★第38話 (3/4)
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――アジト内を歩くファントマ。後ろにガンガディン、数人のアセロポッド。
ガンガディン「黒羽健の死体はいかが致しましょう!よろしければ私が八つ裂きにして皇帝陛下に献上し…」
ファントマ(遮って)「バカ者。死体は回収するが、黒羽健は生きているものとする」
ガンガディン「なぜです?奴の死をOZの連中に突きつけてやれば…」
ファントマ「頭を使え。黒羽健を人質にした事にすれば、OZ全体とはいかんが赤星竜太は必ず動く! まずは奴一人で来させるのだ」
ガンガディン「なるほど!そうやって一人一人始末していけば…」
ファントマ「違う。赤星竜太を捕らえ、まずは着装機能の研究解明だ。そしてオズリーブスの弱点を究明した後、他3名も出来る限り無傷で捕らえる。そして4人ともに前頭葉摘出手術を施し、肉体強化を行いスパイダルの兵士に作り変えるのだ」
――エレベーターに乗り込む一同。どんどん地下に降りていくエレベーター。
ファントマ「オズリーブスは三次元において絶大な信頼と権限を得ている。その彼らを操ることに成功すれば、我々の三次元攻略は成功したも同然だ」
ガンガディン「お、おお!さすがはファントマ参謀長、完璧ですな!」
ファントマ「オズリーブスの改良と量産に成功すれば、アセロポッドにかわる消耗戦力とすることも夢ではない。オズドリーンの量産も軌道に乗れば、我々スパイダル軍の革命になるだろう。量産オズリーブス素体のための人間の牧場造営も必要になるが、まあそれはあとで考えよう…」
ガンガディン「忙しくなりますな!」
ファントマ「まずは黒羽健の死体回収だ。しかし残念だ、おそらく彼は着装機能を装備していなかったか、壊れていたのか…いずれにせよ、その点では期待できそうにない」

――エレベーター、最下層に到着。ドアを開けて部屋に入るなり、アセロポッドが慌てて駆け寄ってくる。

ガンガディン「どうした!」
アセ「黒羽健の死体がありません!!」
ファントマ「なに?」

――歩き出すファントマ。ガラス張りの壁の向こうは谷底。屹立する尖った岩には数体のアセロポッドが突き刺さり、血が飛び散っているが、黒羽の姿はない。
ファントマ「何をしている!早急に黒羽健を探し出せ!」
ガンガディン「殺しますか!?」
ファントマ「この基地を見た者は生かしてはおかん!作戦の変更はない!!」


――アジトから遠く離れた下流。流れは上流と変わらず激しい。激流の中から手袋をした手が突然現れ、岩肌の川原を掴む。体を引きずるように上がってくる黒羽。片手にギターと帽子を持っている。
黒羽「はあっ、はあ……」

――岩に手をつきつつ立ち上がる。足元に血で染まった水が滴り落ちる。黒羽、顔の傷を拭う。また新たな血が流れ出す。
――遠くで人の声、足音。黒羽、咄嗟に岩陰に身を隠す。岩を背にして様子を伺うと、アセロポッドたちが谷底を捜索している。帽子をかぶり直して、その場を去る黒羽。
黒羽「ぐ…!」

――胸に激痛が走る。噴出す血。黒羽、シャツのボタンを開ける。縦横に走る傷。黒羽、マフラーを取って傷口にきつく巻きつける。ボタンをしめて逃亡。

――洞窟を出て、崖の上に出る。崖は高く、下は川。崖下を見て愕然となる黒羽。
黒羽「ま、またか…!」

――その背後で声!
アセ「いたぞ!!」
アセ2「始末しろ!!」

黒羽(振り向く)「しまった!」
――黒羽、崖際でアセロポッドと殺陣。足を踏み外して落ちかけるが、踏みとどまって飛び込み前転で難を逃れる。地面に飛び散る黒羽の血。
アセ3「おのれ黒羽健、往生際の悪い男だ!」
黒羽「それが売りでね」

――剣を抜いたアセロポッドたち。また崖の端に追い詰められる黒羽。黒羽、剣を奪ってアセロポッドを斬る。消えるアセロポッド。大きく息をつく黒羽、剣を崖下に捨てる。帽子を目深にかぶる。アセロポッドの消えた煙を軽く吹く。
黒羽「さあ、どうしたもんかね。他に道はないようだが、引き返す気にもならんな」
謎の声「その通りだ黒羽健!貴様にはその崖の下に続く道しかない!」

