★第27話 (1/20)
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離島の山麓で、リーブロボは確実に追いつめられつつあった。

新たに三次元侵攻の司令官に就いた参謀ファントマは、参謀ブラックインパルスを陥れ、その体内で特殊バイオアーマー、デュプリックを育成した。成長過程でディメンジョンストーンを双極子化されたデュプリックは、伊豆沖の海域を次元の歪みに沈め、暗黒次元と三次元を直接に結合する能力を持っていた。オズリーブスはかろうじてデュプリックを倒しその陰謀を阻止したが、そのためにリーブレスの最後のエネルギーまで使い切ってしまった。

だがファントマはディメンジョンストーン制御光線の改良をもやってのけていた。ファントマの持つ新しい制御装置により、怪人はただ巨大化するだけでなく二体となって再構築されるのだった。かつて倒した怪人スピンドルを模したスパイダルの戦闘用疑似生命体スピンドル・ゴルリンが、まったく同型の二つの巨獣となってリーブロボに襲いかかる。オズリーブスの5人は着装もできず、体力的にも消耗しきった状態で、2対1のロボット戦を強いられていた。


一体のスピンドルに向かって龍球剣を振り下ろそうとするリーブロボの右肘を、もう一体のスピンドルの右手が掴んだ。それがそのまま手ごと爆発する。スピンドルの手先は吹っ飛んだが、ロボットの右上腕も剣を握りしめたままがしゃりと地面に落ちた。
衝撃にぐらりと傾いたリーブロボが、片膝をつきながらも左手で己の右手首を掴み、その剣を振り回すようにして前面から迫る怪物を薙いだ。スピンドルの胸部にある発光体が切り裂かれるが、それ以上のダメージは与えられない。巨体はすでに後退していた。

肘先を失った右腕は背後の怪人に向かって突き出されていた。リーブクラッシュのために流れ込んでいたエネルギー流が、まるで血潮のように傷口から噴き出す。それが手先の無いスピンドルの右腕を焼き溶かした。しかしスピンドルも体内で集約した太陽光を発して反撃する。そのエネルギーを食らったリーブロボが大きく仰け反った。

「出力70%低下!」
瑠衣の半分悲鳴のような声がコックピットに響く。
「腕の第二系統がオシャカだ。フォローできんぞ!」
ほとんど同時に黒羽が怒鳴った。
「なんとか‥‥片割れだけでも!」
そうがなり返した赤星がスティックを引き絞る。リーブロボは前方のスピンドルに向かって踏み込んだ。だらりと下げた左腕は、自らの右手先もろとも龍球剣を握りしめている。

十中八九勝ち目は無いだろう。だが、このままこいつらを放って逃げて、この島が廃墟にならない保証もない。せめて一体は倒したかった。

スピンドルが投げつけてくるガラス玉が体表面で爆発するのもかまわず、リーブロボは前傾ぎみに突っ込んだ。ロボットの左手首がぐるりと回転し、龍球剣が敵に向かって突き出される。もはやエネルギーの伝導は不可能だが、剣としては使えた。リーブロボは左肩から体当たりしてスピンドルを押し倒し、龍球剣で巨体を大地に串刺しに縫い止めた。

だが、その背中で激しい衝撃が起こる。隻腕のスピンドルがウィーヴィング・グラスを鋼鉄のボディめがけてぶちまけたのだ。リーブロボは仰臥したスピンドルに折り重なるように倒れた。下にいるスピンドルが足掻きながら蹴り上げてきて、リーブロボがごろりと横に転がされる。その左肩連結部に、もう一体のスピンドルから放たれた極めて収束した反射ビームが飛び込んだ。

「うわ‥‥」
「きゃっ‥‥」
輝と瑠衣が叫びを呑み込み歯を噛みしめた。はっきり言ってシェイカーの内部にいるも同然だ。めちゃくちゃな方向に強いGがかかるたび、春先の身軽な服装の上からシートベルトが食い込んでくる。
「このヤロッ!」
激しい揺れの中でパネルに半分しがみつきながら黄龍がロボットの右足を上げた。足裏からジャンプ用の補助ジェットを噴き出して、上から襲いかかってきたスピンドルを牽制する。

ロボットの腹部はランドドラゴンの下部にあたる。ランドドラゴン単体の時とロボットが直立している時で、コックピット全体が90度回転して内部の人間の姿勢を保つ。仰け反った時のためにもう30度までは傾いてくれるのだが、ここまでひっくり返されると対応しきれない。今、コックピットは鉛直方向に対して急な角度で仰向けた状況になっていて、操縦しにくいことおびただしかった。
「左手も‥‥っ ダメだっ 起き上がれねぇ!」
「ランド、しっかりしろ!!」

