★第8話 (2/16)
(前へ)
(次へ)
(表紙)
スプリガンが下見として放ったロボットは、彼のようなヒューマンタイプのロボットではなく、4本足で動くほ乳類のような姿をしていた。
彼が先ほど潰した小鳥同様、見た目はまるでぬいぐるみのようだが、アセロポッドの倍の力は持っている。
林の中をすばしっこく逃げ回る姿は犬や猫とほとんどとかわらない。
「ね、ねえリーダーっ!これもいつものあいつらとおんなじなのかなっ?」
「わからん!!とにかく倒すんだ!ピンクがいない今お前が一番身軽だっ!」
「しっかりやれよ〜っ!」
「オッケイ、リーダーっ!イエローっ!」
後ろで銃声音がする。ブラックのリーブラスターが一体倒した証拠だ。
その音をスタートダッシュの合図にするかのように、グリーンはバネのように前へ飛び跳ねた。
「残り一匹、いっくよ〜っ!!」
身軽な彼の姿は、スーツの効果も相まって目で追えない。トンファーのいつも取っ手にしている短い部分を、生い茂る枝に引っかける。
ついでに自分の足もそれにまきつけながらサーカス団員さながらの身軽さで、敵との距離をどんどん縮めてゆく。
「そらそらそらそらそら〜っ!!」
「・・・あいつ、これやめても食っていけるぞ・・・。」
「ぶっ・・・あそこまで来るとサルだなありゃ。」
レッドとイエローのため息まじりの感嘆の言葉は、もはや軽業師と化した彼には聞こえない。枝の上で空中ブランコとバック転を繰り返したグリーンは、枝が途切れる瞬間に足でくるりととらえ、トンファーをいつもの通りに持ち直した。
そして頭から地面に急降下し、獲物の前の地面にトンファーを十字に突き立てた。周りながら地面に着地した彼は、ひるんだ様子を見せた偵察ロボの一瞬の動きを見逃さない。
手でそいつの体を力いっぱい掴んで、トンファーでトドメを刺そうと思っていたのだが、自分の感覚はそれを許してくれなかった。
「え・・・?あ。」
ロボットじゃないの・・・?あったかい。
ふわふわしてる、うちにいるミグみたい。
お互い超スピードで動いていたので、捕まえていざ姿をみるとあまりのギャップに正直グリーンは口を開けてしまった。
自分の飼いネコそっくりの偵察ロボは、毛を逆立て威嚇するところまで本物とよく似ている。変わった毛色と少々機械で覆われている以外はそのまんまだ。
「ね、ねえ・・・?キミ、ロボット・・・じゃないの?」
手を伸ばしたその瞬間、偵察ロボは待ってましたとばかりに彼に飛びかかってきた。
食らいつこうとするそのキバはビスが打たれ、銀色に光っている。思わず顔をかばって十字に組んだグリーンの腕に、ナイフ同然の鋭いキバが噛みつく。
「ま、まって、怖がらないでよ!ね・・・。」
ロボットは認識したプログラムの通り、目の前の障害物に歯を立てた。
腕の肉に少しキバがめりこんで敵意剥き出しの瞳が大きくなる。グリーンが顔を歪めた瞬間、目の前が茶色に染まった。
イエローのチャクラムがそいつの体をまっぷたつにして、そこから出たものでマスクが汚れたんだということに、気が付くまで時間がかかった。
「あ。」
体を引き裂かれたロボットは痛覚というものを持ち合わせていない。下半身を吹っ飛ばされてもグリーンの腕にしがみつこうとまたキバを立てる。彼は思わずその半身に触れようとして、イエローの怒声に妨げられた。
「グリーン!てめえ、何ボサっとしてんだよっ!!」
イエローはなぜか不可解な行動を取るグリーンの腕から、噛みついているネコの首を鷲掴みにして地面にたたきつける。
彼は不自然な形に体がひしゃげているネコの頭部に、リーブラスターの銃口を乱暴に押しあてた。
「え?イエロ・・・」
「これで最後だっ!」
グリーンの伸ばした腕はどこにも届かない。
後には当然とられるべき乾いた音が鳴る。
ズギュウンっ!!
