★ノアの切り札 (9/12) (Act.5 哀しみの終わる場所)
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まるで荒野に生まれくる竜巻だ。醒鎌を双手に振りかざし、走り出す。
左右の刃が金と青のボディの全く同じ位置を立て続けに抉った。しなやかな両腕と抜群のコントロール。ワイルド・カリス。それは究極の狩人。
対するはブレイド・キングフォーム。あたかも大地のエネルギーをその身に宿した様に。
胸部に弾けた打撃をものともせず、巌のような拳を相手の体に叩き込む。何があろうが相手をねじ伏せるそのパワー。核になった存在の精神の強さを反映する強靱な身体。
命の危険に晒されれば晒されるほど、体内に残っているざわざわとした違和感が滑らかになっていく。複数のアンデッドの肉体と感覚が己のものとして融合していく。
ジョーカー。他のアンデッドのように仲間を生み出すことも敵わず、ただバトルファイトのリセットのためだけに存在する特異で孤独な戦闘生物。己がジョーカーに変容するかもしれないという恐れも、そこに戻りたくないという恐れも、既に無い。
今初めて、真の誇りに満ちて、二体のジョーカーは立つ。たった一つの目的のために。
殴り飛ばされて跳ね起きたカリスがまた1枚のカードをとり出した。それはクラブのカテゴリーAだ。呼応するようにブレイドも1枚のカードを掲げる。ダイヤのカテゴリーA。二人はジョーカーのままの緑のラウザーにカードをスラッシュした。
キングフォームの側頭部のガードが銀色に輝き、前傾して伸びた。前から見ると3本の角があるように見える。中央は金、両側は銀。肩甲が身体に密着して上下に尖り、菱様を成す。そしてその全身は明るい紫を帯びた。
一方のカリスの肩甲は上腕にまとわりつくように形を変える。脚と腕の筋繊維が太く変化して。側頭部が黒いガードで覆われた。額に3つの赤いドットが浮かび上がる。カリスの特徴である金色の紋はそのままに、朱のボディが漆黒にかわり、脛甲と腕甲が金色に輝いた。
<剣崎‥‥>
右手で醒銃ギャレン・ラウザーを引き抜いた時、剣崎一真は懐かしい‥‥。とても懐かしい声を聞いた気がした。
(橘さん‥‥)
死ぬまでこの身を案じてくれていたと、さっき聞いた。冷静で完璧主義な先輩、橘朔也。他人にもそして自分にも厳しくて‥‥。だがその厳格さの陰に深い優しさを秘めていた。だからこそあれだけ憧れた。
(橘さん、見ていて下さい。オレ、やり遂げてみせます)
左手に生じた醒杖レンゲル・ラウザーをくるりと回すと、チャリリと澄んだ音を響かせて円形の刃が3方に開いた。
<相川さん>
相川始は上条睦月の懐かしい笑顔を思い出す。ジョーカーの初めての懺悔を聞いてくれた男だ。そして長い歴史の中でこの自分を助けてくれた。
(睦月。今こそ、終わらせる。この闘いを!)
カリスが醒弓と醒杖を両手にひっさげて突っ込む。醒銃から連射されるエネルギー弾を幅広の刃で弾き飛ばしながら、醒杖を掴み直すとブレイドの胸板をぐんと突いた。エメラルド色の胸部に先端がめり込む。
だがブレイドは1歩下がっただけだった。左手で醒杖をぐっと掴むと身体を開きながらそれを引き寄せ、醒銃をカリスに押しつけるようにバーストさせた。
レンゲルのパワーを借りたカリスもまた、その衝撃を真正面から受け止める。バランスを崩しながら醒弓を投げつけると、両手で掴んだ醒杖をぐんと薙いだ。外殻の破片と火花を撒き散らしながら、両者がよろめき離れる。
損傷を修復しようと、彼らの全ての細胞が新たな力を欲する。ダイヤの13枚のカードがブレイドの周りに立ち上る。そしてクラブの13枚のカードもカリスを護るように取り囲んだ。それが彼らの身体の各部に溶け込んでいく。
この世に存在する全てのアンデッドをその身に宿らせて、二体のジョーカー、ブレイドとカリスが再び対峙した。
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