★第25話 (4/18)
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吐き出すように喚き始めたゴリアントを、ブラックインパルスが遮る。
「やめよ、ゴリアント。各自が自分の任務に注力して協力し合えば、ここまで侵攻が遅れることはなかったろう。お前には再生怪人の育成という画期的な役割があるではないか。次元回廊が開通したら、今作っている5体の怪人を全て送り込んでもらうつもりだ」

「再生怪人ですと? その上5体とは‥‥?」
今度はシェロプが不思議そうに言う。製造するのに時間がかかる怪人を、ゴリアントが一挙に5体も準備できるなど、考えられないことだった。そのうえ、再生だと‥‥? 
ゴリアントが得意そうに背伸びをしてシェロプを見上げた。
「へっへっへっ、お前んとこの負け犬クワンガーもオレっちがまともに作り直してやるぜ」
「クワンガー‥‥? マルキクワンガーのことか! 司令官、これはどういうことです!?」

「ゴリアントがゴルリンと呼ばれる人工生命体の開発に成功したのだ。ゴルリンはそれだけでは、力があるだけの戦闘生物だが、怪人の細胞を埋め込むとそれを培養して怪人の外見と能力を得る。すでに倒したと考えている怪人達が現れれば、それだけでも敵を混乱させることができるだろう」

「お待ち下さい! 誇り高き暗黒怪魔人マルキクワンガーを、たといその姿を映しただけとしても、こやつらのようなモンスターといっしょくたに扱うなど、私には承伏できません!」

「シェロプ! その言葉、スパイダル全軍の最高司令であるべき四天王のものとも思えん! 今、我々が為すべきことはいったい何か! 皇帝陛下は何をお望みと心得る!?」
ブラックインパルスの鞭のような言葉にシェロプはぐっと詰まった。皇帝の名前を出されては、反論しにくい。それに‥‥今は‥‥‥‥。

シェロプは面を伏せた。
「申し訳ありません。この重要な局面に浅薄なことを申しました。私とて、何をおいても皇帝陛下の御為にと、それだけを考えております」
黒い兜が満足そうに頷く。シェロプはゴリアントに向かっても軽く頭を下げた。
「突然だったので驚いた。考えてみれば、あの能力がまた生かされるなら喜ぶべきことだな。私も楽しみにさせてもらう」
ゴリアントはでかいものを丸呑みした時のように、赤い目をぱちくりさせて胸を叩いた。

ブラックインパルスが一転穏やかな声で命令を下した。
「もうしばらくすると、再び次元回廊が開く。私はアトリスを連れて地上に降りる。ゴリアント、再生怪人の製造を頼むぞ」
「へい!」
「シェロプ。私の留守の間ラボの管理を任せる。地上での準備ができ次第、回廊を開く。こちらの指揮をとってくれ」
「はっ」

シェロプは右手を胸に当てて敬礼しながら、内心してやったりとほくそ笑んだ。ブラックインパルスは、皇帝の名の前には、全ての者が他意を捨て去り、滅私奉公すると考える愚か者だった。自分だとて、暗黒次元の全てを司る皇帝Wの為には身を惜しまず働く。だがそれは名声が伴ってこそだ。

次元回廊の設営法。それこそ、ファントマ新参謀が最も知りたがっていた情報だった。


===***===

「ひょー!! べっぴんなねーちゃんだーな!」
なんとか機能するまでこぎつけた新しい前線基地に、だみ声が響いた。ブラックインパルスと共に初めて三次元に来たアトリスは、アラクネーを見たとたん、そうのたまったのだった。

「こんなねーちゃんが、役に立ってるのかぁ?」
全身亜麻色で妙に大きな頭がどこか滑稽な感じではあったが、いつもの長衣を脱ぎ捨てて基地の準備のためにスプリガンを手伝っていた痩身は、とんでもない挨拶に思わず固まってしまった。
「き、貴様‥‥」

「こーんな細っこいカラダで、ホントに役に立って‥‥」
「触るな、無礼者!」
アラクネーの篭手からひゅんと糸が放たれる。しかしそれが太い首に巻き付く寸前に、長い舌が糸を受けとめると、べろりと巻き取って食べてしまった。

「ハハハ‥‥! こりゃ、なかなか! おもしれーヤツじゃねえか!」
いつも物事に動じない少女が思わず身を引いたのを見て、スプリガンは笑いをこらえきれなくなった。
「笑うな、スプリガン!」
いきり立つアラクネーの脇で、アトリスはげへへ‥‥と声をあげた。口がにぃっと耳に向かって裂けて白い短めの牙が覗く。笑っている‥‥ようだった。

ブラックインパルスの黒い手袋がしばし目庇のあたりを押さえた。ゴリアントの部下はまったくもって種々雑多だ。この若い四天王達が、自分の部隊以外の者を使うのは初めてだが、今はアラクネー以外に、アトリスと動ける者はいなかった。

「アラクネー。それにアトリス」
「はっ」
「はいな、親分!」
帝国参謀への返事としては気さくすぎるその言い方に、アラクネーがまた目をむいたが、ブラックインパルスは目顔で気にするなと示した。
「お前達は、次元回廊が開くまで、オズリーブスを引きつける囮になってもらいたい。アトリスは必ずあの連中を釘付けにするはずだ。アラクネー、うまくフォローしてやってくれ」

アラクネーの返事が一呼吸遅れたすきに、アトリスが大声で喚いていた。
「おう! じゃあ、ねーちゃん、よろしくな!」



少しおかんむりだったアラクネーにも、アトリスの能力は恐ろしく聞こえた。言葉遣いの下品さにはまいったが、本質的には協力的なこの怪人を連れて、アラクネーは夜の闇を翔んだ。

とっぷりと暗くなった都会のビルの屋上から、いったい何が飛散していったか、知っているのは異界の4人だけだった。

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