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Special3 Luster!
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宝箱・・・ケースの中から現れたのは、一対の変わったスタイルの棒と、棒に付いているのと同じデザインのグリップが一組だった。 輝は何をもらっても大抵は喜ぶ。人からものを受け取ったり、どんなプレゼントをあげるとそのひとが喜ぶのかを考える作業がとてもスキな彼にとって『ひとから何かをもらう』ということは、幸福の上位ランクに入る。 しかし、目の前に唐突に現れた棒は今まで見たこともなかったシロモノだった。 ただの棒ではない。 いくつかの棒を組み合わせて作られているというのはわかったが、生憎彼の記憶の中には、それ以上の答えをはじき出される知識がなかった。 目をぱちくりさせて首をかしげる輝に、博士達は少し微笑んだ。 「・・・・・・??・・・は、ハカセ、主任っ・・・。あの、これ・・・なに?」 「トンファーじゃい。カンフー映画かなんかで見たことがないかのう?」 「とんふぁー・・・?」 輝は口の中でもう一度つぶやいてから、ケースの中のそれに手を伸ばした。銀色がかった色の中に緑色がきらめく。 長い棒が付いている方を手に取ろうとすると、赤星がそれを手のひらでさえぎった。そして彼は長い棒を手に取り、グリップを持ってすっとかまえてみせた。 「こうやって、持つんだ。かまえは俺が教えた空手の型とほぼ同じ。かまえてみろ。」 「は、はい。」 彼のポーズの目に焼きこむ。彼の体の線を、関節を、そしてビリビリ感じる気合いまで写し取る。それから、背筋を一旦伸ばしてかまえてみせる。 「へエ・・・。」 有望は思わず声をあげた。 まるで赤星と輝の間に鏡があるかの如く、対称的に映っているようにみえる。2人とも何かの彫刻のように美しく、彼女は自分が見とれていることに気がつくまで、少し時間がかかった。一度見るだけですぐに形となり身となる輝の能力は、もはや特殊といっても良いくらいだ。 赤星はホレボレして輝をみつめ、『ちゃんと形になってるな。いいぞ。』とホメると輝は子供のようににいーっと歯をだして笑った。 「俺達や黄龍にだけ武器があるのはズルイだろ?輝の武器だ。みっちり教えてやるから、洵に毎日キズを診てもらえるようにしとくんだな。」 「これ・・・オレのものなの?今日から?」 赤星は一回だけこくりとうなずくと、瞳を細めた。 「そうだ。そのトンファーがこれからお前が戦うときのパートナーさ。可愛がってあげるんだ。そいつはその分だけ応えてくれるからな!」 「う、うん・・・。」 輝は手にしたトンファーをしげしげと眺めた。銀と緑が混じるそれの色は、強いて言うならCDの裏面の色によく似ていた。くるりと手首を回して蛍光灯の光をかざすと、七色になる。 色鑑賞をしていた輝は、唐突に上目遣いで赤星と博士の顔を順番に見つめた。どうやら何か疑問を持ったらしい。 「どうした?」 「ねえ、ハカセっ!このトンファーに名前ないの?」 「はて名前・・・?」 博士と有望は思わず顔を見合わせた。 「だってさ、リーダーのにも黒羽さんのにもエイナのにもついてるじゃん名前っ!」 「あっあ〜・・・名前・・・じゃなくて、開発中に呼んでいたコードネームならあるわ、輝くん。」 「うむ。開発中のコードネームは『ルー』だったんじゃい。」 「るー・・・う?」 「なんだそりゃ。カレーかい?」 いつの間にかトンファーをぬいぐるみを抱くようにして抱えている輝と、怪訝そうな顔をする黒羽を交互にみて博士はくすくす笑った。 「Luster、エルユーエスティイーアール。上の頭文字をとったんじゃい。意味はわかるかの、輝くん?」 「う、う〜ん・・・ちょっと・・・。オレ英語忘れちゃった・・・。」 「光沢、艶、そして輝き・・・。輝くん、あなたのことよ。」 有望はいつも通りの笑顔で彼の肩にぽんと触れた。 「あなただけの武器よ。」 