★第8話 (12/16)
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震えるサルファの声で葉隠博士達はようやく彼の方を向いた。
「サルファ・・・どうしたん」
博士は息をのむというのはこういうことなのだと、身をもって実感した。
動かないものが、予告もせずに動く。これほど恐ろしい事はないかも知れない。
少し前まではロボットの残骸だったはずのそれは、残った毛を逆立たせてぬらぬらと糸の光を放っている。
瞳は明らかに敵意むき出してらんらんと輝く。
「な、こんなバカな事が・・・っ!」
「そんな、なぜ?なぜ今になって動き出したの?」

驚愕する3人と一体のロボットを無視して、ロボットは声にならない機械音を上げて強化プラスチックのケースめがけて体当たりを始めた。一回体当たりをしただけで、かなりの厚さのプラスチックにヒビが入る。ヒビと同じく、ロボットの顔も崩れるが、すぐにミミズコードが修復をしている。
目の前の彼らをジャマな障害物、もしくは殺意を満たすものとしてでも見ているのだろうか、瞳はますます赤く輝く。

「そこから脱出するつもりだわ!」
「な、なんてことじゃ、ケースが吹っ飛ぶぞ!」

「な・・・・・・!」
ヒビが入ったあとのカベは、ロボットにとってはもろい土壁と変わらなかったらしい。
次の瞬間、博士の予告通りカベは吹っ飛び、プラスチックの壁は弾丸の如く降り注いだ。
「2人とも危ないっ!」
「田島博士ッ!」
田島は博士と有望に覆い被さるようにして床に伏せ、更に彼を庇ってサルファが全面に立ちふさいだ。
サルファの目が一瞬だけきらりとひかる。
「サルファ!」
博士と有望が、覆い被さった田島の体と白衣の間に見た物は、もはや醜悪なかたまりとなったロボットが天に向かって吠える姿だった。

ぎゅわあああああーっ!!!



悲鳴にも機械がこすれる音にも似た雄叫びを上げる。
飛び散ったケースのかけらは鋭利な魔弾となり、田島とサルファめがけて空中に踊らせた。
どれもこれも、あきれるくらい美しく光ってからその身を散弾銃のようにぶちまける!
「ワワワワワワ!!」
「ぐ・・・うっ!うおっ。」
形のくずれたロボットは弾丸と共にカベとガラスを突き破って、猛スピードで出ていった。

その跡に散乱したプラスチックの破片は、ベースで使用されている色とりどりのランプが付いた機材の光を受け、何事もなかったかのように散らばっている。


「う・・・。」
「た、田島博士、大丈・・・。」
有望は思わず「はっ」と呼吸と悲鳴の間の音を出し、彼の腕を取った。
自分と博士を庇ったその肩と腕に撃たれたような、ナイフで切り裂かれたようなあとがある。
高速で飛び散ったプラスチックのカケラ。そこらじゅうに散らばっているモノの中で、鮮血がしたたっているものがある。
「た、たじまはか・・・っ!」
彼は顔色が変わった有望の肩を、落ち着かせるかのようにゆっくり抱くと声をだして笑ってみせる。
「大丈夫ですよ・・・すべて貫通してくれたみたいだ。止まってくれていたら後が面倒でしたけどね。葉隠博士、大丈夫ですか!?」
「う、うむ・・・。2人分の体重はちとキツかったぞ・・・。」
「あっ。」
不意の出来事とはいえ、博士の脚をザブトンがわりに使ってしまっていた事に気が付いた有望は、あわてて移動した。

「す、すみません博士・・・。おケガは?」
「わしは平気じゃ。それより、田島君の方が心配じゃい。」
そう言って田島を見ると、彼は自分の白衣を歯で切って器用にキズ口に巻いている。
彼はにっこり笑って両手を横に振ってみせた。
「ちょっとは鍛えてあるんで大丈夫ですよ、フフ。」
よかった。あとは・・・。
「・・・・・・サルファ!」
「ハイ!」
サルファはゆっくり3人に振り返り、レンズをちかちかさせてみせた。

サルファの体には、めりこんだカケラが多数付いており、ようやく上半身を起こした博士が目をまんまるにして喜んだ。
「2人トモオけがハ?ダイジョウブデスカ?」
彼は手を胴体に持っていってカケラを撫でると、機械音と共にきらきらと床にこぼれた。
少しばかりへこみはあるが、こちらもどうってことはなさそうだ。
「お前のボディは本物の弾丸でも耐えられるように、がんっじょーに!作ってあるからのう。」
「ハイ、コノクライナラさるふぁハ平気デス。シンパイシナイデ。」
「発信器は取り付けたみたいじゃな!」
「モチロンデス。」
サルファがキーボードに近寄り、かちかちとキーを打ち始めた。
田島の傷の手当を手伝った有望も、すぐにサルファの隣に座る。



「レッド!聞コエテマスカ!今、回収シタろぼっとガ・・・ワワ、ソチラニ向カッテイマス!!」
モニターを移動している黒点は丁度彼らが戦っているところを目指している。
(聞こえてるぜ、サルファ・・・!お前の声も、何かヤバそうなのが近づく音も!)
「あ、か・・・レッドっ!!」
有望は思わず身を乗り出して叫んだ。

(有望もそんなでっけえ声出さなくても聞こえるって。大丈夫・・・まかしとけって!)
「何のんきな事言ってんのよ!!ちょっと!」

ぶつっ・・・
一方的にリーブレスの通信を切った赤星・・・レッドリーブスは目の前にいる、両腕が破壊されたマリオネを見た。
青い瞳が紅く光り、体からゆらゆらと光を出しながら黙って何かを待っている。


自分の右腕となる者を、待っている。

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