★第8話 (8/16)
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輝は英会話が出来ない。
高校以来英語に全く縁のない生活を送ってきたので、瑠衣に単語を聞かれても答えられない方が多かった。
それでも、なんとか自己紹介の英文くらいは覚えている。
「あ、あいあむ、あーきーらっ!」
自分を指さしてもう一度口を大きく開いて名前を言う。
「あ・き・ら、オレ輝!あなたの、名前・・・?えっと・・・ゆあ ねいむ?」
「ゆあ ねいむ・・・?」
ようやく声を出してくれた。きれいな声。
中性的な音域の声を出す洵の声にちょっと似ている。

(フン、相手してやれマリオネ。お前の名前を聞いているらしいぞ。)

暗黒次元から、自分の主の声が頭に伝わる。
マリオネの見ているものは、主が見ている。
マリオネが聞いているものは、主にも・・・機甲将軍スプリガンにも聞こえる。
マリオネを操作しているのは彼なのだから。

「マリオネ・・・」
「マリオネっていうんだ!素敵な名前!」

輝の笑顔がマリオネごしにスプリガンにも見える。が、彼はそんなものに目もくれずにリモコンを作っている最中だった。
「もう少し相手してやれ。まだこれが出来てないんでな・・・。」
工具と指先を最大限に使って、視線を自分が作っているリモコンに集中させる。
「あーあ。こんなことになるのならマリオネに組み込んでおきゃよかったな・・・。」

人やものを食って、そして自身の体を増幅させる者は、どこの世界にもいる。
力がとんでもなく強いマリオネだったが、それに耐えうる体のつくりかと言えばそうでもない。結構簡単に壊れる仕組みなのだ。それは、マリオネの力をなんとかして、その上で彼の体に触れる事ができれば、の話だったが。
リモートコントローラ、これで・・・暗黒次元製の金属を思う存分食うがいい。
お前が動けなくなっても、大丈夫さ。



「マリオネはどこから来たの?」
「・・・・・・・・・・・・」
マリオネは答えない。人工知能に、その質問に答えるだけの機能はないからだ。
「きっと遠いところから来たんだね。えっと・・・遠い・・・ふぁあ あうぇい・・・だったっけ?」
「ふぁらうぇい?」
「そ、遠いところからきたんだね。留学なのかな?それとも遊びに来たの?」
「あそび?」
「遊び・・・えーと、ええーと・・・ジョイ!」
「ジョイ?」
ここまで来て輝はようやく青い瞳の彼が、自分の言葉をオウム返しに口にしていることがわかった。英語圏の人間ではないのなら、はっきりいってお手上げである。
しかし、輝は通じない事などかまわずに、彼に話しかけた。
「けど・・・マリオネはどうしてここにいるの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
マリオネは答えない。
瞳の色が空を映しているからだろうか、目の色が急に濃くなった。


「オレはね・・・。今友達を待っているの。」

かち・・・かち、かちっ

「そのひとと・・・おしゃべりしたいんだけど。」

かちかちかち・・・きゅっきゅっきゅ・・・。

「けど、来てくれるかわかんない。」

きゅっ。

「あいたくてしょうがないんだけど・・・。」

最後のネジを締め終える。
はっ、やっとできた。
とりあえず、『滑り止め』の完成だ。
(よし。これで万が一の事があっても大丈夫だな・・・。マリオネ、ちょっとその辺のものを壊してみろ。)

「・・・・・・ハイ スプリガン様」
「え?今、何て言ったの・・・?」


アキラっ!!!

聞きたい声というのは、どんな騒音の中でも耳が聞き取ってくれるのだな、と輝はその瞬間に感じていた。
隣に座っていた華奢な外国人の手のひらが、自分達の座っていたベンチを押しつぶすまでそれほど時間はかからなかった。
血の気が引いた自分の横で、マリオネが顔色ひとつかえずにそれをぐしゃりとつぶした。
手のひらにベンチのカケラが突き刺さっているが気にも止めてない。
彼は右手のひらに突き刺さった木片を左手で上手にとった。

血が出てこない。

輝は感覚に筋肉がついていかず顔をゆがめ立ちつくしていると、首根っこを誰かにひっつかまれたのを感じた。息ができないくらい乱暴に捕まれて、数秒間宙に浮いたかと思うとこれまた乱暴に草地にどがっと落とされた。
「いって・・・痛い・・・。」
「バカテル!!!なーに考えて突っ立ってんだよてめえはよ!!!」
自分の胸ぐらを掴んだ手。長い指先、長い腕、キレイな長い髪の毛。瞳を歪ませて、今にも殴りかからんばかりの整った顔の持ち主は黄龍瑛那だ。

「えーなっ!」
「てめえ、少し自覚しろっつの!!リーブレス見たのか?!生命反応なかっただろ、あいつに!!」
思わず彼に飛びつきそうになっていた輝は、怒声に体をこわばらせて、顔を下に向けた。
「ごめん。ごめん・・・オレ」
潤む瞳に黄龍は思わず目をそらした。なんだか知らないが見たくない。

あー・・・ムカつく。その目が・・・なんか知らねーけどムカつく・・・。
ホントにどうしたんだオレ?

「とにかく着装すっぞ!!」
「え、リーダー達には連絡・・・。」
「した!早くしろっつの!着装っ!!」
「お・・・オッケイっ!」
自分の言いたい言葉が遮られる。いつもよりも格段に機嫌が悪そうだ。
そうだ、今は戦わなくちゃ。
すぐ側にいる怪人と!


「怪人・・・・・・。」
輝はつい先ほどまで自分が座っていたベンチの方を見た。すでに跡形もなくなっており、氷色の瞳は逃げる者には目もくれずに、遊具を握りつぶすように破壊している。
細い体のマリオネのどこにそんな力があるかは知らないが、彼は手のひらだけで公園を壊している。
先ほどまで一方的とはいえ、会話をしていたヤツが怪人。
怪人というフレームをつけるとさっきまできれいな目とおもっていたのに、今は冷たい瞳に見えるのが不思議でしょうがなかった。
辺りを見回すともう誰もいない。リーブレスに生命反応がないので、もうすでに他の人間は逃げたか、それともガレキの下に埋まって・・・。
「被害が広がらないうちになんとかしなくっちゃ!」
「おう、グリーンもわかってんな?」
イエローは少し意地悪っぽくグリーンにつぶやいてみせる。マスクの下の顔は笑っているのか、それとも人をくったみたいな顔をしているのか、声だけで判別は出来ない。
グリーンは一応、自分の都合の良いようにその言葉を解釈して、足の腱を伸ばした。
「行こう!」
「よっしゃ!」
ひとまずは、いつもの通り、わだかまりのない2人に戻っていた。

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