★第3話 (1/6)
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「とにかく作戦の練り直しだな」
「どうする、赤星?他に似た体格の奴を捜すか?」
「いや・・・・・・あのくらいの体格の人間は、他を捜しても少なそうだし・・・・・・仮に見つかったとしても満足に戦えるかどうかわからないだろ?その点あいつなら射撃の腕だけでも充分買える。・・・・・・けど、本当に大丈夫なのか、あいつ・・・・・・?あの分じゃもし仲間になったとしても・・・・・・」
「心配しなさんな。この俺が紹介したんだぜ?これでも人を見る目はあるつもりですよ」
「・・・・・・」

 不安げな赤星だったが、黒羽は取り合おうとしなかった。先立って路地を出る。黒羽はそこで意外な人物を見た。
「おやっさん!?」
「・・・・・・健?健じゃないか!こんな所で何してるんだい?」
 佐原も意外という面持ちでこちらを見る。
「おやっさんこそ!」
「私はこれから依頼先の下見に行くんですよ。黄龍君はどうしたんだい?君が彼を連れて行ってしまったお陰で私が先方に出向かなければならなくなってしまったよ」
「いやあ・・・・・・逃げられちまいましたよ」
 苦笑する黒羽に佐原は「そうかそうか」と悪戯っぽく笑う。小さな子供が面白い悪戯を思い付いたようなその笑みが、彼には何故か不思議に似合った。佐原は突然、黒羽の手をしっかと掴み宣言した。
「丁度いい・・・・・・たまにはこっちを手伝って貰うよ!」



 とっとと仕事に戻らなければならない。危険な仕事を扱うことの多い佐原探偵事務所では只でさえ自分に出来る仕事は多くないのである。
 黄龍はふと立ち止まった。書類にあった下見の場所はこのすぐ近くだった事を思い出したのだ。
「行ってみっか〜・・・・・・最も、もう所長が行っちゃってるかもしんないけど」
 進路を変えようとして眼に飛び込んで来たのは一台の車だった。
「・・・・・・!?」
 思わず足を止める。その車に、黄龍は見覚えがあった。あの車は確か・・・・・・。
 車は角を曲がって消えた。黄龍は猛然とダッシュした。幸い、依頼先はここからそう遠くない筈だった。



「・・・・・・ご店主、いい加減折れては頂けませんか?他の店はみんな、土地の売却を容認しました。この店だけ頑固に拒否していても仕方ないでしょう」
「何が仕方ないものか!!」
 小さな骨董品店に一喝が響いた。驚いたことに、古い商店街の隅々にまで通るその一喝はしわくちゃの小さな老人が発したものだった。相手が屈強な男達を連れていてもひるみもしない。
「どうせその契約書も、貴様等が脅して書かせたものだろう!」
「おいおい、人聞きの悪い事言うんじゃねえよ」
 黒服にサングラスという、何ともワンパターンな後ろの男達四人のうち、一人が口を出す。彼等を引き連れている背広の男がすっと腕を上げると、男は押し黙った。

「事実だろうが!この商店街の者は誰一人として貴様等を心良く思っておらんぞ!」
 杖を突き小さな椅子に腰掛けた老人が、枯れ枝のような腕を差し出し指差す。その人差し指は目の前の男達を経由し、最後に出入り口の扉を指し示した。
「さっさと出て行け!答えは変わらん。儂の店が最後の砦だ。陥とせるものならばやってみるがいい!」
「頑固爺が・・・・・・」
 言いながら、背広の男のにやにやとした表情は変わらなかった。
「ところで、この辺にも最近何処ぞの暴力団が出没し始めたそうですな。聞けばお宅にもお孫さんが居るとか。気をつけた方が宜しいのではないですかな?」
「・・・・・・!!貴様等!?」
 老人が眼を見開き立ち上がった。椅子が大きな音を立てて倒れる。
「やはり貴様等だったのか!!七瀬のところに何をした!?言え!!」
「ああ、七瀬陶器店のことですか・・・・・・そう言えばあそこからもごく最近、承諾書にサインを頂きましたな。いいえ、我々は何もしておりませんよ?やったとしたらその暴力団でしょうな・・・・・・!」

「貴様等・・・・・・!!」
 老人はかっとその眼を見開いた。
「葵に手を出したら赦さんぞ!!」
「・・・・・・お爺ちゃん・・・・・・?どうしたの?」
 会話を聞きつけ、店の奥から一人の少女が顔を出す。制服から見るに、どうやら高校生のようだった。帰ってきたばかりらしく鞄を手にしたままだ。
「葵!呼んでなどおらん!さっさと部屋に戻っておれ!」
 男達を見て顔を強張らせる少女に目もくれず、背広の男はもう用は無いとばかりに立ち上がった。
「言っておきますがね、我々の後ろにはあの黄龍コンツェルンが控えているんですぞ・・・・・・金なら充分お支払いいたします。どうぞご再考下さい・・・・・・明日、また来させていただきますよ」
「悪党共め・・・・・・!!」
 呪い殺さんばかりにこちらを睨み付ける老人を鼻で笑って、背広の男は身を翻した。その後ろに黒服の男達が続いていく。
「お爺ちゃん・・・・・・」
 不安げに声を掛けてくる孫娘に答える余裕は無く、老人は憤慨した表情で椅子を正した。
その時、外で何かを殴る音と、何かが倒れ伏す音がした。

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