★第7話 (3/18)
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どんどんという音と、かりっと何かを引っ掻くような音が入り交じる。
牙将軍ゴリアントの裸足はいつもこんな音を立てた。

四天王に取り立てられても、ゴリアントは首領Wの宮殿にいるより、モンスターたちの住むこの空間が好きだった。暗黒次元の中でも歪みの多いこの空間は、住む者の身体に気まぐれな外圧を与える過酷な環境。だからこそ、ここに居住するモンスター達の生命力には凄まじいものがあった。

「アモクッ アモクはいねーかっ」ゴリアントが大声で呼ばわる。
「牙将軍殿、アモク、ここに‥‥」暗闇から朱色の長身が現れ、ゴリアントの前に跪いた。全身が鱗で覆われ、両腕にはヤマアラシのような長い剛毛が密生している。
「その牙将軍殿ってのは、やめだ、やめっ! ここにいる時ぐらい、いままで通りで呼べっ」
「さすが、大将! 他のわけのわからん将軍達とは大違いだぜっ」アモクが立ち上がる。浮かべているのが笑顔‥‥なのかどうか、それは彼らにしかわからない。

モンスター軍団。他の連中に蔑まれることが多いが故に、彼らの結束力は固かった。そして何より彼らの強みは、プライドやメンツといったものに捕われることなく、純粋な本能によって行動していくことにあった。
「シェロプもスプリガンも失敗しやがった。特にシェロプのヤツ、ざまぁねぇ! 侯爵様自ら降りてって、なんの土産もなくお戻りだ!」
「となると大将、いよいよオレたちの出番ってわけかい!」
「おうよ! オレっちをバカにしてるあの三人のマヌケ面が楽しみだぜ!」

ゴリアントはヒヒ‥‥と下品な笑い声をたてた。家柄を鼻にかけるシェロプ。戦いの美学だかなんだかを語り出すスプリガン。そしてくそ生意気な小娘のアラクネー。ゴリアントは他の三将軍が大嫌いだった。どんな手段を使おうが目的を達したものの勝ち。おめーらがカッコつけ合ってる間に、手柄は頂く。そして首領Wにモンスター軍団の凄さを見せつけてやる! 

「しかし大将、モンスター軍団の一番手に、オレをご指名とは嬉しいぜ」
「お前の"アモク"は最高だもんなぁ! 見ててあんな面白ぇもんはねー! で、もうすぐ次元回廊が開く。わかってんだろーが、速攻でいくぜ!」
「大将、相変わらずだな。あんたも行くのかい?」
「当然! 他の連中は回廊が完全に開いてからじゃなきゃ行けねーが、オレたちなら不安定な状態でもくぐり抜けられる。OZの残党だかなんだか知らねーが、ドギモを抜いてやらぁ!」

二人の喉に何かひっかかるような笑いが響き渡った。

===***===

着装した4人が現場に到着した時、既に朱色の化け物とアセロポッド達が出現していた。出店やオブジェなどが引き倒され、壊され、既に20人近い人が地面に倒れている。逃げまどう人たちや先に到着した数名の警官たちに、嵩にかかって襲いかかっているポッドを慌ててぶちのめす。

サルファが電磁波を検出してから15分。従来のタイミングより異常に早い敵の出現だった。オフィス街の中にある広場では、スピーカーが緊急避難の言葉をがなり立てている。だが昼時のこの時間、サラリーマンやOL、買い物中の主婦など、あまりに多くの人間がここにいた。
4人が、怪人とアセロポッドを囲むように散る。負傷者の救助をしたいところだが、これ以上の被害を食い止めるほうが先だった。幸いサイレンの音が響いて、残りの警官隊が来るのも時間の問題だ。

「貴様らがOZの生き残りか?」朱色の長身がアセロポッドの中から一歩、踏み出す。
「龍球戦隊オズリーブス! 貴様らの好き勝手にはさせねえ!」赤星の高揚した声が響いた。
「スパイダル・モンスター軍団 アモク! 楽しませてもらうぜ!」
いきなりアセロポッドがアモクを取り囲んだ。アモクの腕が周囲をぐるりとなぜるように一閃する。と、アセロポッドの身体が何かに弾かれたようにビクンと痙攣し、堰を切ったように4人に襲いかかってきた。

