★バブルチョコ(2/2)

(やれやれ・・・・・・どうなることか)

ため息という名の一息を入れたとき、フラビージョはまたニッコリ笑ってこちらを向いた。
「サーガイン、文句言ってたけど割とあっさりつくってくれたね」
「まあな」
「どうしてー?サタラクラやマンマルバだったら、断ってたでしょ。ウェンディにはどうかなーって思うけど」
「・・・・・・新しく入って来たヤツは、信用するまでに至ってない。お前らとは長いからな」
「え?なになに、あたしのこと信用してるの?」
「ハリケンジャーを倒すという事だけ、わかっていればそれで良い。」

答えをはぐらかしたのか、素で答えているのかわからない彼に、ふうん・・・と言うフラビージョの大きな目はまた悪さを考えている。こんな目をしているときはロクな事がない。


「わかったのなら、さっさと出ていけ。いつまでたってもこいつとおしゃべりできんぞ。」
「・・・・・・ねえ、サーガイン?」
「なんだ?」
さっさと追い出してクグツを完成させて、いいように使われている状況から抜けたいサーガイン。
フラビージョを追い出そうとしたが、彼女はまだおしゃべりが足りないらしい。
壁によしかかってくすくす笑いながら、会話と言う名の質問をぶつけ始めた。


「あたしのこと、サタラクラよりも信用してる?」
「そりゃあな」

「マンマルバよりも?」
「ああ」

「じゃあさあ・・・ウェンディよりも?」
「・・・・・・・・・・・・」

適当に答えていたサーガインだったが、彼女の質問の意図がなんとなくわかったらしい。
答える事を急にやめ、背中にいる彼女の方を見ると、それはそれは楽しそうに笑っていた。

「えーもしかしてvあたしのこと、一番信用してるのー?」
「ふざけた事言ってないで、さっさと出てけ」
「そんなこと言わないでさあ・・・・・・ねえ、しんよー、・・・・・・してる?」


くすくす笑いながら、けどいつもよりは真剣に目が輝く。
遊びも、他愛もないおしゃべりも、闘う事すらてきとうに、面倒そうに、けど無邪気に遊んでいる印象があったから、そんな瞳の彼女に少しだけギクリとする。
フラビージョのおおきな瞳がそっと近づいて、少しだけ背伸びをし、腕を自分が搭乗しているクグツに回して、浮き気味のカカトは床に付く気配がない。
そしてまた、答えを求めている。


ねえ・・・・・・?
「ねー答え・・・きゃっ!」

彼女独特の間延びしているセリフを聞く前に、サーガインは彼女を振り払って遠ざけた。
その面からは感情を読みとる事は難しいが、どうも怒っているのはわかった。
「ヒトをからかうのもいい加減にしろ!さっさと出ていけっ」


その言葉を聞いて、フラビージョはますますニコニコする。
「バッカじゃないのー?マジんなっておこんないでよね〜」
うっざーい、と面白くなさそうに4枚の羽をひるがえしてくるりと入り口の方に立つ。

けれど、まだ何か考えているらしく、あ・・・そうだvと少しだけこちらを向いて、またニヤニヤ。
「本気にしたって事はー、ちょっと期待してたってこと?」
「俺はふざけるなと言っているだろ!いいか、一体何を・・・」
「こんなことマジになったってみんなが知ったら、サーガインの評判ガタおちだよね〜」

弱みを握ったフラビージョはキャッキャと喜んでいたが、サーガインが「ちょっとまて・・・」と言う前に、キッと表情が元にもどった。
敵を殺そうとした瞬間の、何とも言えない表情によく似ていた。
彼女にとって、目の前のサーガインは美味しくてからかいがいのある獲物なのだ。

「うるさいわねー。みんなにバラされたくなかったら、早く完成させろっつのバーカ」
「こ、こ、この、バカコギャルが・・・・・・」
コギャルって、言ってる時点で古いのよねー、と言いつつフラビージョはサーガインの研究室を後にした。


** ** **


答え、聞きたかったな、なんて少しだけ思う。
あたしを一番信用してたのかな、って。
あたしのこと、どう思ってたんだろうな、って。


「はあ〜・・・・・・もう」

シャボン玉をいっぱいに吹くと、迅雷の谷に虹色がこだまする。

2つに両断されたサーガインはもう二度と還ってこない。
本来、それは当たり前の事項なのだがクローンを残していたマンマルバのこととかを考えると、どうしても納得がいかなくって、彼の研究室をあさってみたりしたものだ。
しかし、そんな都合のいいものなんて存在するわけでもなくて。
あったのはマメさ加減がわかる開発日誌だけだったりするし。
日記って、ひとに見られる事を前提に書いているわけでもないのに、プライベートな事は何一つ書いてなかった。


ウェンディは『開発』日誌なのよ、わかってないわねえ〜、なーんて言ってたけど、さ。

「はああ〜・・・・・・ほんっっとにバカ・・・・・・」


何回目かのため息が出る。

チョコレートが幸せをもたらさないのは、彼女の心にチョコレート以上の甘い感情がちょっとだけ溜まっているから。
甘さは重ねすぎても、幸せは来ないのだ。


彼女はムリヤリ小さなキスチョコをざらざらとノドに押し込んでから、重圧をかけてくる青い空に向かってシャボン玉をひと吹き、ふた吹き、み吹きして、ひとりごとみたいにつぶやいた。

ちょっと遅すぎた、けどぜーったいに言う事はなかったセリフ。


「ちょっとだけ、すきだったんだけどなあ・・・・・・・・・・・・」


(おしまい)

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