぶん‥‥‥‥」
瑠衣「大丈夫よ、輝さん。わかってるもん」
赤星「‥‥そこまでわかってんなら‥‥一緒に行くか、瑠衣!」
瑠衣「うん!」
黄龍「瑠衣ちゃんさ。じゃ、俺様も御守りあげちゃおうかな」
瑠衣「え?」
――黄龍、胸ポケットのクリーム色のチーフをするりと出して、瑠衣の左手首に結ぶ。
黄龍「なんか印象に残ることがあった方が、いいみたいだしねー」
瑠衣(チーフに右手をやって)「あ‥‥ありがと‥‥、瑛那さん‥‥」
――思いっきりふくれる輝と、その様子に苦笑して、輝の頭をくしゃくしゃと撫でる黒羽。
――4つのベッドに横たわる4人。美雪、赤星、瑠衣、茂の順。4人の頭部にはケーブルが色々ついている。あと部屋にいるのは、葉隠と洵、そして田尾だけ。
田尾「じゃあ、赤星くん、瑠衣ちゃん。力を抜いて。大きく深呼吸。数を数えながら‥‥。相手の子供のことだけ考えて」
――目を閉じたまま、軽く頷く赤星と瑠衣。眠りに落ちていく。
===***===
――以下、夢のシーンはソフトフォーカス
――どこかの芝生の庭。リクライニング・チェアで寝ている赤星。淡い色のスラックスにポロシャツ姿。女性の手が伸びてきて額にかかる髪をかきあげる。
赤星(目を覚ます)「‥‥あれ‥‥、有望?」
有望「気持ちよさそうだったから、どうしようかと思ったんだけど?」
赤星「‥‥なんで‥‥俺‥‥」(がばっと起き上がって)「そうだ、スパイダル!」
有望「あらあら、また夢見てたのね。全部終わって、もう半年にもなるのに?」
赤星「‥‥‥‥え?」
有望「条約調印の時は、貴方だって出席したでしょ。不可侵条約と技術交流、ぼちぼちだけど人の交流も始まって‥‥。半年経ったけど、全て順調よ。もう何も心配しなくていいの。それより、私、買い物に行ってくるけど、今夜何か食べたいものある?」
赤星「買い物‥‥? 今夜‥‥? なんで、お前が、そんな‥‥」
有望「もう‥‥いつまでふざけてると、怒るわよ!」
――有望、赤星の額を突く。その左手の薬指にマリッジリング。赤星、自分の左手を見ると薬指に同じリングがはまっている。赤星、目を閉じて頭を押さえる。
有望(心配げに)「頭痛? 今週、ちょっと、忙しかったものね‥‥」
赤星「‥‥いや‥‥。‥‥寝ぼけてたんだな、俺‥‥。あ、買い物、一緒に行くよ!」
――赤星立ち上がる。
――公園の中を通り抜けていく二人。青い首輪と赤いリードをつけた大きなキジ猫を抱えて歩いてくる美雪。
赤星「美雪ちゃん‥‥。その子‥‥カベ‥ルネ‥‥?」
美雪「あ、赤星さん! なんかね、ルーちゃん、違うとこお散歩行きたいっていうから!」
有望「あら、猫もこうやってお散歩できるのね」(カベルネ、有望に頭をおしつける)「可愛いわ! 抱いていい?」(頷く美雪。カベルネを抱き上げる有望)
――赤星、ちょっと不思議そうにカベルネの顔を覗き込む。
赤星「確かにカベルネだ。俺、今日、ヘンだな‥‥。にしても相変わらずでっかい頭だなあ、お前!」
――赤星の拳に、ひたすら頭をこすりつけるカベルネ。
声「あーん! 止めて止めて、その子!」
――綱を引きずって走ってくる茶色の子犬。必死で追いかけてくる制服の瑠衣とリードを持った茂。赤星、子犬を捕まえて抱き上げると、いきなり鼻を舐められる。
瑠衣「よかったー、赤星さん!」
茂「お兄さん、ありがと!」(赤星、茂のリードを首輪に繋いでから返すと、子犬をおろす)「わっ こら、コロっ だめだってばっ」
――子犬、カベルネを見つけて近寄ろうとする。カベルネも子犬に近づきたい様子。
有望「この猫、犬、平気なのかしら」
赤星「カベルネ、お前、やっぱり危機管理能力ゼロ猫だな?」
有望(歩いてくる4人の大人に気付いて)「あら、みんなおそろいだったのね」
――桜木夫妻と茂の両親が談笑しながら歩いてくる。赤星、ぎょっとするが、皆ごく自然な感じ。
佐川「茂、言ったろう? 首輪にリードつける時が一番危ないって。うっかりすると事故に遭うよ」
茂「うん、ホントだね。ごめんなさい」
桜木「まったく、瑠衣がついてて‥‥」
瑠衣「ごめんなさい。でも、こんなに力が強くてすばしっこいなんて、思わなかったの」
有望「瑠衣ちゃん、今、学校の帰りなの?」
瑠衣「今日ね、授業参観と三者面談だったの! でもパパもどうしても来るってうるさいから四者面談になっちゃって‥‥」
桜木(瑠衣の頭に手を置いて)「誰がうるさいんだって?」(赤星に向かって)「だんだんママに似て口が達者になってきて困ったもんだよ」
綾(すました作り声で)「あら、私に似て何が困るのかしら?」(桜木苦笑。綾、有望に向かって)「ところで、星加‥‥じゃない、赤星博士、新生活はいかが?」
有望「ええ、おかげさまでなんとか‥‥。私も好きな研究に戻れましたし、平和っていいですよね」
茂「わわわっ コロっ」
――走り回る子犬のリードで、ぐるぐる巻きになった茂。大人達、大笑い。両親がリードをほどきにかかる。幸せそうな情景が続く。
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