走り込んだ輝が、素早く順手に持ち替えたトンファーをポッドの鳩尾に突き込む。が、ポッドはまったくひるまず、そのまま緑の小柄な身体を抱え込み、動きを封じに入った。
「グリーンッ」
声と共にポッドの額がぶち抜かれた。黄龍のリーブラスターが、正確にポッドのディメンジョン・ストーンを射抜いていた。
「こ、こいつら、どうなってんのっ!?」
消えたポッドの上から、なおもなだれ込んでくるポッド達をかわしながら輝が叫んだ。スピードとパワーが格段にアップしていた。そしてダメージに対する強度も! 

「動きが違う! 速すぎるぜっ!」黄龍がチャクラムを手にとまどう。
「額を狙えっ」見もせずに、ブレードの柄で背中側のポッドの額を叩き割った黒羽が叫んだ。
「距離を保て、イエロー! ブラスターの方がいい!」
黄龍がすっと後退する。黒羽が黄龍の元いた位置に少しだけポジションをシフトすると、ポッドたちはわらわらと黒いスーツに襲いかかった。そこを黄龍が正確に狙撃していく。

拳がストーンに決まるとぴしりとヒビが入り、ぶんとぶれるようにその身体が消えた。赤星が怒鳴る。
「がむしゃらにつっこんできてる感じだ! よく見て一体づつ倒せ! 複数近づけるな!」
「了解っ」輝の動きが変わる。ただでさえ身軽な彼はスーツを着るとまるで飛ぶように動く。ルートンファーを振りかざし、ポッドたちの頭や肩のを踏み台に移動していく彼を捕まえることなど不可能だった。

輝の動きにポッドが集中する。その隙に赤星はアモクに向かった。走りながら右腕に装着したリーブライザーに触れると両前腕が金色のリーブ粒子で覆われる。左から、少し遅れて黒羽が突っ込んでくることを視界の端で捉えていた。
勢いをつけた左ストレートがアモクの右腕でガードされた。腕を覆った剛毛の針のような鋭さがグローブ越しに伝わってきた。かまわず空いた顔面めがけて右も叩き込む。と、アモクの長い左手が赤星の右肘を外側からがっちり押さえ込んだ。その体勢で右手首を外側に押され、腕を固められた赤星は思わず呻いた。
アモクの右から入った黒羽が、下からブレードを跳ね上げた。注意を黒羽に向けたアモクから赤星が解放される。ブレードがアモクの両腕の剛毛で滑った。引くとみせかけた黒羽はそのままブレードを突き込んだ。アモクが思わず後退する。

「20秒!」赤星が叫んだ。
「わかってる!」黒羽が答える。

サルファがスパイダルの波動をキャッチした時、赤星は言ったのだ。「四人で行く」と。瑠衣は授業中だった。それは赤星の未練だったのだろう。

「ブラック! コンビネーションだ!」
「おうよっ」
赤の後ろに黒が縦列して疾走する。長い腕でガードするアモクに、赤星はまっすぐに突っ込んだ。黒羽が赤星の肩を踏み切って、アモクの頭頂めがけてブレードを叩き込む。とっさにそのブレードを押さえ込んだアモクのがら空きになったボディに、リーブライザーのマックスモードが炸裂した。

「二人とも 離れろっ!」
右の地面すれすれから黄龍のチャクラムが迫っていた。赤星と黒羽が慌てて離脱する。腹をおさえかがみ込んだアモクに、舞い上がったチャクラムが突き上げるようにヒットして爆発した。
「スターバズーカッ」
既に上空に待機していたバズーカを輝が呼び寄せる。3人が輝の元に集まった。
「リーブレス、アタッチ!」キーワードを吹き込み、4人がいましもリーブレスをセットしようとした瞬間だった。

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