★第31話 (4/9)
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ある所からふっと、ヤツらの動きが良くなったのを、オレは不思議に思った。何か連絡を取り合ったようだが、クィンテットには共通の弱点なんぞ無い。
動きが良くなったのは守りから攻めに変わったからだ。だがその方向転換、勝算がある時でなきゃ意味がねえ。肉を切らせて、つーのは骨を断つ決め手があればこそだろ? そのうちグリーンリーブス以外の4人まで、つらつらとヴィンテットにちょっかいを出し始めた。わかんねえ、何考えてやがる。

おかげでヴィンテットのヤツは動きがおかしくなっちまった。作業アンドロイドはフェイルセーフがきかねーからな。イエローリーブスがぶち込んだエネルギーディスクのタイミングも良すぎた。それで十分だろうに、グリーンリーブスの坊主は例の武器でそれを吹き飛ばした。そう。オズリーブスが着ているスーツはある種のエネルギーでできているようで、それを実体化させて戦闘モードになったり解除して武器にしたりできるらしいのさ。

坊主の後ろの構造物から、大小合わせて何人かの3次元人が逃げて行き、坊主がなぜそんなマネをしたか少し分かった。要は非戦闘員のそいつらに被害が及ぶのを食い止めたかったんだろう。
だが。
戦場のど真ん中で、そのひ弱な身体晒すたぁ何考えてるんだか。まあ、いい。後悔ってのは大抵が遅すぎるんだよ。よほどのラッキーディじゃない限りはな。

オレは剣の柄を握り直した。今日はこいつを持ってきたい気分だったんだ。
そして、よそ見してる坊主の前に飛んだ。

へたり込んだ坊主はオレの切っ先に目をまん丸くしていた。あの剣には遠く及ばないが探し回ったお気に入りの鍛裂だってのに、残念ながら刃に感心してくれてるわけじゃなさそうだ。
純粋な驚き。虚を付かれたことを取り繕いもしない。これじゃ素人のガキだぜ、ったく。買いかぶりか。これがホントに、オレに向かって「勝負しろ」と言ったアイツか。

「これで終わりだな、グリーンリーブス。お前の負けだ」
そう言った途端、坊主の瞳の色が変わった。大きくはないのに妙に通る声が返ってきた。
「負けじゃない。オレ、もう勝ったよ」
「ヴィンテットをやったからかね。元はただの工事用だからな。あの出来損ない……」

坊主の顔つきが驚くほど変わった。血の気が引いて白さを増した顔の造作は人形の様。でかい瞳がぎらりと光を弾いた。
「お前…。そうやって、マリオネもトナカンダーも………」
真一文字に結んだ唇から押し出された言葉は、怒りで震えている。面白え。一挙に男の顔つきになりやがった。まるで戦闘モードに変化した時みたいにな。
「殺し合いたきゃ自分でやれよ! 何も知らないロボットを巻き込むな!」
一瞬耳を疑って、次に爆笑しそうになった。作ったオレが名前も忘れかけた奴らを、こいつは哀れんでるってか。自分が殺されようって時にこれか。

だがアタマに来ることに、坊主の顔が"ホンモノ"だってことはオレにも判ってた。判んだよ、そういうことは。だがなぜそんなことの為にこんな顔つきになれるのか、それが、判らねえ……。
「まあ、いい。お前はガキどもを庇った。それで死ぬ。お前の負けだ」

「そうかも、しんない。でも、負けじゃない。オレはあの子たちを、守りたくて、そうできたから」
坊主の呼吸が少し荒くなっていた。やっと少し、状況が見えてきたらしい。
「だからいいってか。バカか。死んだら終わりだろう」
「……死ぬとも、決まってないよ…………」

見た目ひょろひょろのガキが強がりやがって。この目が……、何かを思い出させて……。

オレは無造作に剣を振り下ろした。相手が丸腰なことがちょっとだけ引っかかってたのは認める。だがその動きは予想以上に身軽だった。アタマを叩き割ろうとした切っ先が地面にめり込んだ時、既に坊主は半回転していた。オレの手首を靴裏で蹴りとばし、オレの脚の間をすり抜けて背中側に逃げる。

「この……っ」
振り向きざま、オレは狙いも付けずに指先のマシンガンをぶっ放した。だがそれは坊主に到達する前に赤い盾で遮られた。
「させるかよっ」
「てめえ、レッドリーブス!」
坊主の前に仁王立ちになったレッドリーブスを見て、いつか壊された右のレンズが熱くなった。黒騎士を殺したのがオズリーブスだってなら、それはこいつがやったってぇことだ。

「リーダー!!」
警告の声は間に合わねえさ。飛び込んできたセロテットがレッドリーブスを背中から羽交い締めにする。
「しっかり押さえとけ、セロテット!」
「リーダーっ」
「来るな! 離れろ、グリーンッ」

その首、今、叩っ切ってやる! オレはレッドリーブスに向かって大股で踏み出し、そこで気づいた。足が動かねえ……?
「不発だったね。ざんねーん!」
小僧の澄んで通る声を聞きながら、オレは右足首の関節部に深く突き刺さったヴィンテットの残骸を抜き取る。擦り抜けざま、こんなことやりやがって。ったくすばしっこい小僧だぜ。小僧はレッドリーブスから少し離れ、オレ向かってまっすぐ立ってる。小さい身体をちょっとでも大きく見せようってのか、手足をぐっと伸ばして……。

「グリーンリーブス! 褒めてやるぜ!」
オレは思わずがなってた。
そうだ、褒めてやる。褒美にこの刃で沈みな!

生身の小僧なんぞほっときゃ良かったのに、つい気持ちを奪われすぎた。オレの重心がグリーンリーブスに向かって移動し始めた時……

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