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理絵さんの夢織劇場
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その3 幸せ家族 あるところにアラクネーとスプリガンというそれはそれは仲の良い二人がいました。 ふたりは普通にスパイダル城で出会って、普通に恋をして、普通に結ばれました。 そしてふたりの間には超可愛らしい子供までできました。 ふたりはとっても幸せでしたが、ただひとつ、ほかの夫婦とは違うところがありました。 おかあさんのお父さん(お義父さん)はブラックインパルス様(←故人)だったのです。 いつも通り3人一緒のベッドに眠って、いつも通り一番早く起きるのはスプリガンおとうさんです。 可愛い可愛いアラクネーおくさんとお子さんのプラリネちゃんのほっぺをなでなでしてから起きて、軽く運動に行ったようです。 「平和になったと言ってもこうやって体動かすクセは抜けないようだなア。」 スプリガンおとうさんはひとりごとを言いつつ、腕の銃で遠くの枝をねらい打ちです。 もちろん百発百中♪ 誰も見てないのに腕の銃をがしゃんがしゃんがしゃこ!とホルスターに入れるようにカッコつけてしまいます。 と、おうちから何かがこげるにおいがします。 どうやらアラクネーおくさんとプラリネちゃんが起きてゴハンしたくをしているみたいです。 スプリガンおとうさんはちょっと心配そうにおうちにもどりました。 テーブルのうえには焦げたパンとサラダと果物が乗っています。スプリガンおとうさんの席にはもちろんいつものオイル缶があります。 アラクネーおかあさんは下を向いて、ボソっとつぶやきました。 「今日は……上手くいったみたい。どうかしら。」 「…………い、いいんじゃねえの?」 「いたらきまーす!」 スプリガンおとうさんの優しさが故の適当な感想をプラリネちゃんは流してくれました。 しかしアラクネーおかあさんはもうひとつ、毎朝することがあるのです。 「プラリネ、司令官にご挨拶は?」 「あ、はーい!おはよーござい、まーす。」 「おはようございます、司令官殿!」 ビシイ!!とかつての四天王時代バリの挨拶…もとい敬礼をするアラクネーおかあさんに、スプリガンおとうさんは頭が痛くなりました。 実はここのうちのカベにはブラックインパルス様のお写真がたくさん飾られています。 どこで撮ったのか知りませんがそこは四天王の権力でどうとでもなったのでしょう。 貴重なオフショットから肖像画風のイカした写真まで色々あります。 プラリネちゃんは生まれてからずっと「このお写真に敬礼よ。」とアラクネーおかあさんに教えられているので、別段、何の疑問もなく笑顔でお写真に敬礼をします。 「ちょっと待て。」 「何?」 「毎朝言ってるがそれはやめろ。頼むから。」 「どうして?プラリネも嫌がってないしいいじゃない?」 「ほとんどあひるのすり込みじゃねえかよ。」 「どうしてそんなに司令官のお話をするのがイヤなの?」 「なんでこんな(←写真を指さす)のに軍隊バリの敬礼するひつよーがあんだよ!!」 「司令官に向かってこんなのとは何よ!!」 アラクネーおかあさんの指から糸がたくさん出されてますが、スプリガンおとうさんは上手によけつつ無駄な説得を続けます。 おとうさんとおかあさんの押し問答は今に始まった事ではありません。 プラリネちゃんはひとり、写真の前で敬礼ポーズのまま笑顔でした。 おとうさんとおかあさんはお互いキズをひとつふたつ作って、朝ご飯はおしまいです。 お片づけが終わると、アラクネーおかあさんはプラリネちゃんをひざに乗せて、絵本を読んであげています。 「むかし、むかし、あるところに……とても強い騎士がいました。」 「うん。」 棒読みながら、将軍時代ではありえない光景におとうさんはひとり幸せを満喫していました。 (こういうのが幸せってのかなア……可愛いガキにもっと可愛い嫁さんに……はあ。) などと思っていたスプリガンおとうさんですが、絵本を読んでいたはずのアラクネーおかあさんの一言に凍り付きました。 「その騎士はブラックインパルス様と言い、とても素晴らしくて優しくて人柄も良くて市民から尊敬されていてかっこよくて美しくて力もあって(注:ノンブレス)………」 「ちょーっとまて!!」 「なに?あなた?」 『あなた』の一言で顔がゆるんだスプリガンおとうさんでしたが、ツッコまざるを得ません。 「アキラからもらった絵本に司令官なんぞ出てくるわけねえだろ!!」 「少し改良を加えてみたの。どうかしら?」 「よくねえよ、情操教育に悪イだろ。だいたいお姫様がガラスの靴落とす話になんで司令官なんだよ。」 「しれーかん、どのおはなしにもでていうよ。」 「何?」 プラリネちゃんが散らかしていた絵本を、スプリガンおとうさんはひらいてみて……軽い目眩を起こしました。 王子様の名前が全て「ブラックインパルスさま」になっていたのです。←マジックで書き直しされている。 「お前どういう話をこいつ(←プラリネちゃんのこと)にしてるんだ?」 「少し改良を加えてみたの。どうかしら?」 「そのセリフはもういい………。大体な。」 「あなたは司令官の事を尊敬していなかったの?」 「してるさ、だけど……」 「いつも聞かせてあげているの。BI様がどんなに素晴らしくて優しくて人柄も良くて市民から尊敬されていてかっこよくて美しくて力もあって……」 「それももういい!!」 さて、いろいろありましたがもう夜になりました。 ここのおうちは寝るのが早いのでもうお休みです。 3人一緒にベッドに寝ころんで、アラクネーおかあさんはプラリネちゃんをだっこしてあげてます。 「さあ、もう寝ましょうプラリネ。」 「まだおきていやれるよ。」 「寝ないと良い夢が見られないわよ………あ。」 スプリガンおとうさんは何かとっても悪い予感がしました。 「そうだわ。私が司令官殿の夢を見させてあげ………。」 「寝ろプラリネ。オレ達はこれから忙しいんだ。」 スプリガンおとうさんは思わずアラクネーおかあさんの言葉を遮りました。 当たり前です。 「ちょっと、私の案を却下するの。」 「何考えてんだお前は!」 「プラリネの事よ。立派な大人になるためには司令官の事を知らないとダメじゃない。」 「ほかに教える事いっぱいあるだろ。」 「司令官の事を教えたら、どこでもやっていけるわ。」 「ああもう局地的にしか生活できなくなるだろ!!」 「あたし、まだおきていやれるよ〜。」 こうしていなくとも強烈な存在感で不毛な生活サイクルが続けさせるBI様を恨みつつ、スプリガンおとうさんの一日は終わるのでした。 この生活にピリオドが打たれる日は…………来ないでしょうきっと。 おしまい。 夢見:理絵/文:ラバランプ 2003/10/27
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