★第4話 (1/4)
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有望の手のひらが踊るようにパソコンのキーを叩く。
機械の中に埋もれている彼女の顔は背景と不釣り合いなくらい美しかった。
その優雅さは、ここが研究室でなければピアノを弾いているといっても良いくらいだ。

彼女の指先が少し勢いよくキーを叩くとパソコン画面に1人、姿が現れた。

「リサーチの該当者の中から、更に絞り込んだ結果・・・よ。今現在は自宅で家族と一緒に暮らしている。学生時代の陸上、水泳記録は目を見張るものがあるわね。すごい・・・。」
「で?」
黄龍は有望の後ろから身を乗り出すように、画面が映し出す顔を見つめている。
画面の顔は人形のように大きな瞳、さらりとした流れるようなショートカット、白い肌はきめが細かくて、頬も唇も化粧っけがないのにうっすらとピンク色。瑠衣と同じくらいの少女にしか見えない。
「この子が4人目にふさわしい?性格は?友達は?家族は?」
「申し分ないけど・・・。裏表ない性格、友人達の評判も上々、家族は両親に妹が3人。」
「ほーお・・・。」
彼は息を細く吐くとぼりぼりと頭をかいた。画面の顔は何回見ても、一緒に戦うパートナーと言うよりもそばに置いて守ってやりたい、そんな感じの顔立ちだ。

「と、言うわけだ。黄龍、意思確認のために、お前が連れてきてくれないか?後から黒羽も向かわせる。」
「あのよ、赤星さん。きれいな女の子と知り合ってどっか遊びに行く、それならいいぜ。・・・・・・俺様の口からこんな細くてカワイイ子に『一緒に戦ってくれ、だからついてこい』なんていえるかよ?」
「は?」
「え?」
赤星と有望は顔を見合わせるとくすくす笑い出した。


「女の子じゃねえよ、黄龍。こう見えても男だぜ。本人かなりのコンプレックスらしいぜ。」
「げ、マジで!!?おいウソだろ?こんな顔の男いてたまるかよ!?」
「ここでウソついてどうすんだよ。ほい、行ってくれるか?」
「あ、あっあ〜・・・いーぜ。見に行ってみるよ。」
赤星はいつも通り屈託なく笑うと、彼に分厚い資料の束を差し出した。

「このかわいらしー妹ちゃん達もついでにね。」
黄龍は資料をばらばらとめくりつつジャケットを羽織ると、左手を上げて出ていった。





オレのオヤジは、世間で言うと『フェミニスト』というものらしい。

ひなたにも昴にも、燈子にも毎日毎日優しい言葉をかける。母さんにもいつも優しい言葉をかけて、影では毎日『愛してるぞ』って言ってんのを、オレ達は知っているが知らないフリをしている。
妹達の手にケガをさせるようなマネは、包丁と果物ナイフを使う時以外絶対にさせない。
道は必ず女性に譲る。
開くドアは、後ろに女性がいたら必ず押さえて待っている。
・・・・・・きりがないや。

女の人には優しいのに、オレにはちょっとぶっきらぼうだった。
大工の仕事で教えてくれたのは『手順は一度で覚えろ』この言葉だけ。あとは見て、たくさん失敗しながら覚えるってことらしい。
上手に出来た時は、とってもとってもホメられる。失敗したときは容赦なく怒られる。
それが世間では当たり前だと思っていたんで、加えて親戚も女のひとばっかだったんで、オレはずっとオヤジとおんなじ行動をとってきた。
女の子には優しくしてあげて、自分にはちょっと厳しくしたくて。

母さんや妹達と同じくらい大好きだったオヤジの事が、急に煩わしくなったのは一体いつだっけ・・・?



忘れちゃった。



重厚な日本家屋の戸が乱暴に開けられて風が通る。
3人の少女達が事の成り行きを目で追いながら、出ていった者の心配をしている。
奥の部屋を覗くと、ため息ばかりついている父親の姿。娘達が覗いているのがわかっているはずだが、今日に限って優しい笑顔を作る事はない。
母親は慣れた様子でだまってお茶を用意して、彼のそばでにっこり笑っている。
白髪が混じりはじめた黒い髪をぼりぼりかき、眉間にしわが寄る。
無精ひげを髪と同じようにばりばりかくと、ようやく近くに座っている妻を見つめた。

息子そっくりの大きな瞳とさらさらの髪をもつ彼女は何も知らぬような顔をして、ゆったり微笑んでいる。初めて出会った時とあまりかわらない容姿の彼女を見て、またため息をついた。
「なあ、蛍・・・あいつは、一体何を考えて生きてるんだっ?」
「・・・・・・ウフ。」
「目標も持たずに生きてるフザケたガキがいっぱいいるが・・・。オレの息子もそうだとは思わなかったな・・・。」
自分達の息子は、21に見えないくらい子供だった。与えられる物には素直に喜び、初めて出会う風景に感動し、初めて会う人に警戒心を抱かない。いつまでたっても人擦れしない。
やってみろ、と言うことには一から学び、心底楽しみながらすするようにその知識と技術を自らのカラダにたたき込む。機械いじり以外はなんでもかんでもそつなくこなすことができる。


・・・・・・・・・・・・ん?


「・・・・・・・・・。要するに、なんでも出来るが受け身なんだなあいつは・・・。今気づいた。」
「あら。」
蛍はお茶をゆっくり注いで、『ちょっと熱いかも・・・』とつぶやきながら彼に手渡した。
「まあ、あなた。やっと気がつかれたの?だったら、きらちゃんが飛び出して行ったのはとっても良い事ね。」
「なんだそら?」
息子にそっくりの蛍の顔は柔らかい表情で微笑むと、また夫にお茶を注いだ。

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