その8:なぜ特撮ヒーローなのか?

ひゆーさんとメールでやりとりしてて、ふと思った(思っていたらひゆーさんからも質問された。流石だ)。
なぜ私は特撮番組を見るんだろう。なぜアニメは見ないのに特撮は見ているんだろう‥‥。
アニメも特撮も基本的には大人向けではない。未成年者対象の空想物語というジャンルになるだろう。好きな人達は成人してもそれらをずっと見続ける。私の場合も思いっきり成人だけど特撮は見る。なのにアニメはまず見ない。それはなぜなのか?

私のアニメ歴。小さい頃に大好きだったのが白黒のTVシリーズの009、海底少年マリンとかマッハGoGoGoだ。その後ガッチャマンとかコンバトラーVのあたりはよく見てた。高校の三年間はダイターン3、初期ガンダム、イデオンだった‥‥のだが、高校を卒業してからアニメをぴたりと見なくなった(仕事で関わったセーラームーン等は別)
一方特撮ヒーローについては、小さな頃は「ウルトラマンシリーズ」が殆ど。等身大ヒーローはほとんど見て無くて「仮面の忍者赤影」が好きだった記憶があるくらい。本格的に見始めたのが「ライブマン」(20代後半になってた)から。そこから6年は過去作品を借りたり、ビデオを買ってまで見るほどはまった。途中5年ほどブランクを置いたが、3年前から再び見始めて、これから先もコンスタントに見てそうな気がする‥‥。

アニメと特撮の最大の相違は「絵」と「実写」の違いだ。アニメキャラは絵と声によって成り立つが、実写キャラはかなりのウェイトを役者さんに負う。もちろん脚本と演出が入るのだが、実写は実在の人間を直接感じられるわけだ。役にハマリすぎて他の役が回ってこなくなる〜〜なんていうのも、視聴者から同一視されてしまう実写ならではのこと。たとえ演技が下手だったとしても、役がその人自身とうまく重なれば魅力的なキャラになったりもする。

えらく単純な話なんだが、私の場合この特性が「アニメより特撮」の一つの大きな理由になっていると思う。特撮ヒーローものでは新人の起用が多いので成長過程のようなものが微笑ましいし、ベテランの方ならその役作りが面白い。子供と一緒にアニメも特撮も見ているであろうお母さんたちが、アニメの美形キャラに惚れるより特撮のイケメン俳優(笑)さんに惚れるのも、似たような所はあるんだろう。

じゃあ、なんで普通のドラマを見ないのかってことになってくるのだが‥‥。

それはもう「ヒーローもの特有のシンプルさ」が快感だからだ。類い希な能力(努力できるのも能力のうちである)を自分の為でなく人のために使って頑張る主人公たち。そして基本的にやっつけてもいい敵(笑)。実生活では絶対あり得ない。あり得ないシチュエーションだからこそ、多くの人が共通的に「いいな」と思える本質的なものが描ける気がする。イデアまで言ったらオーバーだが、まあそんな感じ。

物理とかの勉強に似てるかな?。例えば「ボールをある高さから落とした時に、この地点ではどれだけの速度になってるか」ってな問題で、最初から空気抵抗とか考えてたら本質の法則を見失う生徒が多発するだろう。実際には重力のみの状況なんてあり得ないんだが、そこを敢えてシンプルにすることで法則をわかりやすく理解できる。で、法則がよーく判ったところで実際の空間だったらどうかということを付け加えていけばいい。

人間の心はごちゃごちゃしたリアルの中で学ぶべきことで、物理法則とは違うと怒る方もおられるだろう。それでも「良い」とは何か「悪い」とは何かという基本的な感覚は、そういったシンプルなことから身に付いていくと思うのだ。そのうち、実際のコミュニケーションはそうシンプルじゃないことがわかってくれば、ヒーローものから離れて新たなフィクションの世界を好むようになってくるのだろう。
最近の青少年向けアニメーションは、たとえ宇宙が舞台でもヒーローものよりはリアルだ。戦争がテーマなら敵と味方はあっても正義と悪は無い。スポーツ系ならライバルはいても敵はいない。特撮ヒーローを見ていた子も、成熟するに従ってアニメに移行していくパターンが多いんじゃないか?
ところで話は違うが、なんでスポーツ系の実写ものって最近無いんだろう‥‥。昔は柔道ものとかバレーものとかあったよね。も一つズレるが、ジャンプの漫画って敵と戦っててもスポーツ系って感じがする‥‥。一度戦うと仲間になったりするからか(笑)

