★第4話 (2/4)
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まだ両親の動向を隙間から眺めている妹達を後目に、一番落ち着いた雰囲気の少女が玄関の引き戸を静かに閉めて薄手の上着を着た。ふわりとしたデザインのスカートがひるがえる。
「ひなた姉え?探しに行くの?ほっとけばいーじゃん・・・。すぐ帰ってくるって。」
ウルフショートのヘアスタイルをかき上げて、いつもの状況に少し呆れたようにつぶやいてみせる。
彼女は爪を噛んで、指の逆むけをひっぱっている。
ちょっと反抗的な思春期の少女を演じている彼女のココロの動向は、姉が一番よくわかっている。
昴は素直に口に出せない分、心配している態度が指に出る。
お兄さまのこと、いつも一番心配してるもんね・・・。
「あら、すばるちゃん。お父様達はどうだった?」
「いつもどーり。」
「そう。」
黒髪の少女は静かに笑う。それでも切れ長の瞳は憂いを帯びて眉が少しだけ動く。
兄よりも落ち着いた雰囲気を持ち、父親そっくりの顔をしている。
下を向いている2人のもとに、ぱたぱたと大きめのスリッパを履いてやってくるのは燈子。ちょっと心配そうにしているのは2人の姉と変わらないが、彼女は感情をはっきりと顔にも態度にも出す。その表情は今にも泣きそうで、兄そっくりの大きな瞳がこぼれそうだ。
すっかりゆるくなった三つ編みの先をもてあそびながら、燈子は口を歪めた。
「おにいちゃま、怒って出ていっちゃったよ?ね、ねえ、大丈夫かな・・・?」
「ちょっと、とーこ・・・。アキ兄いがいくつだと思ってんのよ、ああみえてもとーこより10も年上なのよ。大丈夫よ〜、心配する方が間違ってるって。」
「そうかしら・・・?様子が変だったし。・・・二人はおるすばんしててね。あ、お父様とお母様には内緒よ。」
ひなたは唇に人差し指をあてながら靴を履こうとする。
腕を組んだまま憮然としている昴を後目に、燈子は眉をへの字にして足をばたばたさせてじだんだを踏んだ。
大好きな兄が自分から1秒でも離れているのは、決定的な理由がない限り絶対にイヤなのだ。
「え〜いやだっ。ひなたお姉ちゃまがいくならとーこも行くっ。」
「とーこちゃんは、すばるちゃんとおるすばん、ネ?あとからお菓子焼いてあげるから・・・。」
「いーやーだっ!あたしも行くっ!」
「こらとーこっ!」
燈子が引き戸を開けて飛びだそうとした瞬間、突然現れた長い足に鼻をぶつけてしまった。
「きゃっ。・・・な、なに?おきゃくさん・・・?」
「おっと。」
燈子が顔を上げると、そこには大きな背の男性がいた。ちょっと長めの髪の毛、頭にひっかけているサングラスがきらりと光る。身に付けている服も靴もなにもかも手入れが行き届いているのがわかる。適当なカッコをしている兄とは何か違う、と子供ながら燈子は感じた。
太陽を背にしていたので表情がよく見えなかったが、目が慣れるにつれてよく見えるようになった。彼はちょっとだけ焦げ茶色の髪の毛をぱさりとかき上げて、甘く微笑む。その顔は自分の兄とは正反対の男の顔だ。
「大丈夫かいお姫さま?よく見えなかった・・・。ゴメンね。」
その男は、玄関のタイルの上にぺったり座っている燈子を両手で抱えて立たせると、ぱさぱさと彼女の服のホコリをはらった。
昴は恋愛にあまり興味はない。そのかわりにTVにでている芸能人は大好きだ。
整った顔の男がとても好きな昴は、TV画面から出てきたかのような美しいスタイルの男に思わず顔が熱くなるのがわかって、姉の後ろにそうっと隠れる。
賢明なひなたはそんな妹をちょっとあきれ顔で見つめ、そしていきなり入ってきた不審人物に遠慮なく疑いのまなざしを向ける。
彼女は外見が行き届きすぎた男はあまり好きではないのだ。
「どちらさまですか・・・。うちのどなたに御用事なんですか?」
「写真。」
「え?」
男は面白そうに、くっくと笑うとひなたの髪の毛を指さした。
「写真よりもずっと綺麗な髪の毛なんだね、驚いたよ・・・。」
その言葉にひなたよりも昴の方が頬を赤くして、羨ましそうに姉を見つめるが、ひなたの方は全く意に介さず目をそらした。
「・・・カワイイ。」
「用事がないのでしたら、お引き取り下さいませ。」
彼がさりげなく距離を詰めるのがわかったらしい。ひなたは彼が誉めた長い髪の毛をちょっとひるがえして後ろに下がった。
(あ〜・・・冗談があまり通じなさそうなコだな・・・)
「どうしてひなた姉えの名前を知ってるのさ?何イ?知り合い?」
ひなたは、少し非難めいた口調になっている昴の言葉にまたあきれ顔になると、『そんなわけないでしょう?』とつぶやき、足を一歩後ろに下げた。
「とーこちゃん、こっちいらっしゃい?」
男は、自分達の一歩前にいる妹を庇うようにして後ずさりしている昴とひなたをくすくす笑いながら見つめた。
「こんなカワイイ妹さん達に心配かけさせるなんて、キミ達のお兄さんはさぞかし出来たお兄さんなんだろうな?」
「・・・お兄さまに何かご用なのですか・・・?」
「そ。」
男はニヤリと笑い、細く長い指がひっかけていたサングラスを取ると上着のポケットにすとんと落とす。
吸い付くような長い指に見とれていた昴に微笑み、そんな自分をちょっときつい目で見るひなたの視線に気が付くと、少し慌てて顔を直した。
「俺はキリュウエイナっ。エイナでいいよ、オレ的には君たちと一緒にもっとおしゃべりしていたいんだけどね〜。・・・残念ながら用があるのはキミ達の兄貴の方なんだ。で、その『アキラお兄さま』がどこにいるかわかるかな?」
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