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第14話 悪夢の旋律!小さな友情
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森の小路の俯瞰。響き渡る赤星の声。
赤星「やめろ黒羽〜〜っ!!!」 森の小路店内。ギターを弾く手を止めてキョトンとした黒羽。
黒羽「何だ、赤星」 赤星「何だじゃねえ!もうストップ、歌やめ!!」 黒羽「そうか別な歌がいいか」 赤星「よくないっ、歌全面禁止!…これを見ろぉ」 耳を塞いで身を低くしている有望。同じく耳を塞いでカウンターに突っ伏している黄龍。机の下に隠れている翠川。3人、そろそろと耳を開けて顔を上げる。
黒羽「何だお前ら、その格好は。オレが歌ってる間に襲撃でもあったか」 有望「あのね黒羽君、とっても言いづらいんだけど、あなたの歌って…」 赤星「黒羽……学生の頃から何度も言ってくどいようだが、お前の歌はやっぱり下手だ!!」 黒羽「なにぃ?」 黄龍「そんな言い方じゃ聞かねえよ赤星さん。おい黒羽っ!」(黒羽を指差して) 「歌禁止!あんたの歌は歌じゃねえ、殺人音波だっ!!」 黒羽「ほほ〜……殺人音波たあ良かったね瑛ちゃん。それにしちゃあ元気そうじゃねえか、 ええ? それと人を指差すのは礼儀知らずのすることだと、何べん言わせれば 気が済むんだ、エ・イ・ちゃん!」 黒羽、黄龍の耳を思いっきり引っ張る。
黄龍「いでででででで、オイお前も何とか言ったれテル!」 黒羽「そうだなあ、坊やの意見も聞こうか?」 翠川「あの、黒羽さんの歌って初めて聞いたけど…………」 黒羽「ん?言ってみな」 翠川「でっ」(視線を逸らして小声になる)「できればもう聞きたくない………」 黒羽、満面の笑顔で翠川の頭を撫でる。
黒羽「そうかそうか坊や、正直でいいぞぉ」 急に身を起こしてギターを肩に担ぐ。ドアの前に立って帽子の鍔を軽く上げる。
黒羽「お前らの言い分はよーく分かった! もう二度と聞かさんから安心しろ。 歌の分からん連中に聞かせても意味がねえからな。あばよ、歌心ある皆さんっ」 ドアを開けて、去り際にウインクを残し店を出る。
有望「く、黒羽君……」 黄龍「全っ然こたえてねーし」 赤星「あいつ、なんでああまで歌だけはダメかなあ……」(深く溜息) 翠川「………夢、壊れたなあ」 店の隅の椅子に座っていた瑠衣、ココアを一口飲んで笑顔。
瑠衣「ステキな歌でしたね♪」 全員「ええっ!!」 店を出てギターを担いで歩いていく黒羽。別段何とも思っていない様子。
===***=== タイトルIN『悪夢の旋律!小さな友情』===***=== スパイダル基地。司令室にBIと四天王。モニターでオズリーブスの戦いを見ている。
BI「ええい、消せっ!」 マントを翻し背を向けるBI。空間から消失するモニター。
BI「不愉快な……!四天王たちよ!!」 慌てて敬礼姿勢をとる四天王。
BI「今までの失態、陛下はお怒りであられる。貴様らもスパイダル帝国の将軍ならば、 この償いに彼奴らを抹殺し、5人の首を献上してみせよ!!」 シェロプ「司令官、今こそ私にお任せ下さい。私の部下であれば…」 BI「黙れ、聞き飽きたわその言葉!」 一歩前に出るアラクネー。
アラクネー「司令官……あたくしに考えがございます」 BI「以前のような杜撰な策ではあるまいな」 シェロプ「そうに違いありませんぞ司令官、ですから私に…」 BI「黙れ、黙らぬかっ!!」 少し後ろでこそこそ喋るスプリガンとゴリアント。BIを見て首を傾げるゴリアント、肩をすくめるスプリガン。BI、気を落ち着かせるように溜息。
