★第25話 (15/18)
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金色の光が亜麻色の大きな蜥蜴を包み込む。大きく開いた口から飛び出た断末魔の叫びを包み込むように、その身体が崩壊した。それと同時に‥‥

「うわっ!」
「きゃあっ」
スプリガンの折れた両手首から、ライフル弾のように質量のある弾丸が三色のスーツに向かってぶち込まれる。黄龍は即座にバズーカを引き起こすと即席の弾避けに仕立てた。扱うのに最低3人は必要であろうスターバズーカは砲手を庇護するには充分な質量と大きさを持っている。逆に言えばエネルギーを使い果たした火砲には、金属塊の役割しか残っていなかった。
「ブラスター!」
瑠衣が即、黄龍の手の上に自分のブラスターを載せる。黄龍のブラスターも既にエネルギー切れとなっていた。

スプリガンが意外に思ったことに、連射が途切れた刹那の3発の反撃はこちらをはるかに外れた地面に爆ぜた。パニクってるのかと喉元に浮かんだ嘲笑がすぐに消える。黄龍の通常モードのブラスターは地面に落ちていたアトリスのディメンジョン・ストーンを見事に粉砕していたのだった。これではアトリスを巨大化させることはできない。スプリガンは思わず舌打ちした。

だが黄龍の銃もすぐに沈黙する。援護に戻ってきたホーネットが、捕えた地球人を楯のように引きずっていた。赤星の首には金属の腕が絡みつき、右手は背中に回されている。足はほとんど地面から浮きかけていて、左手でホーネットの腕を掴んでは必死で呼吸を保とうとしている。
「リーダーっ!!」
「レッドっ」
赤星の身体を淡い霞のようなものが覆っているのに気付いた3人は血の気が引く思いがした。見た目はなんとかスーツの形状を保っているものの、リーブグリッドの調整を失ったリーブ粒子がとうとう散じ始めていたのだった。

「ずいぶんと大人しくなったもんだな、ええ? いったい、どうしたね?」
「‥‥この‥‥ヤロ‥‥‥」
背後の敵を蹴ろうとするがもはや子供の抵抗に等しい。あがく地球人を揺さぶってホーネットが楽しそうに笑った。
「まあいい。とにかくオレの腕を飛ばしてくれた礼はしなけりゃな。だろう?」
ロボットはそう言いながら、背中にねじり上げた赤星の右手をゆっくりと押し上げていった。
「うあ‥‥っ!」
肩の軋みに赤星が喚き声をあげた時、空から白い機体が急降下してきた! 

舞い降りてきたオズブルーンは、ホーネットの後方にいたスプリガンめがけてバルカンを掃射した。さしものスプリガンも、そんなものを喰らったらただではすまない。慌てて跳び避けた。ボスの危機にホーネットの腕が思わず緩み、獲物がずり落ちる。その瞬間、パールグレーの顔面に黄龍の放ったシェルモードが炸裂していた。同時に輝が稲妻のように飛びかかっていく。

頭上を飛び越える緑の疾風と入れ替わるように、赤星が地面を転がって離脱した。かけよった瑠衣に手渡されたリーブレスを急いで左腕にはめる。身体を覆う感じが戻ってきて思わず息をついた。
「大丈夫?」
「ああ‥‥」
確認するように右肩を少し動かすと、ざっと立ち上がった。
「よーし、ピンク! あいつも片づけるぞ!」
「うん!」


舞い上がったオズブルーンから視線を戻した時、スプリガンは、よく知っていて、なのに初めての声を聞いた。
「きゃああっ!」
少し離れたところで、少女の身体が輝く刃に貫かれようとしている。スプリガンは反射的に空間を跳んだ。アラクネーを押しやって飛びすさると、指先のマシンガンをぶっぱなす。ブラックリーブスは一瞬伏してそれを避けると、跳ね起きて長剣を構えた。

目の前の黒い姿はやはりどこかヤワに見える。この世界の平均寿命を考えればコイツは自分よりずっとガキのハズだ。なのに、なんてぇ威圧感だ‥‥とスプリガンは思った。
腕甲ごと斬られて血の滲んだ前腕をぎゅっと押さえて少女は震えている。そのわななきが機械の背中から伝わってきた。得意の糸も無い上に、ここまでの気魄で迫られたら呑まれてもムリはない。対峙は魂のやりとり。諜報が主たる任務だったこの少女が、そんなことを体験する時間などなかったろう。

「フン。お前さんが来ようが来まいが、オレの勝ちだな」
低い声でそう言う黒ずくめの全身からにじみ出すオーラは、不思議と猛った感じはしない。だが来るのが少し遅れたらアラクネーは確実に死んだろう。いったいどこで戦闘機から飛び降りたのか。冷徹な判断で最も弱いところを突いてきた。あちらではホーネットと4人が、すっかりと"いい勝負"になってしまっている。仲間を援護するために、その側に駆け寄るよりも遥かに効果的で攻撃的な手段で、こちらの注意を引きつけて‥‥。

‥‥‥‥くそったれ。オレの方が、こいつの思惑通りに動いちまったってか? 

「やってくれるぜ‥‥。このメカニックもどきが‥‥」
スプリガンのちょっぴり悔しそうな声音に、黒羽はぴんと揃えた左手の人差し指と中指を、左右に振ってみせた。
「『"また"やってくれた』だ。言葉は正しく使うんだな」
「ちっ‥‥。ほざけ」
スプリガンがぼそりと呟くと、いきなりがなりたてた。
「ホーネット! こいつらみんな殺っちまえ!」
右前腕に仕込まれている瞬間移動装置の座標を基地に合わせると、手を後ろに回してアラクネーの細い腕を掴む。その空間から消えながら、スプリガンは陽動もここまでだなと思った。


黒羽が駆け戻った時、既にホーネットの片翼は破壊されていた。
「ブラック!」
呼びかける赤星の声には心底の安堵がある。
「みんな、遅れてすまなかった!」
「ったくだぜー!」
赤星の向こうから黄龍がいつもの調子で答える。その先、ちょっと離れたところにいる輝が、あまり似合わない敬礼もどきを送ってよこした。隣にいる瑠衣は小首をかしげて、くるりとスティックを回してみせる。赤星が正面にいるパールグレーの塊を見据えた。
「もうバズーカは使えねえ。ドラゴンアタックで片づける!」
「了解!」
ホーネットを中心にした円周上に半円に近い形に位置づけた5人の声がぴったりと重なった。
「ドラゴン・アタック!」

意思ある戦闘機ホーネットは5人の手の中に大きなエネルギーが生じるのを驚愕の目で見た。だが、モンスター軍団の怪人を生かすという自分の任務が失敗した今、汚名はなんとしてもそそぎたかった。彼は中央の赤いボディに向かって走った。この手で握りつぶせたはずの命だった。

その命から一足早く光の球が放たれた。胴体の中央に温かい圧力が生じた。身体が後ろに引かれる感じで足が地面を引きずる。重心を保たねばと思った時、左右からまったく同じ熱が押し寄せてきた。

パールグレイの金属の塊はくしゅくしゅと溶けて気化した。
ほとんど同時にほうっと息を吐いた戦士達を讃えるように、桜色の花吹雪が散った。

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