★第7話 (17/18)
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アモクが建物から飛び出した時、二人の男の姿はなかった。そこにはただ一人の人影が立っていた。

「これで終わりだな、アモクッ! レッドリーブスだ!」

後ろから軽やかな足音が響く。
「逃がさないからねっ グリーンリーブスっ!」
「こっちも通せんぼよっ ピンクリーブス!」

右手方向に向きを変えれば、建物の壁によりかかる黒い影。
「被害に遭った人は全員収容したぜ。ブラックリーブス参上!」

そして左手の屋根から溌剌とした声が響いた! 
「あんたの企み、全部失敗ってね! イエローリーブス!!」

赤い手が高くあがった。「スターバズーカッ!」

「マジカル・スティック!!」
「ルー・トンファーっ!」
緑銀と桜色の閃光がアモクの両側を駆け抜けた! 

「ブラック・チェリーッ!」
「イエロー・チャクラム!!」
直線と曲線が朱色の身体に吸い込まれた。

「リーブレス、アタッチ!」五人の声がぴったりと揃った。よろめいたアモクの視界の中で小型の飛行物体が火砲の形態に変化した。

「スターバズーカ! ファイヤ―――ッ」
アモクの身体を包み込んだ黄金は、縮退を起こすように爆発し、あとにはかけらも残らなかった。


===***===

どんな現場でも検証は必要だ。ということで、敷地の中にはけっこうな数の鑑識と警官が入ってきていた。入れ替わりのように戻ろうとする柴田と島の背中に赤星が声をかける。
「柴田さん、島さん!」
島はくるりと身体の向きを変え、柴田はちらりと肩越しにスーツのままの赤星を見やる。

「色々ありがとうございました」
赤星は頭を下げた。柴田にも島にも、そしてあの二人の警官にも感謝の気持ちで一杯だった。特に柴田の最初の一発。完全に自分の考えと動きを読んでくれていた。

「てめえの為じゃねーさ。これがオレたちの仕事だ」
柴田はそのまますたすたと歩いて行ってしまう。
「お疲れさまでした」一方の島はニコニコ笑って、軽く一礼を返してよこした。
「あの二人の方にもよろしく伝えていただけますか?」
「わかりました」

「島さんっ またよろしくねっ」
「あたしたちも、がんばります!」
輝と瑠衣が両手を振った。すっかり島に懐いてしまったようだ。
「はい、こちらこそよろしく」
ベージュの上着は汚れてしまっていたが、爽やかな印象はそのままに、島も去っていった。


砂利を踏みしめる音がして赤星は思わず横を見た。よく拭き込まれた黒い乗用車の側に立って、今の状況を見ていたらしい男が、つかつかと歩み寄ってきた。警察庁警備局、浅見亘局長その人だった。

浅見は赤星の真っ正面に立った。
「針の被害は何名かでたが、二次被害はゼロ。そして警官の発砲による負傷者がゼロだったのがなによりだった。よくやってくれたな」
「柴田さんたちやこいつらのおかげですよ」あとの四人をちらりと見やって赤星は答えた

「今朝の的確な通報とトレースがまずよかった。速攻の対策報告や情報統合はまさにお前達ならではというところか? 状況から考えれば最高の挽回だったな」
「そう言っていただけると、ほっとします」マスク越し赤星の声は、嬉しそうだった。
「三年前、この私にあれだけ生意気な口を叩いたお前がな‥‥。なんとか任せておけるようだな」

「‥‥あ、浅見さん‥‥あの、あれは‥‥その‥‥」
からかうような浅見の口調に、赤星はしどろもどろになった。三年前、OZの担当窓口が特命課と決まった時、視察にきた浅見副局長の辛辣な物言いに、年長者を差し置いて思わず啖呵を切って返し、相手を怒らせたのは確かに自分だった。あの時は後で葉隠にこんこんと諫められたのだが、あれ以来、苦手意識が消えず、会うたびにどんな顔をしようか悩んでしまう相手だった。もしかして、昨日は試されたのだろうかと、ふと思った。ベースでの浅見の言葉、どれも真剣に受け止めねばならないことだった。


浅見の背中がすうっとのびた。右の踵を軽く左足によせその膝がぴしりと収まる。左手が身体の真横にきっちりと揃うと、反るように伸ばした右手がその額にあてられる。手本のような敬礼が、五人に対して向けられていた。思わずつられて上がった輝の右手が、隣の赤星の動きに思わず止まった。

赤いスーツを纏った男はいきなり左足から一歩下がった。肩幅に位置づけた両足を平行に決めると、両腕を胸の前に上げる。彼はそのまま、左拳を右掌にぴたりと押しつけると、浅見に対して深く上半身を折った。

強面の警察庁幹部が豪快に笑い出した。
「はっはっはっ‥‥! あくまで警察とは別と言い張るか!」
「はい‥‥!」
「やはり面白い若造だよ、お前は! その信念を大切にするがいい。我々は協力を惜しまん!」
「ありがとうございます!」


黄龍はゴーグルの中から、赤星があくまで自分のやり方で礼を返すのを見つめていた。
オズベースの応接室で居丈高な相手に頭を下げた時ですら、この男は何も曲げてはいなかったのだ。ただまっすぐに為すべき事を為していた。護りたいものを護るために‥‥。

浅見は4人の戦士たちに向き直った。
「いいリーダーを持ったな」
「あったりまえっしょ!」
誰より早く答えたその声に赤星は驚いて振り向いた。マスクの中の赤星のきょとんとした顔を思い浮かべながら、黄龍はびしっと右手をのばし、親指を突き立ててみせた。

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