BI「………アラクネー!今回の作戦、そなたに任せようではないか。そなたの策が 杜撰かどうかは今回の成果如何で決めても遅くはない」 アラクネー「ははっ!」 森の小路。ボックス席で黄龍、翠川、瑠衣が騒いでいる。カウンターに赤星と有望。
赤星「まっ、ちょっと言い過ぎちまった気もするけどな…」 有望「そうよ。あの子たちは仕方ないかもしれないけど、あなたはもっと配慮すべきだったわね」 赤星「お前だって何か言ってたじゃねえか」 有望「あらっ、私は……そりゃあ、黒羽君が帰ってきたら謝るつもりよ」 赤星「でもあいつの歌はなあ…」 有望「確かにそれは事実ではあるけど……あら」 厨房から葉隠登場。手にクッキー。
葉隠「焼けたぞ〜い!」 席を立って集まってくる黄龍、翠川、瑠衣。
黄龍「お〜っ、うまそー!1個もらい!」 瑠衣「ダメよ、瑛那さん、まだ熱いもの」 翠川「オレ、熱くてもいいもんっ」 1個口に入れる翠川。熱がって飛び回る。
瑠衣「ほーら」 赤星「ところで博士、厨房にいて大丈夫でした?黒羽の歌……」 葉隠「ん?ああ、いやいや、なかなかどうしていい歌じゃないか。お前も歌が分からんのお」 赤星「えっ!博士まで………ん?」 葉隠の耳に不審なイヤホン。
赤星「何です、これ」 葉隠「ほ、補聴器じゃよ補聴器」 赤星「嘘言わんで下さいよ、そんなんしてないじゃないですか」 有望「補聴器にしてはおかしいですよ」(葉隠の顔を覗き込む) 葉隠「はっはっは、いや実はのお」(イヤホンを取る)「超小型超音波遮断装置なんじゃ」 黄龍「はあ?」 葉隠「ま、要するにこれさえしとりゃ黒羽君の歌も無害ちゅう訳じゃ」 黄龍「うわっ、ズル!!」 翠川「自分だけそんなんして〜!」 有望「そんな物まで作られるなんて…」 赤星「黒羽の下手クソもここまで来りゃ日本一かもな…」 人けのない港。ギターを担ぎ、舫い杭に片足を乗せて海を見ている黒羽。どこからかハーモニカの音色が流れてくる。振り向く黒羽。隣の埠頭でハーモニカを吹いている少年。曲は『埴生の宿』。それに合わせてギターを弾く黒羽。しばらくしてからそれに気付いた少年、黒羽を見る。黒羽のところに走ってくる少年。黒羽、少年の目の高さにしゃがむ。
黒羽「ごめんごめん。邪魔したね」 少年「お兄さん、この歌知ってるの?」 黒羽「?…ああ、知ってるよ。有名な曲だからね」 少年「何ていうの?」 黒羽「『埴生の宿』っていうんだ。坊や、名前は知らなかったのかい?」 少年「うん。お母さんが歌ってくれただけだから。ありがとうお兄さん」 黒羽「そうか…お母さん、この歌好きかい?」 少年「うん、よく歌ってくれたよ」 舫い杭に座る少年。
黒羽(フッと笑う)「お母さんに聞いてみたらよかったのに」 少年「だって、お母さん死んじゃったから。お父さんも…」 黒羽、ハッと真剣な表情。
黒羽「…坊や、ごめんよ悪かった。いけないことを聞いたね…」 少年「ううん」 が、堰を切ったように泣き出す少年。黒羽、何も言わず抱っこ。背中を軽く叩く。やがて落ち着いた少年だが、まだしゃくりあげている。
少年「前にオズっていうところでね……僕の家、近くだったから………」 黒羽(心の声)「あ、あの時……!」 脳裏によぎるOZ本部壊滅の映像。
黒羽(心の声)「ばかな、周りの家まで……被害はそこまで拡がっていたのか!」 黒羽「そうだったのか…………」 手袋を取って肩章に。少年の頭を撫でる黒羽。ハンカチを出して少年の涙を拭く。すっかり落ち着いた少年、黒羽の横に座る。