「オズブルーンがくるよっ!?」
仰向けたリーブロボの足の方から飛来する白い機影に輝が気づいた。
「来るんじゃない!」
黒羽がリーブレスに向かって吠えた。オズブルーンがいれば、最悪、島を脱出することができる。ある意味オズブルーンは命綱とも言えた。

しかしオズブルーンは雛鳥を守ろうとするツバメのようにスピンドルの頭部に突っ込んでくる。怪物の直前で鮮やかに急旋回しながらバルカンを掃射した。スピンドルが数歩下がりながら反射ビームを放つ
「上昇だ!」
オズブルーンが黒羽の指示通り高度を上げて敵の攻撃を避ける。だが、今度はいきなり倒れたスピンドルの方から反射光の柱が上がった。
「オズブルーン!!」

右主翼の先端から煙を上げながら、オズブルーンがモニターからアウトしていく。一方、地面の上でもがいていたスピンドルはそれきり動かなくなった。最期のあがきだったのだろう。もろもろとその姿が淡くなっていく。巨大な身体がそんな風に消えていくのは、どこかズレた恐怖感があった。

残ったスピンドルが、兄弟が消えた大地にただ突き立っている龍球剣を掴む。リーブロボは足を回して牽制しようとするが、巨大な怪人は易々と剣を抜き上げ、それを無造作に振り下ろした。
「ラガー!」
ロボの両足周辺をカバーする補助モニターからの映像に輝が息を呑んだ。リーブロボの左足の膝のあたりから大腿部にかけてが縦に捻り割れ、バチバチといやな火花を散らせている。
「ラガーの動力系が遮‥‥!!」

その時だった。いきなりバチンという音がした。5人が叫び声をあげて左手首を押さえる。各人のリーブレスとパネルを繋いでいるケーブルが焼け飛んでいた。
「う、うそ‥‥?」
瑠衣の前のリーブエネルギーの状況モニターが、まるで潮が満ちるように赤く染まっていく。
「合体シフト、解除!」
赤星がコードを打ち込みレバーを強く押し込んだ。どこかショートしてリーブエネルギーが逆流してるのか? 合体してる限り操縦するにはリーブレスが必要だ。なんとか動きだけでも確保しなければと赤星は思った。だが‥‥

「‥‥解除不能だ。輝、ハッチの外、どうなってる?」
メインカメラはすこし右に傾いて空を見上げたまま動かなくなってしまっていた。モニターにはただ抜けるような青空の映像があるだけだ。スピンドルが近寄ってくれば境界あたりに映り込むのだが、少し距離を取られるともう見えない。輝が沢山のモニターを見上げてレバーを操作しながら答えた。
「カメラ動かなくてわかんないよ。でもどのモニターにも映ってないってことは‥‥」

「ヤバイかもってか?」
そう言いながら黄龍が斜めになったコックピットの中を少し下りて、出入り口に近づいた。外から見るとロボットの左腋下あたりになる。
二重ハッチの内側をどうにかスライドさせ、外ハッチにある隙間のような覗き窓から外を見る。が、すぐにぱっと離れ、内側のハッチを戻した。とたんにロボットの左側面で何かが爆発し、黄龍は衝撃で計器の中に叩き付けられた。
「‥‥あんのやろ! いくつビー玉持ってんだよ!」
頭を振った黄龍が悪態をつく。続いて、ずん‥‥という振動とがしゅんという金属音が響き渡った。モニターの端で龍球剣が踊っている。リーブロボの腹部のあたりを突き刺しているようだ。

「とにかく隙を見て脱出しよう。慌てず急げ」
赤星がちょっとした揺れの合間に急いでそう言った。焦って聞こえないように気をつけたつもりだが自信はなかった。さっきのショックでリーブレスが使えなくなっている。リーブロボの動力を生み出すリーブ動力炉――リーブトロンが、リーブグリットのコントロールを離れた今、いったい何が起こるのかわからなかった。

赤星が黒羽に向かってちょっとだけ顎をしゃくった。黒羽がすぐにシートから離れてハッチに取り付く。先鋒としんがり。無言の分担だ。輝がモニターを見ながら瑠衣の手を引き、ハッチの方に押し上げる。黄龍が少女を引っ張り上げる。
いやな金属音も振動もよりひどくなっていたが、5人の耳にはそれらは妙にくぐもった音となっていた。むしろ自分の心臓の音と仲間の息づかいの方がよく聞こえた。

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