良い香りのする彼女に触れられた事と、この武器がまさしく自分のためだけに作られたということを、コードネームを通してようやく理解した輝は、今までで一番の改心の笑みを浮かべた。 「・・・すっげえ・・・。」 トンファーをぎゅっと抱きしめて、床に足を広げて座り込むと、それにネコみたいに顔をすりよせてる。ちょっとばかりはしゃいでる輝は変な笑い声をかみしめ、それでも口から声がもれている。 「お、おい輝・・・。」 「すごいっすっごい!!すっげえええっ!!!くううう〜っ!えへへ・・・ルーかあ・・・。うふふ。」 変な笑い声をだして薄ら笑いを浮かべる輝を半分呆れ、半分微笑んで見つめていた黒羽は、『う〜ん・・・。』と上を見て下を見て・・・ぼそりとつぶやいた。 「・・・なんかややこしいな。・・・別にミドのトンファーだからミドトンファーでいいじゃねえかよ。」 「ハイ?」 「あっはっはっはっ!!それいいじゃねえか、黒羽!!わかりやすすぎて最高だぞっ!!」 一瞬口をあけた輝の代わりに、笑い声で言葉を返したのはリーダーだった。腹を抱えて豪快に笑っている彼の隣で、自ら提案した名に満足げにうなずくのは、輝の憧れのひとだったりしている。 「いやマジでさいっこうだぞ!英語よくわかんねえんだったら、こっちの方がラクでいいじゃないか?!輝、そうしろよ!」 「ちょっと赤星、私のつけたコードネームが気に入らないってわけ?」 「え、そんなことないって。俺はただわかりやすくっていいなーと思っただけだろ?ムキにならなくってもいいじゃねえか?」 「ムキになんてなってないわよ。」 「毎度の事ながら、赤星サンは有望主任を怒らせる名人だな・・・。」 「あ、あ、あの〜。」 「もうなんでもええじゃろが!!竜も有望君も好きなよーに呼べ!」 「・・・これ、オレのトンファーでしょ・・・?」 子供のようなやりとりを続ける赤星と有望の言い合いに呆れた博士の一喝で、トレーニングルームはしーんと静まりかえってしまった。 2人のやりとりを目で追っていた輝は力なく笑うと、図らずもふたつの名を持ってしまったトンファーをまたぎゅっと抱きしめた。 「と、とにかくありがとう、ハカセ!主任っ!オレ頑張って稽古するからっ!!」 「そう言ってくれると嬉しいわ。」 「おう、頑張るんじゃ!竜も協力してくれるしの・・・って?」 ちょっとだけ呆けていた赤星は、輝の『稽古するから』の一言に瞳がきらきらと輝きだした。 「よう〜し、いい心がけだ!」 「ねっ、もっと教えて!組み手しようよ、リーダーっ!」 「ああ。覚悟してろよ。」 輝の頭を乱暴に撫でる赤星と、お菓子をねだるように稽古につけてくれとせがむ輝。 黒羽と博士達は半ば呆れ顔で2人を見つめていた。 「げ、元気よすぎじゃのう・・・。」 「これじゃどっちが喜んでるんだかわからないわ・・・。」 「70年代のドラマを地でいってるな・・・このお二人さんは。」 有望と黒羽は顔を見合わせて、また2人を見た。 ドラマを地でいく熱血教師とその生徒は、またトンファーをかまえて中央に立っていた。 「ぜえっ・・・ぜえっぜえっ・・・うぷ。」 「おい、まだまだだぞ!!」 走り回りすぎて、吐き気がする。ここまで動けるようになったのは嬉しいけど、その分、無駄な動きも増えたってことかなあ・・・っ? 冷静に自分を分析できるのに気が付いて、輝はくすくす笑った。 (よ〜し、まだまだリーダーと稽古できるくらいは体力残ってるみたいっ・・・。けど。) 久しぶりに床に肘をつけたような気がする。肘がついていると言うことは、膝もついている。座り方なんか、女の子がするみたいなぺたんこすわりだ。 (我ながら・・・さいってえのカッコ・・・。) 立ち上がるべくトンファーを杖代わりにすると右手に激痛が走った。 「つ・・・。」 「マメか。」 目の前にいるリーダーは自分の手をひったくると、冷静な判断を下すコンピュータのように、機械的につぶやいてみせた。 手のひらから液体がしたたり落ちる。 汗で濡れているのか、マメがつぶれたせいで濡れているのか、もはやわからない。しかしそんなことは、赤星も輝もどうでもいいことだ。 