――振り向く黒羽。洞窟から出てくるガンガディン。
黒羽「貴様は暗黒機甲兵団の暗黒ロボットガンガディン!!」
ガンガディン「死んでもらうぞ黒羽健!ファントマ閣下の作戦のためにな!」
黒羽「何っ、ファントマの作戦だと!それは一体…」

――ガンガディン、腕を黒羽に向け機銃掃射。撃たれて崖に落ちる黒羽。
ガンガディン「はっはっはっはっは、さらばだブラックリーブス!!」


――森の小路。スタッフルームから出てくる赤星。
翠川「あっ!マスター、どうだった?」
瑠衣「通信つながった?」
赤星「いやあダメダメ。あいつまーた切ってやがる」
黄龍「ほっといてやったらー?夕張の北海美女とサスペンスでもやってんじゃないの」
葉隠「うらやましいのー」
――一同、談笑。


黒羽「はっ!!」
――飛び起きる黒羽。上半身裸で包帯だらけ。
黒羽「…ここは…」
――辺りを見回す黒羽。暗い倉庫の中。黒羽は布をひいた台の上に寝かせられていた。立ち上がろうとする黒羽だが、胸を押さえてうずくまってしまう。
黒羽「うっ…」
――包帯ごしに血が滲んでいる。

少年の声「兄ちゃん気がついた?」
黒羽「え?」
――物陰から現れる少年。
黒羽「君は…君が助けてくれ…」
少年(遮って)「そんなことどうでもいいけどさ、兄ちゃん夕張の人じゃないよな」
黒羽「そうだが」
少年「じゃあ何も知らないんだね」(後ろに呼びかけ)「みんな、出てきていいぞ!」
――物陰から次々と姿を現す子供たち、10人程度。

少年2「兄ちゃん大丈夫かい?」
少女「一体何やってたのよ」
少女2「川原で見つけたときは死体かと思っちゃった」
少年3「ホラ、これ兄ちゃんのだろ」(ギターを差し出す)
黒羽「あ、ああ…」
少女3「服は外に干してあるからね」
少年4「安心しろよ、脱がして手当てする時は女は出てもらってたからさ」
少女4「そうなのよ、ズルーい」
――黒羽、呆気。ののち、苦笑。


――スパイダル夕張アジト。振り向くファントマ。
ガンガディン「はっ。オズドリーンは回収しました。半分破壊されておりますが、我々暗黒機甲兵団の科学力にもってすれば4時間もあれば修理できるかと」
ファントマ「うむ」
ガンガディン「黒羽健は射殺し、崖の下に落ちた死体は只今捜させております」
ファントマ「急げ」
ガンガディン「はっ!」
ファントマ「死体と断定はできん。着装していないとは言え奴をただの人間と思うな。生存していると想定しての捜索隊も投入するのだ」
ガンガディン「はお言葉ですが参謀長、いくらオズリーブスとは言え、よしんば射殺は免れたとしてもあの高さから落ちて…」
ファントマ「愚か者め。その安直な考えのせいで、私の着任前に何度手痛い失敗を喫したと思っているのだ。徹底しろ!私はブラックインパルスとは違う!」
ガンガディン「は、はっ!」
――アセロポッドに命令を出すガンガディン。自分もコンピュータに向かう。
ファントマ「街に出られては厄介だからな…ガンガディン!電波を増幅せよ!」


――黒羽のいる倉庫。
黒羽「じゃあ、お兄さんが川原で倒れているのを君たちが助けてくれたのかい?」
少年「そういうこと」
少年2「ケガ大丈夫?」
黒羽「ああ、大丈夫だ。だいぶ良くなったよ。ありがとう」
少女「たぶん上流から流されてきたんでしょ?」
黒羽「ははは、山で足を滑らせてね」

――何か言いたげな子供たち。顔を見合わせている。
黒羽「………何かあったようだな」
――台から降りる黒羽。少年の顔の高さにしゃがみこむ。
黒羽「良かったら話してくれないか」


