★第7話 (5/18)
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オズベースの小さな応接ルームで、手袋も、帽子すら取らず、赤星を立たせたまま、警察庁警備局の浅見局長は怒りまくっていた。5人揃えず出撃したことに対する最初の譴責に対しては一言も無い。ただ頭を垂れて陳謝するしかなかった。だが、事情が全てわかった上で、浅見はこう怒鳴った。
「馬鹿野郎っ それでも貴様は撃つべきだったんだ!」
「しかし、それでは、警官隊に被害が‥‥」
「あの場を守るのは彼らの任務だ! そしてお前達の仕事はあの赤い化け物を倒すことだった!」
「警官隊の装備はきかなかったんです。だから俺は! それにひどく危険なヤツで‥‥」
「先に化け物を倒してからなら、いくらフォローしてもかまわん! だが、貴様はやるべきことをやらなかった! ターゲットを逃がして、これから出る被害のことをどう考える!」
「それは‥‥!」
「結果論だと言いたいのか? だが、大衆は結果論でしか語らん! 現場で働く者にとってどんなに理不尽であってもだ! そして信頼を失えば、動けなくなるのはお前達自身だ!」
赤星は軽い眩暈を感じた。警官がやられても、怪人を倒すべきだった? 一般大衆の評価?
そんなことまで、俺は考えられるのか? そんな判断を、あの戦いの場で‥‥!?
「私は忘れんぞ、赤星。OZの日本本部が壊滅した際、その全権を公安管轄にしようとした時、ドクター葉隠と若造のお前が科学者どもを焚きつけた。最終的には国連側からの外圧で、OZは野放し状態になったのだ」
「‥‥OZは‥‥国や政府にとらわれないことに意味があるんです‥‥。だから‥‥」
「それなら、自分の言ったことに責任を持つんだな。現場でその程度の判断ができんなどと、泣き言は言わさん。貴様は貴様の意志で、今の立場を選んだのだろうが!」
浅見はつかつかと赤星の側に歩み寄ると、持っていた書類でその厚い胸を叩いた。
「自分の犯したミスに謝罪もできないような男に、こんな仕事が務まると思っとるのか? 貴様がネを上げるなら、いつでもここを私の配下に置いてやる。どうだ!?」
赤星の、浅見を見る眼差しに険がこもる。では、貴方ならあの時うまくできたのか! という叫びがわき起こった。警官に死傷者が出たら‥‥、貴方はいったい‥‥!
赤星は目を閉じて拳を強く握ると、喉元の言葉を唾とともに飲み下し、奥歯を噛みしめた。
落ち着け。一時の感情など、どうだっていい。
道場で身体の力を抜く時のように、長めに息を吐き出す。
目の前にいるこの男が、OZと警察庁を繋ぐ要であることも、その後ろには警察だけでなく自衛隊があることも、赤星はよくわかっていた。全体から語れば自分たちの方が特殊部隊だ。警察と自衛隊の協力が無かったら、戦うことはできても、その戦いから人々を守ることはできない。
だが‥‥警察と自衛隊だけではダメだという気持ちは変わらない。むしろその気持ちは以前より強くなっていた。国際的な機関であるからこそ、逆に外交官特権的に身軽に動ける。情報はOZのパリ本部に速攻で送られ、それが国益にとらわれない科学者たちの間で吟味され研究される。現在のリーブスの装備その他に生きる技術は他国から送られてくるものも多いのだ。
ここに、縦割りの許認可と利権の山で構築される日本政府が絡んだら、本質とは遙かにかけ離れた作業に追われるのは必定だった。有力な武器を持ちながら傍観者になり果ててしまうなど、まっぴらごめんだ。OZの立場はそのままに、警察との密接な協力関係を維持すること。そのためにはこの男を怒らせてはならない。それに‥‥
それに‥‥常に‥‥結果が全てだ‥‥。
警察もまた一般市民を守るために戦ってる。俺はそれを信じられなかったのかもしれねえ‥‥。
赤星は瞼を開いた。一瞬、浅見と目が合って、視線を落とし、頭を深く下げた。
声が震えないように少し努力しなければならなかった。
「申し訳ありませんでした。全面的に俺の判断ミスでした。今後繰り返さないよう注意します。ですから、今後も両者の立場と協力体制は、どうかそのままに‥‥」
互いに無言のまま車まで浅見を見送りゲートを閉じる。車の走り去った方向を、しばらくぼうと見ていた赤星が、いきなり「ばっかやろーっ」と怒鳴った。右拳をたーんと左掌に打ち付ける。
運命のヤツはずいぶんとシンドイものを俺に押しつけてくれた。
でも‥‥助けても、もらってる。
少なくとも今日は誰も死ななかった。
もっともっと取り返しのつかないことだって起こり得たはずなのに。
終わったことは終わったことだ。
あとに生かすならともかく、悩むのに使っても意味がねえ!
くるりと振り返った赤星の瞳には、いつもの輝きが浮かんでいた。
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