★第34話 (3/9)
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ピッチャーとライトのちょうど真ん中にぐらいのところにその巨体は現れた。

紅白戦をやっていた高校球児たちが悲鳴をあげて逃げ惑う中、牙将軍ゴリアントは初夏の太陽のまぶしさに目をこすると、ふわ〜と大あくびをした。通称"スパイダル波"がキャッチできなかったのはゴリアントが三次元に潜んでいたからだ。

ゴリアントはややだるそうな動作で背負ってきたサンドバッグ型の物体を地面に下ろした。それは黄緑色でところどころに赤い斑点があるぶよぶよした"袋"で、不気味の一言につきた。
「やっとお試しまで漕ぎついたぜ、ったく」
ゴリアントはそうつぶやきながら、袋の上の部分をにゅっと押し広げた。

「ゴリアントっ!」
駆け込んできたオズリーブスの眼前で、ゴリアントの"袋"から4つの白い塊が吹き出した。ひゅんっと細長く変形しながら、逃げ遅れた球児達を目指して飛ぶ。
「危ない!」
両翼にいた黒羽と輝が近くにいた高校生を押しやり庇う。
「なにっ!?」

黒と緑のスーツの上半身に白い固まりがベタリとへばり付いたかと思うと、それが伸び広がる。大きなフィルム状に広がったその物質は、あっと言う間に二人の戦士と二人の高校生を完全にくるみ込んでしまった。
「ブラック!」
「グリーンっ」
3人の眼前を4つの塊がしゅんっと飛び、"袋"の中に吸い込まれた。
「ばかなっ」

「ぎっひっひ! こりゃー、思ってもみねぇエサが飛び込んできたぜ。さすがだぜ、ゴリアント様はよ!」
「何を‥‥。何をしやがった!」
赤星がゴリアントに向かって怒鳴る。
「ちょっくら人間のエネルギーをもらおうと思ってなぁ! てめーらのおかげでアセロポッドの生産が追いつかねえ」

「させるかよっ リーブラスターっ」
「ブレードモード!」
「マジカルスティック!」
だがゴリアントは4人を吸い込んだ"袋"を盾にして身構えた。
「当たると中の人間が死ぬぜぇ。どっこに収まってるか、オレっちにもわかんねえしなぁ!」

「このやろう‥‥」
「そう怒んじゃねーや。そんなサクっと死なれても困んだよ。しばらく生かしてじわじわギリギリまで絞りとってやっから安心し‥‥」
ゴリアントが得意そうにそう喚いた時、"袋"全体がぼわっと光った。
「あ、あり‥‥?」

"袋"がぶるぶると身を震わせると一瞬ぐにゃりと形を崩してから一回り膨らんだ。底部から6本ほどの足のような突起が生じて地面に立つ。てっぺんの開口部の周辺から太い鞭のような触手がやはり6本ゆらめき伸びた。
「なんだと!」
「怪人なの!?」
「おお、ネペンテス! もう成長しちまったか! オズリーブス喰ったが良かったみてーだぜ!」
ネペンテスと呼ばれた怪人が、大口を開けてあざ笑うゴリアントの前にぞわぞわと歩み出た。
「ネペンテス! 喰えるだけ喰ってこい!」
ゴリアントがそう言い捨てると、首に下げている瞬間移動装置をぐりっと回してその場から消えた。

ネペンテスの動きは鈍い。だが触手は伸び縮み自在の上、目にも止まらぬ速さで蠢いて3人に襲いかかってきた。ブレードで切り落とされた先端は本体に飛び戻り、新しい触手となってしまう。
「だめだ、距離を……」
言いかけた赤星が、瑠衣に巻き付きかけた触手を掴み取る。
「なっ!」
触手がさっきの白い固まり同様フィルム状になって赤星を包む。一瞬赤星の着装が解けたように見えた。
「レッド!!」

「おわ!」
赤星に駆け寄りかけた瑠衣は黄龍の叫びに気づいた。その長身も引き倒され、今やフィルムに包み込まれようとしている。

瑠衣は走った。黄龍に向かって。

がむしゃらにその白い膜をむしり取った。中から黄龍が瑠衣を突き放そうとしていたが、気づきもしなかった。再び蠢き始めた膜が今度は瑠衣のスーツの上を這い巡り始めた。
「きゃあっ」
何もしていないのに瑠衣の着装が解けた。リーブエネルギーが奪われていた。
瑠衣の手に黄龍のシャツの感触があった。それを握りしめ、その身体を引き寄せて、とにかく膜から逃れようと、瑠衣は必死にあがいた。

「‥‥ちゃん、おい、瑠衣ちゃん!」
黄龍に肩を揺さぶられて我に返った。
「え‥‥。あ、あれ‥‥?」
「わかんねえ‥‥。急に、離れていった‥‥」

見回すとそこには誰もいなかった。
あの白い膜も、怪人も。

そして赤星と黒羽と輝の姿も‥‥。


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