――真夜中。市内の大学、奇妙に空虚な目をした管理員が大学を閉める。管理人が去ったあと、暗闇の無人の大学に忍び込む大小いくつかの人影。建物に入る前で、小さな人影が校外に去っていく。それに手を振る大きな人影。電子工学の研究室。針金を取り出し、鍵を開けて入り込む。主電源を入れて電気を点ける。忍び込んだのは黒羽。ギターを置いて、壊れたリーブレスを台に置く。黒羽、上着を脱いで掛ける。
黒羽「ファントマめ…」

――手袋をはめなおし、大げさな挙動で機材を手に取る。
黒羽「これ以上調子に乗らせる訳にゃいかんぜ」
――椅子に座り、リーブレスの修理を始める。

(回想シーン開始)倉庫。黒羽と子供たち。
少年「街がおかしくなっちゃってるんだ」
黒羽「街が?」
少年2「いつもと変わりないんだけど、みんなおかしいんだよ」
少年「オレが話すよ。十日前くらいからなんだけど…」
黒羽「ああ」
少年「普段はいつもと同じなんだ。ちゃんと朝起きて夜寝てご飯食べて学校行ってさ、大人は仕事してるんだけど…でもみんな全然笑ったり怒ったりしなくなったんだ。喋ったりも必要なことしかしないし。なんだか自動的に暮らしてるって感じだ」
黒羽「なんだって?」
少年「それにさ、夜になったら大人たち、みんなどっかに行っちまうんだぜ。2時くらいだったけど、起きて見てたから間違いないよ。それで朝になったら帰ってるんだ」
黒羽「大人がみんな…?そんなバカな、そんなことになったら街が機能しないはず…」
少年「だから働いてる大人は自動的に働いてんだってば」
黒羽「そうか、街を機能させるための労働力はそのままって訳だな。それで」
少年「とにかくおかしいんだよ!みんなゾンビみたいだよ。だってさ、オレたちが家出したのに全然気付かないんぜ!」
黒羽「なに?じゃあ君たちは」
少年「ああ、オレたちはなんか知らないけど普通なんだ。だから恐くなって集まってんだけど…なあ」

――頷きあう子供たち。
少年「絶対おかしいよ!いろいろ行ってみたけど、どこ行っても同じなんだよ。警察も!」
黒羽(心の声)「なんてこった…夕張の人々は、おそらくスパイダルのあの基地から出る何らかの電波で洗脳されているんだ。そして夜どこかへ行くというのはあの基地に違いない。何をされているかは分からんが… この子たちは電波に同調しなかったのか洗脳を免れたらしいな」

少年2「頼むよ兄ちゃん!助けてくれよ、夕張を出て警察に報せて!」
少女「お願い!」
黒羽「よし!分かった、オレに任せてくれ」
少年「ホントかよ!やったぁ、頼むぜ兄ちゃん!」
黒羽「ああ!そのためにはちょっと案内して欲しいところがあるんだが…その前に…」
少女3「なんですか!?」
黒羽「服とギターを返してくれないかな」

――夜中、大学の建物の前。
黒羽「ありがとうみんな。ここからはオレ一人で大丈夫だ」
少年「頼んだぜ兄ちゃん」
少女「ここで機械を修理したら、警察に連絡できるのね」
黒羽「ああ、そうだよ」
少女2「やばいよみんな、大人たちがそろそろ集まるよ」
少年2「じゃあ兄ちゃん、オレたち帰るよ」
少女「頑張ってね!」

――去って行く子供たち。振り替える少年一人。
少年「そうだ兄ちゃん、名前なんての?オレ新二」
少女「あ、そうだわ。あたし恵」
少女2「あたし菜緒子」
少年2「誠一!」
新二「残ってる奴にも教えるからさー」
黒羽「さすらいの私立探偵、黒羽健…よろしく」


――(回想シーン終了)
――修理を続ける黒羽。
黒羽(心の声)「あの子たちのためにも、一刻も早く奴らを…」

――ひたすら修理に没頭する黒羽。が、やがてその手を止める。
黒羽「ダメだ…やはりOZの研究所でなければリーブレスは…」

――立ち上がり、カーテンを少し開けて外を見る。外で大人たちが歩いている。一つだけ灯りが点いている大学の部屋…。

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