リーブラスターからは、普通の銃のように硝煙の煙が立つ事はない。それでもイエローは銃口からの煙をふっと飛ばすマネをして、満足そうに笑った。
地面にはロボの頭部が散らばり、飛び出たオイルでイエローとグリーンのスーツはだんだら模様が付いているように見える。
イエローは眉をしかめて(マスクをしているので他の連中には見えないが)、子供がイヤがるように両手を振ってみせた。
「ふしゅ〜っ・・・いっちょあがり。」
後からレッドが急ぎ足で駆けてくる。遙か後ろにブラックの姿も見える。こちらは余裕げに、ゆっくりゆっくり歩いている。片手をひらひらさせて、全部かたづけられたことに満足そうだ。
「おい、レッドお。スーツどーすんだよこれ?洗濯できんのか?クリーニングしてもらわねーと。オイルくさい正義の味方なんて、俺様ゴメンだぜ〜。」
イエローはくすくす笑いながら着装を解除した。長い髪をこれまた長めの指でかき上げて、頭を振る。
自分の服には当然だがオイルがかかってない。それをわかりつつホッとして、まだグリーンのまま呆けている輝を見た。
黄龍は怪訝そうな目でグリーンと、地面に突き刺さったままのトンファーと、バラバラになったロボットを順番に見ると、目線をグリーンに向けた。
「お前、何ぼさーっとしてたんだよっ、え?おい?早いうちにトドメささねーと死ぬかもしれなかったんだぜ。」
「・・・・・・。」
グリーンは答えない。無言のまま着装を解除すると、そこには丸い瞳がますます丸くなった輝の顔があった。白い肌が、不健康に青白い。
顔面蒼白なのは顔だけではない、噛まれた腕も死体のように青白く、その上に流れる血がやけにきれいに見えた。
「?あ、ホラ腕!!早く治療しねえとトンファー握れなくなっちまうぞ。」
黄龍は地面に座り込んでいる輝の腕を取ろうと、膝をついて手を伸ばした。
ロボットを押さえつける黄龍の手、こめかみにあててぶっ飛ばしたロボットの頭。
頭の中でサイレンが鳴っているかのように、ぐわんぐわんとその映像だけがまわり、輝は知らないうちに叫んでいた。
「わ・・・うあっ!」
差し伸べられた黄龍の腕を、輝は思い切り拳で横にはねのけてしまった。
まるで嫌がるように、拒むように、彼を見つめる。
恐ろしく冷たく、潤んでいるその瞳を見て黄龍は正直驚いた。
こんな嫌悪と怯えた顔をした輝は見たことがなかったから。
「・・・・・・おい。アキラ?お前・・・。」
「あ、ご、ごめん・・・えーな・・・。ごご、ごめんねっ・・・エイナ。」
口先では謝ってはいるが、多分、心の底からのセリフではない。どもっている口調、がたがたと震える唇。なによりその目で自分を見つめない。
自分を拒絶しているのが目に見えてわかった。
「あ・・・輝?」
着装を解除した赤星がそこで見た物は、ばらばらになった偵察ロボという名のネコ。
起こそうとした黄龍の手を思わず振り払い、彼を拒絶と恐怖の表情で見つめる輝と、何がなんだかわからない、といった表情の黄龍。
「・・・どうしたんだ?お前ら・・・。」
一歩遅れてきた黒羽は輝の表情を見た途端、険しい顔になった。
彼の拒絶と恐怖の表情。黄龍の手を力いっぱいふりほどいた彼の腕は、血が流れているが今はもうだれもかまってない。
赤星が自分に助けを請うように見ているのがわかると、彼は帽子を前に引き顔を下げた。
「坊や最大のウィークポイントが表面に出た・・・ってとこかな?」
「ウィークポイント・・・。」
2人は同時に顔を上げる。
「あれか?」
「あれだ。」
優しさは時に最大の武器となる。最強の原動力になる。
しかし、優しさは時に人を傷つける。それは恐ろしいことに、自分で気が付かないうちに。
そのせいで、自分自身もキズがついてしまうときだってあるのだ。
「早くも難関がでてきたな・・・。どうする?」
(前へ)
(次へ)
(表紙)
(一覧表へ)
(龍球TOP)
(TOP)