で、私ぐらいの年齢になってくると、だ。
また基本に戻りたい気がするのかなぁ。実際の世の中がややこしいってことはわかった。そっちに関しては自分のシチュエーションだけで勘弁してくれって感じで。逃げ出したくなることも、ずるいことをやりたくなったりもする。そんな時にヒーローを見るとシンプルで純粋なものを忘れないでいられる気がする。

特撮ヒーローの次に単純なものは何かというと時代劇だと思う。大河ドラマ系じゃなくて水戸黄門とか暴れん坊将軍とかそういったもの。敵が異形じゃなくて人間なだけで、あとはほとんど同じ。キメ台詞有り。キメポーズ有り。
とにかく時代劇なだけで現実と乖離してる上に、たぶん時代考証も敢えて無視するケースもあるんだろう。ヒーローは非現実的だからね。そうでもしないと存在しにくい。ということで、時代劇好きなお父さんもテレビ番組にシンプルさを求めているのかもしれないと思うことしきり。

昔の刑事物はヒーローのカテゴリーに入ると思う。でも極悪な犯人でもいきなり撃ち殺すわけにはいかないところが時代劇や特撮ヒーローとは異なる。やっぱり必殺仕置人が許されるのは時代劇ならではなんだろう。時々それをやっちゃうダーティハリーみたいな「はみ出し刑事系」もあるが。最近の刑事ものはむしろ企業ドラマに近くなってるのかな? 見ていないのでよくわからないけれど。
そう考えると、一昔前の任侠もの(最近だったらVシネマの類?)は、できるだけ現代社会でヒーローをやろうとした結果かも‥‥ちょっとダーティだけど

ちなみに私も時代劇ヒーローは好きだ。結婚して落ち着いた感じの人が多いのもマル。昔風の刑事物もけっこう好きだと思う。ただヤクザ系は前半で救われない被害者が出てくるケースが多いでしょ。もの見るときに結構感情移入しちゃうタイプなので、あれが辛くて、ちょっと避けます。
でも時間は有限だし、優先順位の関係でけっきょく特撮ヒーロー見てるな(笑) ダンナは自分のダンナで満足だし。若いヒーローは弟や後輩みたいで可愛いし(爆笑)

と、こういったことで、私は特撮ヒーローを見てるらしいです。

で、最後に、敢えて目をつぶってきた問題を一つ。

なんでヒーローは「敵」や「悪」と物理的に「戦って」ないとダメなんだろう? 戦うってどう考えても暴力なんだよなぁ。人に優しくするならそれこそ「世界名作劇場」でいいはずだし、サンダーバードみたいな災害救助でもいいんだけど‥‥。でもどんな時代も「悪」と戦ってるヒーローは多いよね。私自身、戦ってないヒーローなんてイマイチ想像できないし‥‥
何度も何度も繰り返されるモチーフには、必ず普遍的で共通的な何かが隠されてる‥‥と思うので、やはり多くの人のなかに「闘争願望」があるからかなと考えたくなる。

ヒーローものは「元々人間が持っている闘争願望を悪い方向に発揮させないようにするための」何かなのか? そのままにしとくと、なんでもかんでも暴力を振るってしまうので、この際、暴力の使い方を刷り込んでおこう‥‥みたいな‥‥。
動物は自分を守るために戦うことを小さい頃から知ってる。「戦える力」を欲するのは動物の本能。ただ動物は自分が安全でお腹が満たされればそこで止まるけど、人間はどんどんエスカレートするからなぁ。だから力は人のために使おうね‥‥って、特撮ヒーロー番組見せて刷り込んでおくわけだ。
うーん。そう考えてるとちょっとブラック。
2003/08/25

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