あれから時計の針が何回まわったのだろう?かなりの時間が過ぎているはずなのだが、輝はあえて時計を見ていない。悲しいかな、時計の針に従って体力が減り、眠気が襲ってくるからだ。最初はつき合ってくれていた博士達も黒羽も、いつのまにか出ていってしまっていた。 ふたりだけになったトレーニングルームに、自分の息が切れる音と、心臓の音だけが響いているかのような気分になった輝は、少し顔を歪ませた。 「輝、今日はどんな風に打つとかを考えなくていい。明日もあさってもだ!!形じゃなくて、打つときの感触を覚えるんだ!」 「う・・・うん。」 輝はもうろうとした頭と手で立ち上がりながらつぶやいた。しかし、次の瞬間はっとしたように言葉を訂正する。 「は、はいっ!!リーダーっ!」 「言い直す事ができるくらい、気配りはまだできてるみたいだな。ようし、もう一度。オレの体にたたっこんで来い!」 「う〜〜っ・・・うっしゃあっ!!」 つま先を蹴り飛ばして、ジャンプするように彼めがけてトンファーを打つ。かなりの衝撃を加えたはずだが、当の本人はビクともしない。人間の体を殴っているはずなのだが、ぞくりとするほど固い。いくらプロテクターを付けているとはいえ、手が痺れる。金属を殴ってもこんな風に痺れることがあるだろうか。 輝の疑問をかき消すように、赤星はくすくす笑った。 「もっと打ってきてもかまわないぞ。」 「り、リーダーの体ってすっげえ・・・。『ハガネのカラダ』ってこういう体の事を・・・いうんだねっ・・・。たはは・・・。」 もうすでに体力は限界まできているはずなのに、不思議と彼の言葉には余裕がある。 赤星は子供のように笑う。 無邪気で、この稽古事にかけては融通のきかない目で! 「これは、今までの積み重ねプラス日々の努力の賜物だ。いいか、輝。これからはそのトンファーをずっと手にしているんだ。早く手になじませろ!」 「て、手に・・・なじませる・・・?」 「そう。これがトンファーに関しての最初のオーダーだ!守れるか?」 「もちろんっ!!ま、・・・まかせてっ!」 輝は息を切らせてトンファーを握りしめる。激痛が走っているはずなのだが、気にもとめてないらしい。赤星はカベにかかっている時計を見た。 体力がつくと、どんどんどんどん、自分の体にムリさせたがるもんなんだよな・・・。 輝もそうか・・・な? 「今日の修行は、これでおしまいっ。」 「え?ええ〜っ・・・もう?ね、もうすこし・・・。」 「気持ちはわかるけど、休むのも大切なんだ。これ二つ目のオーダー!」 「・・・はあい・・・。」 やっぱり似てら。俺と輝は。 からんからんからんからんっ・・・ 夜の喫茶店は昼間と違い、まったく別の空間のようだ。見慣れたはずのカウンターもソファも観葉植物も、すべてが月と言う名の光に照らされている。 輝はおぼつかない足取りでフラフラとソファに転がるように座ると、そのままばたん、と横になった。うつぶせの顔を埋めたソファは、博士が焼いてくれるお菓子の香りでいっぱいになっており、甘い香りが心地よかった。 輝はソファを抱くようにして瞳を閉じた。自室に戻りたい所だが、体が言うことを聞いてくれない。頭の意識に筋肉が反発しているのだ。 (いいよね・・・ちょっとくらい、休んでも・・・。) だらしなく足を延ばすと、ソファから左足と左腕がはみ出しつま先がかつりと床にあたる。左手は爪の代わりにトンファーが床を小突いている。 意識はソファの柔らかさの前にノックダウンし、輝は汗だくの服を着替えもしないでそのまま気持ちよさそうな寝息を立て始めた。 手はほとんど包帯まみれ。吐き気はなくなりかけているが、喉に血たまりができたかのように、鉄の味がする。 「うごきすぎたから、だなあ・・・。」 意識して出てきた言葉ではない。口を動かすという条件反射のもとででてきた無意識下の言葉だった。 長めのまつげを伏せたまぶたはとうとう朝まで開くことはなかった。 2001/12/27
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