★第26話 (4/20)
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「しかし、笹木さん、すぐにスパイダルの名前がでてくるなんて、もしかして、覆面の警察担当カメラマンとかなんですか?」
「ばか。そんなのあるか。ただ、ここんとこずっとオズリーブスを追っかけてるからスパイダルのこともなんとなくな‥‥」
「へえ! なんだってまたスポーツカメラマンの笹木さんが、オズリーブスなんです?」
「OZの研究所が爆発した時にたまたま近くにいて、レッドとブラックをスクープしたんだよ。まあ、最初はでっち上げだなんて言われもしたが、ここ半年であいつらもすっかり有名人で、オレの株も急上昇。なんせ今、オズリーブス関係は旬なんだよ。高い値もつくしな」
鞍田の顔が子供のように好奇心旺盛な感じになった。
「じゃ、じゃあ、笹木さん、彼等の正体とか知ってんすか? やっぱあれ、警察なんですよね?」
「残念だが正体は知らん。それはぜひモノにしたいネタさ。ただ、オレの撮ったビデオ見たダチは、ナカミは素人だって断言してたぜ。女だてらになんとか拳とかやってる奴なんだけどな。まあ、もともとレスキュー用のプロトタイプスーツって話だし、いろんな事情があんだろ。だけど、オレにとっちゃ、どうでもいいのさ、そんなこと」
「え?」
笹木が上方の窓を見やってちょっと眩しそうに目を細めると、前方に視線を戻す。その瞳がきらきらと光を帯びた。
「ファインダーってのは不思議なもんでな。実物よりむしろ真実が見えることがあんだよ。傍目には追い込まれてそうに見える奴が、実はぜんぜん余裕で勝利を確信してることもあればその逆もある。それが面白くてオレはスポーツカメラマンになったんだけどな」
「はあ‥‥」
「オズリーブスが‥‥あいつらが、どれだけ必死にやってるのか、見えた気がしたんだ。遠目だとなんか映画チックに見えちまうのに、逆にファインダーで切り取ったあいつらは人間なんだ。俺達と同じ人間なんだって実感できる。それが化け物と必死に戦ってるんだぜ? だから、すげえなって‥‥。この感覚、なかなか印画紙にまで、写しきれねえんだがな‥‥」
つい熱弁をふるってしまったことに照れたように、笹木がいきなり黙った。目を丸くして話を聞いていた鞍田がにっこりと笑った。
「きっと‥‥‥、すぐ、助けにきてくれますね、オズリーブス」
「え?」
「だって今んとこ、事件、全部解決してくれてますもん。だから、早くこっちの居場所を知らせましょう」
「そうだな。じゃ、ちょっと外の様子を確認してみるか」
二人の男は疲れを忘れたように、勢いよく立ち上がった。
===***===
下校した瑠衣は自室で着替えるとすぐに地下に降りた。今日は「森の小路」は休業日‥‥というかここ半月は、皆店のことに係わっている余裕がなく、喫茶店が開いているのは赤星の義姉の茜が来られる時だけという状況であった。
コントロールルームの丸い作戦テーブルには、葉隠と有望を含めて7人が揃っていた。最初に赤星が特警でのミーティングの結果を報告する。パリ本部での対アセロポッド溶解液を警察の装備に組み込んでもらえそうなこと。電話会社のデータ収集が特警にて行われること‥‥。
「あと、カナリアも2羽、渡してきました」
赤星の言葉に瑠衣が目をぱちくりする。
「カナリアって?」
「これじゃよ」
葉隠が紙箱を取り出した。中から出てきたのは翼を閉じた小鳥のロボット3羽だ。
「電子装置が使えなくなる空間って、どこから始まってるかわからないでしょう? 先にこれを飛ばして安全かどうかをテストするための、リモコンのロボットなのよ」
有望が瑠衣に説明する間に、1羽を手にとってしみじみと眺めた輝が呟いた。
「‥‥でも、これ、使ったら壊れちゃうの? 可哀想だなぁ‥‥」
「だからの、ちゃんと回収してきてほしいんじゃよ、輝君」
葉隠が輝の手から黄色いロボットを受け取りながら言った。
「この子たちには電磁波の状態を記録する機能も付いておるんじゃ。小さいから記録時間は短いがの。ただ、電子機器が使えなくなる寸前の状態が記録できれば、きっと役に立つはずなんじゃ‥‥」
「寄生虫事件が日曜日。翌日には次元回廊が閉じた。で、火曜日の早朝と水曜日の夜に新型が出て、アラクネーが目撃されてる‥‥」
赤星の確認するような呟きに黄龍が訊ね返した。
「でもよ〜、今までアラクネーだけは次元回廊と関係なく登場してなかったっけ? あとの幹部とか怪人は、みんな次元回廊が開いている時だけだったけどさ」
「確かにな。でもなんか、アラクネーのやってることって陽動っぽいって、みんなもそう思うだろ?」
皆の肯定を代弁するように黒羽が言う。
「どこかに例の空間で覆われた基地が作られていて、そこで何かを企んでる‥‥」
「その可能性は高いよな。できれば基地の外で勝負したいとこだけど、例の空間内で戦うハメになったら、とにかくジェネレーターをぶっ壊すのを優先しよう。プロテクトモードじゃ負担かかるし、だいたい通用するかどうかもわからないから」
「スターバズーカもパワーアップは済んでるけど、バズーカ自体にプロテクトモードを持たせることはムリだったのよ。低周波音波に晒すとリーブ粒子を高準位に保てなくなるの。だからその特殊空間を消滅させないと、バズーカや、シェルモードも使えないと‥‥」
有望の説明がサルファの声で遮られた。
「東京管区気象台カラ同報連絡。M島測候所カラノ定時でーた送信ガ不着。コチラカラノ連絡モ不可能ダソウデス」
「え?」
Y山が活発化しているとは聞いていたが、いきなり噴火するような状況ではなかったはずだった。有望がメールに送られてきた気象台からの送信内容をチェックした。
「直前の状況から噴火や地震ではないという判断よ。たぶん通信トラブルと思われるって」
「なんか‥‥やな感じ‥‥」
瑠衣のささやきにかぶって警察回線がコールした。
「はい! オズベース!」
「特警の西条だ。M島の電話回線中継がいきなりいかれたらしい。周辺四島の電話が、全て不通になっている」
「測候所のデータ送信がいかれたのはそのセイだったんですね」
「もう一つ。M島に観測飛行に飛んだ気象庁のヘリからの連絡が途絶えているそうだ。ヘリが中継設備に突っ込んで全部をめちゃくちゃにしてくれた可能性もあるが、ヘリからのSOSがまったく無かったのが気になる」
「‥‥スパイダルの空間に巻き込まれたと‥‥‥‥?」
「今、第三管区海上保安本部の協力を要請中だ。だがもし例の空間のせいだとすると、巡視艇では中に入れない。一応、電子装備のないシンプルなモーターボートを準備してもらっている」
「わかりました。アプローチ決めてすぐ折り返し連絡します」
「島か‥‥。考えやがったな‥‥」
黒羽がぼそりと言った。
これから起こるかもしれない修羅場に、妙に適切な舞台だと、人ごとのように思った。
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