★第31話 (5/9)
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「…こん、やろーっ!!」
聞こえてきたのは獣の吠え声だった。向き直ったオレのレンズが宙を飛んでくる赤色で一杯になる。
「ばっ………!」
言い終わらないうちに、情けねえ。セロテットのボディにのしかかられて転がった。クソ重いボディを押しのけた所にレッドリーブスの剣が振ってきたのではね返した。力不足だな。弾かれたレッドリーブスは肩で息をしつつ、それでもグリーンの小僧の前に陣取った。

ちょっと呆れた。過去のデータ、何をどう合わせても、セロテットの質量を投げつける力があるわけがねえ。だがこいつはそれをやった……。

「おい、起き……」
セロテットを蹴っ飛ばそうとして、オレはまた悪態をつくハメになった。足首がうまく動かねえ。ハラの立つことに、わずかな動きの違和感をヤツはしっかり見つけやがる。レッドリーブスの脇から半身を覗かせたその姿は、ガキのようにヤワで小さく、だのに妙に目立った。

「足、ダメなんだろ、スプリガンっ」
「てめーら倒すのに、この程度、どーってことねえ!」
「じゃあなんで最初から出て来ないんだ! ロボット造って戦わせて、ゲームのつもりなのっ? 良くないよっ」

この、ガキ……。

オレは右足を少し上げ、叩きつけるように地面を踏み込んだ。不具合を起こした足首の連結部をめり込ませて壊す。ヘタにがくがくされるより、ノイズレベルが一定になってやりやすい。
グリーンリーブスに向かって突っ込んだ。レッドリーブスが何か喚き、例によっていいタイミングで懐に飛び込んで来た。腹にかつんと銃口があたる。とっさに奴の手を掴んで逸らしつつ引き寄せつつ、そのボディにマシンガンをぶち込んでやった。

奴らのエネルギー弾はカタマルとけっこう威力がある。脇腹の第2装甲までが抉られちまった。だが動くにはどうってことはねえ。小僧はまるで風みたいに走ってく。
そっちに向って振り上げた腕に、今度は鮮やかな色の帯が巻き付いた。見ればピンクリーブスがすぐそばまで来ていた。必死で帯を引っ張ってるが、ちょっと腕に力を入れただけでチビさんの体勢は崩れる。持ち手を離れたロッドがオレの頭にからんと当たった。

「ブラック・チェリー!」
「ストーム・シュートッ!」
しまった、と思ったが遅かった。
有り難くない破壊力を秘めた円盤と矢が、スコープの中に飛び込んできた……


===***===***===

スプリガンが動き出した時、オレはやっとオズブルーンのこと思い出した。黒羽さんを助けるためだよって言ったら、オズブルーンも動いてくれそうだもん。着地した駐車場の方に向かったら、リーダーの叫び声がして、足元にガシュガシュっと何かが弾けて……。でもすぐに黒羽さんとエイナの声が響いて、大きな爆発音がした。振り返ったら煙の中から両腕で自分の頭を庇ってる灰青色の機械の固まり。同時に4人の怪人たちがスプリガンのところにだっと集まったんだ。それで5人は消えた。

リーダーは起きあがりかけてた。早くそっちに行きたかったけど、足が言うことをきいてくれない……って、うわ、転んじゃった。もう、やだなぁ……。一人であたふたしてたら、いきなり肩を掴まれた。
「アキラッ、大丈夫なのかよっ」
エイナがすっごく真剣な顔で人のこと見てた。
「何すんのさ。だいじょぶだよ、エイナ」
自分の声なのに、まだちょっと遠くから聞こえてくる感じだ。

エイナはふーっと息を吐くと、オレの肩からパッと手を放して髪を掻き上げた。
「あー。へーきならさっさと立てっての、もう!」
エイナの、オレにとっちゃもう見え見えの照れ隠し。ついくすくす笑っちゃったら、エイナが下目使いの怒ったような顔になるから、もっと笑った。そうしたら声がまた普通に聞こえるようになってきた。

黒羽さんがオレが立ち上がるのを手伝ってくれながら言った。
「緊張があとから来るのは、それだけヤバかったってことさ。よく落ち着いて切り抜けたな」
「ったくだ。見てる方がぞっとしちまったぜ。たいしたもんだよ、輝」
リーダーはちょっとお腹を押さえてたけど、いつも通りにこにこしてる。リーダー来てくれなかったら、オレ、死んじゃってたのかな……。あ、考えてみたら、みんなもよく来てくれたよー! みんなすごいなっ!

瑠衣ちゃんがオレの顔を覗き込んで可笑しそうに言った。
「輝さん、何にやーっとしてるの? ヘンなの!」
「テル。お前やっぱ、どっか打ったんじゃねー?」
「違うよ! エイナってば、心配性だな〜っ」
「お前のことなんか、だーれが心配するかっての!」
怖い目に遭ったはずなのに、今この瞬間はすごく幸せ。オレの感じた怖さや安堵が、どんなだったかって、ここにいる仲間は分かってるから。

「でもよ。毎度あんなに出て来られたら、たまんねーぜ。どーすんだよ、これから」
エイナがうんざりしたように言う。瑠衣ちゃんは小首をかしげた。
「でもちょっと中途半端じゃなかった? 今までみたいな怪人だったら、こんなんで済まなかった気がする……」

オレはスプリガンの言ってたことを思い出した。
「元はただの工事用だから……」
「坊や。どうした?」
「あのオレンジ色のロボット、元はただの工事用だって、スプリガンが言ってたんだ…」

「それがホントなら5体とも普通のロボットを戦闘用に改造したって可能性が高いな」
「なーんだ、どーりでラクだったと思ったぜー。作業用かよ〜」
「さっきと言ってることが違いやしませんかね、瑛ちゃん。まあどっちにしろ、次で叩き潰さんとな」
「怪人じゃないから、しゃべんなかったんだね。単純な仕組みならいいんだけど」

オレは普通の顔してるのにちょっとだけ努力してた。
サルファみたいなすごいロボットじゃなくたって……。あいつらきっと、色んなところで一生懸命働いてたロボットなんだよね。あんまり乱暴じゃないごく普通の仕事……。だから逆にスプリガンは、ちょっとバカにしたみたいな言い方したんだ……。


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