黒羽「お兄さんのお父さんとお母さんもね‥‥、お兄さんが坊やよりもうちょっと小さい時に、 2人ともいなくなっちゃったんだ。だから坊やが寂しくて悲しいのは、お兄さんも少し分かるよ」 黒羽の顔を見て不思議そうな少年。
少年「お兄さんも…?」(少し悲しげな顔)「死んじゃったの?」 黒羽「…たぶんね」 少年「お兄さんは、寂しくない?」 黒羽「大丈夫だよ。ありがとう」 微笑みあう黒羽と少年。ふと舫い杭に立てた黒羽のギターに目をやる少年。
少年「ねえ、お兄さんってギターを弾く人なの?」 黒羽「ああ」(ギターを取り上げて)「仕事じゃあないけどね。坊やこそハーモニカ上手かったじゃないか」 少年「ほんと?」 黒羽「ああ。とっても上手だったよ」 少年「ありがとう!ボクもいつも吹いてるんだ」 ポケットから銀色のハーモニカを出す少年。
少年「ねえお兄さん、ボクにもギター弾ける?」 黒羽「そうだな…ちょっと坊やには大きすぎるな。弾いてみるかい?」 少年「うん!」 黒羽「そうか。ほらっ、こっちおいで」 少年を抱き上げ膝の上に座らせて、ギターを少年に抱えさせる。
黒羽「こっちを中指で押さえて…」 少年「こう?」 黒羽「そうだよ。それでこの弦を……」 夕方。別れ際、手を振る黒羽と少年。見送る黒羽に、振り向く少年。
少年「あ、お兄さん!」 黒羽「なんだい」 少年「ボク佐川茂。お兄さんは?」 黒羽(帽子を取る)「さすらいの私立探偵、黒羽健…よろしく」 森の小路。ドアベルが鳴る。一斉に振り返る赤星ら。ギターの音色。ドアの向こうから現れる黒羽。ゆっくりと店内に入りながらギターを引き続ける。曲が終わり、くるりと反転しながらカウンター席につく。カウンター内、赤星が前に立っている。
赤星「おう」(片手を上げる) 黒羽「おぅ…」 帽子を軽く上げる黒羽。
有望「おかえりなさい」 瑠衣「おかえりなさい黒羽さん!」 翠川「おかえりっ!」 黄龍「うぃーす」 黒羽「はい、ただいま戻りましたよ」 有望「あの、黒羽君? さっきはごめんなさいね…その、私たち」 有望の前に2本指を立てて見せる黒羽。横に振る。
黒羽「おおっと主任、相変わらず神経の細かい人だ。オレはあなたと違って 気の回る方じゃあなくてね…。さっきのことなんて言われても、分かりませんよ」 有望「黒羽君」 立ち上がる黒羽。
黒羽「さあて、オレは愛しのオズブルーンの整備でもしてくるかな。それじゃまたあとで…」 軽くウインク、指を横に2回振ってスタッフルームに去っていく。が、途中で立ち止まる。肩越しに振り返る。
黒羽「なお、瑛ちゃんには大事な話があるからあとで来るように」 黄龍「だから、俺様にだけ当たんのやめろっての!」 有望「怒っているみたいね……しっかり!」 闇夜。黒い木の影から現れる女の影。
アラクネー「…三次元の人間どもの歴史を紐解くに『音楽』の存在は計り知れぬほど大きいもの。 彼奴らは好んで音楽を聞き、今や人間どもの住む場所には 内外問わず音楽が溢れかえっている…」 手をかざすアラクネー。横に現れる次元回廊。黒い影が形になり、コウモリ型の怪人が出現!
アラクネー「その音楽に人間どもの脳を侵す音波を流し込めば、 たちどころに人間どもは我らの思うがまま……。 ゆけ、我が暗黒妖夢族最強の怪人にして音波を自在に操るオンパコウモリよ!!」 テロップ(暗黒妖夢族 オンパコウモリ)
オンパコウモリ「ははっ!!」 <前編> (後編) (戻る) |