★第8話 (9/16)
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暗黒次元の物よりも、3次元の物はあまり頑丈に作られていない気がする。
それは今まで見てきた戦いで、感じていたことなのだが、その考えは正解だったようだ。
マリオネ程度の力を持っていなくても、押しつぶすことくらいは出来そうだ。
彼の手のひらを見ると、破壊された遊具のカケラが粉々になっている。指を開くと、砂のようになって空気に広がった。
砂に広がったかけらを見て、スプリガンはくすくす笑う。
「そうだ、マリオネ。その調子だ。もう少し暴れていろ・・・。そうすれば向こうからやってきてくれるさ。」
「ハイ・・・スプリガン様」

公園の中はすでに爆弾でも落とされたような状態になっている。遊具は潰されて、電灯はひしゃげて折れ曲がっている。
その中に、ひとり表情を変えずに立っているマリオネの姿は、驚くくらい現実感がなかった。
今までも、現実離れした怪人が自分達を襲ってきたが、自分達とさほどかわらない姿の者が非常識な行動をとると、どうしてここまで違和感があるのか。
茶色の髪の毛はすらりと整ったまま。瞳も口元も歪むことなく自分が作った、戦場のような光景を映している。
か細い指が何かのカケラをにぎると砂のように粉々になった。
「ひ、ひどい・・・。」
「グリーン。」
イエローはマスク越しにグリーンを見つめた。マスク越しの彼の瞳は、多分、とっても険しかったんだろうけど。
「近くで見てどうだった・・・?あいつ?」
「あ、あ・・・。手のひらから、すごい力が繰り出されてるって感じだった。座っている姿勢から、ベンチを粉々にできたんだよ・・・。」
「とんでもない握力の持ち主かあ・・・。ヘタな小細工かまされるよか、タチ悪イな・・・。」
『捕まれたら、きっと「ぐしゃり」だぜ〜。』と、イエローは物を潰すマネをしてみせた。

「リーブラスターで撃ってみるか、効くかどーかわかんねーが・・・。」
「う、うん。」
「グリーンはいーよ、オレにまかせとけって。」
グリーンの「え?」という声が重なる前に、イエローはリーブラスターの引き金を引いた。

がつんっ!!

映画と同じくらい、いやそれ以上の音が響く。
額にくらったはずだがケロっとしている。
「・・・・・・」
マリオネは地面に転がっている遊具のかけらを、指でぴんっと弾いてみせた。黄龍が今さっき撃ったリーブラスターをめがけてかけらが戻ってくる。
「イエローっ!」
「ばか、こっち来んじゃねーよっ!!」
イエローはグリーンの頭を地面に押しつけた。瞬間にかけらが頭をかすめる。
銃口から出る弾丸とは比べ物にならないくらいトロイスピードだったが、それでも当たったら自分の体をえぐり取られるぐらいは予想できる。
「冗談じゃねえよ〜マジかよっ!!」

「イエロー、オレ行くよっ!スピードだったら負けないよっ!」
「ふざけんな、捕まえられるだろ!」
「捕まえられないよっ!!」
待てバカ!!というイエローの叫び声を背中にして、グリーンは身をひるがえしてマリオネに向かって駆けていく。マリオネはというと、クレーンゲームみたいにゆっくりアームを伸ばして、獲物をがしりと捕ろうとする。
彼の長い腕のリーチ寸前に腰をかがめて一旦後ろへ下がり、遊具の残骸を蹴り飛ばして宙を走った。
「背中だったら腕の自由はあまり利かないよねっ!いっくよーっ!」
そのままトンファーで首の後ろに一撃を食らわす予定だった。
いや、トンファーから刃を出して首を切ってもよかった。そうしなかったのは一撃で倒れてくれるという幻想と、切った首をみたくないというのもあったけど。
彼はすぐに後悔した。
「うわっ!」
マリオネの腕が、通常ならあり得ない方向に曲がったのだった。
関節を無視した腕は背中から打撃を加えようとしたグリーンの足を軽く掴んだ。
恐怖映画で、首が一回転する人間とかいうのを見たことがある。その時に感じた違和感と恐怖が足から伝わってくる。
「そ、そんな・・・。」
「っグリーン!!!」
イエローの叫び声と恐怖の狭間で聞いた彼の音。少々だが機械の音がする。

きゅいいいー・・・

機械のような音と共にこちらに首をムリヤリ向けて、マリオネが見つめる。薄氷の瞳に自分の苦しむ様子がうつっている。
焦点のあわない目は、他人の恐怖も自分の恐怖も知ることはない。

場違いな風がふわりと2人を包んだ。

マリオネの華奢な体を覆っていた白いシャツは、彼の力についていけないらしい、風に連れられていってしまい体の線が剥き出しになっていた。
肩と関節部分に操り人形・・・『マリオネット』のような関節をつなぎ止めるビスが見えた。

「・・・・・・キミ!あのネコと同じ・・・ロボット・・・?うわっ!」
グリーンがつぶやいた答えに返事を返すように、マリオネは手の力を少しずつ加えていく。ゆっくりゆっくり、骨がきしむ音を聞いているかのように。

ぎゅし・・・ぎゅし・・・ぎゅっ

「う・・・があっ。あ・・・!」
足が潰されちゃう・・・っ!
なんてこと。なんてこと・・・。
潰される・・・っ!
イエローの声が遠くに聞こえる。

やばいよおっ・・・!!



(グリーン・・・何回も言っただろうが、焦るなってな!)
「え?」
リーブレスから聞こえてきた声と同時に、矢がひゅんと音を立てて飛んできた。
マリオネの手首に1本、左肩のつなぎ止めてある部分に3本、正確に突き刺さる。
(・・・・・・引け、マリオネ。)
「ハイ」
主の声を聞き、マリオネはグリーンを吹っ飛ばすと一旦その場から数歩引いた。
(おでましだな。)

マリオネごしにスプリガンの目に映った者は、赤と黒とピンク色。
OZの残党、龍球戦隊オズリーブスだ。
「ブラック!」
「ピンク!」
「レッド参上っ!・・・グリーン!」
レッドの怒声の前にイエローがまたグリーンの胸ぐらを掴んだ。
「お前バカじゃねーの!!少しどたま使えってんだよ!!バカ!!」
「だって、ロボットだってわからなかったんだよっ!」
「わからん相手に不用意に近づくな。」
「ハイ・・・。」
タダでさえ説得力のあるブラックの静かな声。スーツを着装している時の彼のテンションはいつもより少し上がる。それなのに、着装前の姿とあまり変わらない声を出すということは、相当怒っている証拠だ。

「グリーン!ブラックの言うとおりだ。なんでそんなに焦ってんだ?」
「・・・・・・ご、ごめんなさい。」
焦ってる・・・?なぜ焦ってるのかって?
さっきまでしゃべっていたひとと、長く戦うなんてイヤだからだよっ!
できることなら・・・戦わないで終わらせたい。
それがムリなら早く終わってしまいたい。

・・・ダメかな。こんな考え・・・・・・?

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