★第34話 (7/9)
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また天井がぱくりと開き、一瞬きらめいて見えた繭玉がどさりと落ちてきた。被害者を覆ったフィルムがぱらりと剥がれた瞬間、待ちかまえていた輝が器用にそれを集め取る。輝の手の中でフィルムがハンドボールぐらいの大きさにまとまり、綺麗な真珠色の光を放った。

「リーダー」
「おお。そっと持ってきてくれ」
輝は光球を大事そうに抱えると、赤星に歩み寄る。赤星は輝が持っているものよりずっと大きな光球を両手で抱えて立っていた。小さな球が大きな球に吸収されるように一体化する。赤星の腕に少し力が入り、光球を揺すり上げるようにした。

「大丈夫?」
赤星はにっと笑って頷いたがその額にはうっすらと汗が浮いている。光球はかなり「重い」様子だった。
「また引っ張られる感じが大きくなった」
「それより下げると床に吸い込まれちゃうもんね。でも次は分けた方がいいかな?」
「まだだいじょぶだけどさ。なんかガキの時、砂袋持って立たされた時のこと思い出して、やな感じ」
「ちょっと、いつの時代の学校なのっ?」
「学校じゃないって。ウチでだよ。あのくそ親父がさー」

スーツ姿の被害者を抱え上げ、やはり眠ったままの他の人達の傍にそっと降ろした黒羽が、くすくす笑って言った。
「坊や。旦那のことはもう少し立たせとけ。まだぜんぜん反省してないようだぞ」
「うん。オレもそう思う」
「どーゆー意味だよっ」
からかいながらも黒羽は赤星からひょいと光球を受け取ってやる。サンキュ、と礼を言った赤星が大きく伸びをした。

「これ、ほんとにみんなに返せるのかな……」
巨大な真珠にも見える球の表面をそっと撫でて輝がつぶやく。黒羽が頷いた。
「今はそうできると思っておこうや。とにかくまずはエネルギー集めを妨害するのが肝心だ」
「うん。スパイダルの世界に連れて行かれっちゃったら、ちょっと大変だもんね」

「こうして時間を稼いでれば、きっとみんながなんとかしてくれるさ」
腕を揉みほぐしながら赤星が言う。輝の顔に明るい笑みが射し込んだ。
「そうだねっ。エイナも瑠衣ちゃんもハカセたちもいるんだもん。絶対だいじょぶだよねっ」
黒羽がこれみよがしな溜め息をついた。
「いやはやまったく。瑛ちゃんに命を預けることになるとは思わなかったぜ」
赤星が苦笑する。
「なんだよ、その言い方。黄龍を信じろよ?」
「何を仰います。信じてない奴を誰がリーブスに推薦するか」

3人はくすくすと笑い合った。
それぞれの心に不安はあったが表には出さない。強がりではなく、それは無意識の思い遣りだった。


===***===

ネペンテスは厳密にはスパイダルの怪人ではなかった。ゴリアントのバイオ技術によって変形、巨大化しているが、元は地球の植物だからだ。スプリガンの開発したチップで、高いエネルギーを持つ人間を埋め込まれた"クラインチューブ"に取り込む、そのためだけに動いていた。
環境に対応するために、限定された意志のようなものはあったが、多くの人間を取り込んでおきながら、なぜ取得したエネルギー量が低いのか、といった疑問は持たなかった。とにかく腹が一杯になるまで好きなものを"食う"。それがネペンテスの存在目的だった。

活動によってエネルギーレベルが上がり、体温が上昇したり発汗している人間を求めて、ネペンテスは動き回った。なぜかどんどん獲物に出会う確率が減っている上に、"絶対食べたくない"ニオイの奴にジャマされることも多かった。だが彼はそんなことにメゲたりしなかった。

そしてやっと獲物に出会った。
鮮やかな黄色のパーカーを着た長身の青年が小降りのスポーツバッグを抱え、いいリズムで川沿いの道を走って行く。行く手を遮ると、青年は驚いて尻餅をついた。しゅるっと触手を伸ばしてフィルムで包み込み、ペロリと呑み込んだ。案の定、いい味だった。


===***===

「エイナっ!」
フィルムの中から現れた青年を見て、輝は悲鳴のような声を上げた。
「黄龍!」
赤星が床に倒れ伏したままの黄龍の身体に手をかける。
「まさか着装せずに?」
すぐに近寄ってきた黒羽は、それでもしっかりとエネルギー球を保持している。

「く…そ…」
驚いたことに、黄龍が起き上がろうともがき始めた。赤星がそれを抱え起こす。
「しっかりしろ!」
「…集まれ。これの、回り……」
黄龍がなんとかそう言い、持っていたバッグを持ち上げようとするが、力が足りない。

「輝、それ持て。黒羽もこっちだ」
輝が黄龍からグレーの金属カプセルのようなものを受け取る。赤星は黄龍の身体を抱え上げ、大股で被害者たちのそばに移動した。黒羽、輝もすぐ続いた。

「黄龍、あとは?」
「……コードは9999……。全員を……包む……」
「これ、リーブレスが填ってる!」
黄龍が持ち込んだ金属カプセルにはバズーカと同じようにリーブレスが填っている。それを掲げた輝が、膝をついて黄龍の上半身を支えている赤星、立ったままの黒羽と顔を見合わせた。赤星がこくりと頷く。

「輝。その高校生のあたりがいい。立った方が良さそうだ。黒羽、座ってボール保てるか。OK。黄龍、おい、大丈夫か?」
口早に指示を出した赤星が、黄龍を少し揺さぶるようにする。黄龍の消耗しきった顔に少しだけ笑みが浮かんだ。
「……はは……カンペキ……。アキラ、いいぜ……」

輝が緊張した面持ちでリーブレスにコードを打ち込み、カプセルを高く掲げた。カプセルから金色の霧が振りまかれ、そこにいる全員を覆った。


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